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血剣の巫女  作者: mist rain
巫女の章
4/6

1-1 洗礼と準備

 ナキア公国の首都にして、精霊セチェレナを要する都市、チャリグヴォルテ。

 最近は、南のタロコス帝国との交易で栄えたヴァキュラルトに規模で負けているらしいのですが、その伝統的な様式に支えられた街並みと市民の活気は、やはりここが首都であると感じさせるものがあります。


 さて、自己紹介をしておくべきでしょう。

 私はセルフィア、あさってに行われる洗礼のために、両親とともに馬車で半日かけて、村から首都にやってきた、しがない村娘です。どうも、私の村で信仰されているセチェレナ様はとても強力な力を持っているらしく、今年で70を超えたといわれる村の巫女様も、まるで未だ子供かのような見た目をしております。そのセチェレナ様の信徒に向けた洗礼ですから、公爵様も出てきて、私たちにお言葉を述べられるそうです。私としては、精霊様といえばそのセチェレナ様と、あとは天の大精霊様くらいしか知らないものですから、どれほど強力かを力説されても、比較対象がないのでよくわからないでしょう。

 それよりも私は、なんで村の洗礼なのに、首都に出ているのかが気になりました。馬車に乗っている間にそれをお母さんに聞いてみたのですが、洗礼というのは一種の儀式だから、こういう段取りが大事、であると言っていました。私はお母さんに言われたことがよくわかりませんでした。まあお母さんも、私が洗礼を受けた時もよくわからなかったから、大丈夫よー、と言っていたので、特段心配する必要なはいのかもしれません。


 *洗礼:新たに信徒になるものに対し行う儀式。乳児の場合に行うものが一般的だが、精霊によっては10歳を迎える年に行うこともある。これは、10歳ならば自身の心から信仰を表明できると考えられていることによる。セチェレナはこの考えを広めた精霊のうちの一人であり、自身もそのように洗礼を行うこととしている。


 そのあと馬車の中で聞いた話によると、明後日の洗礼の日にはここで公爵様の話を聞いて、また村へ戻るのだそうです。そのほかにも、馬車に一人づつ乗り込んで村に帰ったり、お母さんたちは先に村に帰ってしまい、洗礼のときは子供のみが残っていたり、村に入る前にお祈りをしたり、なんだかややこしい手順がたくさんありました。なぜそんなややこしいことをするのか、と聞けば、


『儀式だから』


とか


『段取りよ』


とかばっかりです。そんなに儀式の手順って大事なんでしょうか?でも、セチェレナ様に逆らうと魂を刈り取られると聞いたので、大事なのかはすごく気になりますが、素直に従うことにします。魂がバラバラにされて、セチェレナ様にその魂を食べられてしまうんですって。恐ろしいです。ちょっと疑問を脳内に閉じ込めてしまえば、魂をもぐもぐされずに済むのですから、それに越したことはありません。


 まあ、やっぱり気になるのですが。


 とにかくその『段取り』とやらのせいで、私は首都に行くことになり、そして二日で村へ帰るのです。いくら馬車で半日とはいえ、子供の移動範囲では到底いけないところに、二日だけでもいられるのは、子供の私にとってはうれしいものです(キラキラしたアクセサリーとか、大人に憧れて着けて見たくなる頃だと思うのですが、どうなんでしょうね。私だけではないと信じていますが、何分私の周りの同年代の女の子たちがそういうのに興味のない子ばかりだったので、自信が持てません)。


 私がお母さんと一緒に露店のきれいな宝石たちに目を輝かせてたり、お父さんに買ってもらったお菓子をほお張ったりしていたら、すっかり暗くなってしまったので、宿に行って寝ることにしました。


 宿の部屋の大きさは聞こえませんでしたが、両親と私は別の部屋のようです。なんだか、大人として扱ってもらえたみたいでうれしいです。私は背伸びをして、にこにこしている宿屋の人に鍵をもらうと、同じくにこにこしている両親をよそに、意気揚々と私の部屋に入りました。


 「よう」


 するとそこには、一年前に出稼ぎに出たはずの、私のお兄ちゃんがいました。、

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