約束と大切
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「黒瀬さん、なんでここに……?」
「あ、秋人くんこそ…」
「僕はバイトの帰り道で…」
「あ、そ、そうなんだ。」
想定外だ。こんなところに黒瀬さんがいるとは思わなかった。
どんなに憧れている人が目の前にいても、心の準備が必要だ。
「……」
沈黙が続いた。喋らなくちゃ。
黒瀬さんが困ってるんだ。そう思い僕は勇気を出して話しかけた。
「「あ、あの!」」
被ってしまった。すごく恥ずかしい……。
すると彼女はクスリと笑って一言僕に声をかけてきた。
「同じだね。あの時と……」
「あの時…?」
「覚えて…ない?」
「え!あ、いや…。覚えてるよ!」
まずい。ほんとになんのことかわからないぞ。
大体黒瀬さんと話したことあるのはほんの数回だから話した内容は覚えているけど全く今の状況と当てはなるシーンが全くない。
そうやって考えていると黒瀬さんは言った。
「小学校の卒業式の日。私、どうしても秋人くんともっと話してみたくて勇気を出して話そうとしたの。
そしたら二人とも緊張でガチガチになっちゃって。掛け声が被っちゃったの。それ思い出したら笑えて切っちゃって。笑」
衝撃だった。僕も覚えてはいたが、今のこの瞬間と同じだなんて思いつきもしなかった。
何気ない仕草や会話まで覚えていてくれていることに僕はとても嬉しくなった。
「僕も覚えてるよ。あの日は黒瀬さんに会える最後の日かもしれないと思って必死に黒瀬さんを探したんだ。
そしたら俯いてる黒瀬さんを見つけた。なぜだかたくさん走ったのに黒瀬さんを見つけた瞬間に呼吸が急に落ち着いて、目の前が明るくなったんだ。」
「そうだったんだ……。」
「うん。あの時の僕ならフルマラソン走れたと思う!」
「ふふ。本当に?」
「う、嘘はつかないよ。」
「そっっか。」
少し溜めながらそう彼女は言った。
「帰ろうか。もう夜も遅いし。方向どっち?」
「僕はあっち」
「じゃあ真逆だね。じゃあ、またね!」
そう言って彼女は僕の帰る方向を背にして歩こうと振り向いた。
言わなきゃ。もっと黒瀬さんと話したいって。遊びに行ったりしたい。
「く、黒瀬さん!」
「ん?」
「あ、あの……」
手に力を入れながら勇気を出して声をかけようとしたその瞬間。
彼女が何かを悟ったようにクスッと笑いこう言った。
「秋人くん!これからいっぱい思い出作ろうね?」
「は、はい!お願いします!」
「それじゃ!おやすみ秋人くん♪」
「お、おやすみなさい!」
そうして僕たちはそれぞれの家へと帰っていった。
帰路の途中、ふと彼女が頭の中に出てきた。
『いっぱい思い出作ろうね?』と顔を傾けながら言った彼女のセリフと顔が。
次の朝、一睡もできずに僕は学校へと向かった。
「よっ!」
「うわ!なんだよ翔か」
「なんだよとはなんだ。ひどくないか?」
「にしても珍しいな。お前がこんなことで驚くとは。さては昨日黒瀬か誰かにあったのか?」
「おいおい、なんでそうなる。」
「あ、これは本当にあったパターンだ」
「お前はエスパーか」
「よく言えばエスパー。悪く言えばストーカーだな」
「お前よく自分を犯罪者みたいに言えるな」
そんなくだらない話をしていたら学校に着いた。
教室に着き、席に座ると教室が騒がしくなった。
なんだよ一体。本当に飽きないよなこのクラスの連中も。
こっちは一睡もしていないんだ。寝かせてくれ。
顔を机に伏せて眠ろうとしていると周りの騒ぎ声がだんだん一箇所に集まり始めたのに気づいた。
そう、僕の机の周りに。
何事かと思って顔を上げたら僕の机の前で黒瀬さんが座り込んで僕の顔を覗き込んでいた。
「うわっ!な、何してるの黒瀬さん!」
「だって話するって言ったじゃない。だから声をかけにきたの。」
「あぁ。まぁ確かに言ったけど」
すると周りはこそこそ話を始めた。
「ねぇ黒瀬さんとあいつどんな関係なんだ。
「そんなの俺が知るかよ。てかなんかあるわけないだろ。現実見ろよ」
「黒瀬さんて意外にこういう人好きなのかな?」
「え〜。意外じゃない?」
うん。いつでも言われ放題だな。でも僕のせいで黒瀬さんまで何か言われるのはよくないよな。
「黒瀬さん。学校では無理して話しかけなくていいよ」
「別に無理なんかしてない!いっぱい思い出作ろうって約束したじゃん!」
「いろんな約束!?」
クラスのみんながハモって言った。
「約束って。お、覚えてないよ」
言ってて辛くなる。あんだけ嬉しかったのに。
「そんな……。じゃあ!昨日の昼何食べたの!」
「え?確か…生姜焼き定食」
「夜は?」
「麻婆豆腐」
「なんで昨日の夜まで全部覚えてるのに夜の私とあったことは覚えてないの?」
「昨日の夜〜!?」
またハモった。
「ごめんなさい。覚えてます」
「じゃあ、これからも話してくれる?」
「うん。わかったよ」
「なら良かった♪」
黒瀬さんってこんな感じだったか?
すると昨日美保と話していた時に話かけてきたメガネが僕のとこに来た。
やな予感がした。するとそのメガネは
「黒瀬さん…だったかな?僕は村田。入学式の時はびっくりしたよ。入試主席なんだって?さすが天才は違うなぁ。そんなことよりこんな奴ほっといて僕と話さないか?もっと楽しく有意義な時間を過ごせるよ」
うん。言うと思った。てかこいつ村田って名前だったのか。知らなかった。
「えっと…村田くん。じゃあ聞くけどあなたは例えば体育の授業でサッカーをする時、どうやってプレーする?」
「ん?質問の意図がわからないが、僕なら強いやつを集めてボッコボッコにする。できないくらいなら鼻からやらないし喋って時間潰すんじゃないか?大会とかなら話は違うけどたかが体育だろ?」
「なら私はあなたに話しかけられても話そうと思わない。どんなことも真面目にやる、人を見下すような人とは話したくないから」
「え……」
「それじゃ私時間だし教室戻らなきゃ。またね!秋人くん♪」
「う、うん」
この時僕は想像もしていなかった。まさか黒瀬さんとの噂が学校中に広まり、僕が注目の的になるとは
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