出会いと始まり
どのくらいの分量で書けばいいかわからず人気な方と同じくらいで書いてみました!早速話の感想を書き込んでもらえて嬉しいです!
次の話のあとがきに少しキャラクターの情報載せます!
小学4年生になった僕は、好きな漫画を買いに隣の駅まで歩いていた。自分の最寄りの駅は栄えていないわけではないが、本屋に並ぶ本は女性ものが多く少年漫画は少なかった。駄菓子を買いたい気持ちを必死に抑えて貯めた1ヶ月分のおこずかいを手にして浮かれていた。夏の暑さなんて忘れて無我夢中に歩き続けていた。
横断歩道を早く渡りたい気持ちを抑えてじっと待っていると、本屋に入っていく小学生の姿が見えた。
ん?あれは確か…
そう、その小学生は同じクラスの人気者、黒瀬葵だった。
僕は彼女も漫画が好きなんだと思った。
これをきっかけに仲良くなれるかも!
そう胸に期待を馳せながら青信号になった横断歩道を全力で走り抜けた。
本屋の入り口に着き、黒瀬さんを見つけた僕は彼女に声をかけようとした。
「黒瀬さ……」
そこにいた黒瀬さんは『運動の仕方、鉄棒編』という本を手に真剣に読んでいた。
そういえば明日の体育は鉄棒だったなぁ…
ま、まさかそのために本を読んでいるのか!?
そんなことを考えていると、奥にいたおばあさんが黒瀬さんに声をかけていた。
「おや、葵ちゃん。今度は鉄棒かい?」
「そうなんです。ただ鉄棒は苦手で…。だけどそれは言い訳で、できている人がいるんだから私もできるようになりたいと思ったんです。」
僕は驚きを隠せなかった。漫画が悪いとは言わない。けれど僕が漫画を読んでいる時間、彼女は少しでも自分のできることを増やそうと必死に頑張っていた。それを知った僕はいろいろなことを思い出した。
そういえば、前回の理科の授業の植物観察記録も、社会の授業の地図記号の問題も彼女はみんなより早く終わり、全問正解だった。
それにおばあさんはさっき今度はと言った。つまり黒瀬さんは自分のできないことがあるとそれをできないからと諦めるのではなく、ただ必死にみんなが遊んでいる時間を削って頑張っていたのだ。
それを知った僕は本屋さんを出た黒瀬さんを少しだけあとを追いかけていた。
すると黒瀬さんは公園へと入って行った。
「よーし、頑張るぞ!」
彼女はそう声を自分にかけながら、長くサラサラの綺麗なロングストレートの黒髪を縛って鉄棒を握った。
僕は自分の胸が締め付けられる感覚に陥った…。
帰り道彼女の姿を思い出してはドキドキして本屋に行く途中とは比較にならないくらい速く家についていた。
その時家にはお母さんの友達が来ていた。
しばらくしてその人は僕にこう言った。
「秋人くん。今したいことはあるのかい?」
「今は特には…」
「ならモデルをしてみないか?」
「モデル?」
「うん。雑誌に載ってみないか?普段お家にいるからか、秋人くんはとても綺麗な肌をしている。それに綺麗な二重。前髪が長くて見えないが、すごくいい顔立ちをしていると僕は思うんだ。だからやってみないか?」
「やります!」
この時の選択があっていたのか間違っていたのはわからない。だけど本屋と公園の黒瀬さんを見て、僕はなんでもいいから頑張りたい!そんな気持ちになっていた。
それから半年かけてデビューして人気になったのは間違いなく黒瀬さんのおかげだった。
なんてことを思い出していると気付けばN高校に着いていた。
俺も今日から高校生かぁ…
「よっ!1年だろ?俺も1年だからよろしく!って、秋人じゃん!久しぶりだなぁ!」
「翔も久しぶりだな。」
「相変わらずクールだな!」
こいつは和泉翔太。小学3年生から同じクラスで家が近かったから割と仲が良かった。というより一番だったかもしれない。まぁ、友達なんて数えるくらいしかいないけどな。
「てか、時間やばくね?」
「え、まじ?」
すっかり忘れてた。てっきりチャイムかなんかが流れると思っていたがあと5分で集合だった。
「走ろうぜ!」
「あぁ。」
「そういや秋人、何組だった?」
「俺は…3組だな。」
「お!なら怒られるとしたら一緒にだな!」
「できれば怒られずに済ませたい…」
俺たち二人は教室まで走った。あ、廊下走っちゃいけないんだった。
「すみません!遅れました!」
「おい、初日から何やってるんだ。早く座れ。」
「よし、じゃあ自己紹介やったら入学式行くぞ。ほれ、1番から。」
みんな自分の特徴や得意なこと、第一印象をよくするために頑張っていた。
「3番、和泉翔太です!仲のいい人からは翔とか翔太って呼ばれてます!みんなよろしく!」
なんて清々しい自己紹介なんだ。周りの女子からは黄色い声がちらほら聞こえてくる。
まぁ、スポーツができて髪の毛は天然の茶髪よりの黒髪。そしてあの身長に顔があったらまぁモテるわな。
「あ!あとこの髪の毛は地毛です!よく染めてるって言われてるけど。1年間仲良くしましょう!」
「ねぇ!やっぱり和泉くんかっこよくない?スタイルいいし!」
「んね!私も思った!すごく爽やかだし!」
はぁ…世の中顔か…
この和泉の自己紹介を和泉がしているからそう思われるのであって、普通の人がしても気にも留めないし爽やかなんて言われないだろう。
僕も顔はいいと言われているが、人と昔からまり話さないし髪も長いほうが仕事がしやすいと言われて、普段は目に髪の毛が被っていて顔がよくわからないようになっている。良くも悪くも目立たない平凡な高校生だ。
「じゃあ次のやつ。」
「はい。」
「21番。佐藤秋人です。お願いします。」
よし、これでそんな目立たない。
みんなが自己紹介をしていく中で聞き慣れた名前が出てきた。
「26番。永峰美保です!」
高校入学して二人目の小学生のメンツに再会した。