憤怒と幸福
こういうスカッとするような話が書きたかったので書いてみました!
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「発言いいですか?」
僕はいてもたってもいられず、手を挙げて記者たちの注意を向けた。
「こ…光輝」
「僕は、モデル活動をしています。光輝と言います。先程の記者さんの発言を聞いて1ファンとして感じたことがあります。この会見とは無関係なのに出しゃばるような発言をまずはお許しください」
そう切り出した。
僕は彼女の良さを知っている。
どれだけ頑張ってきたか。
どれだけ自分を制限してきたか。
だから僕は続けた。
「では記者さんに質問です。あなたは自分の記者という仕事に対するプライドはありますか?」
「え?まぁ、それなりには持って仕事をしているつもりです。それが何か?」
「あなたはプライドを持って仕事をしている人が自分だけだと思っているのでしょうか?僕は彼女の隣でいつも彼女の努力する姿を見てきました。彼女は適当に仕事を流したり、私情を誰かに押し付けたりといい加減な態度をとっているところを見たことがありません。それはスタッフの方に聞けばわかる事だと思います」
「それが何か?さっきから何が言いたいんですか?」
「いい大人が、年下の女性に対していかにも攻撃的に接する必要があるのかと聞きたいだけです。彼女だって、好きでやってなかったらここまで仕事は続いていません。それを今、辞めようと決意したのです。その決意を自分が経験したことがないのに簡単な言葉でその決意を傷つけていいわけが無い。あなたが何を思ってこのような発言したかは知りません。ただ、ファンの人はその答えを聞いて気持ちいいですか?」
「ファンだって聞きたいに決まっている!何も知らない子供が口を挟むな!」
頭にきた。
ここまで人に言われてもまだ気づけないのか。
僕は記者の元へと歩いていた。
そして怒りをぶつけた。
「だったら…この仕事の辛さも何も知らないのに勝手なこと言ってんじゃねぇ!ファンのために色んなことを考えて自分よりもファンを優先している彼女を…あんたはその場の感情で台無しにしたんだ。謝れ!」
「俺は別に何も…」
「いいから謝れ!」
「え〜。この度、私の感情で失礼な発言をしてしまったこと、お詫び致します。すみませんでした」
僕の怒りがピークだった。
すると彼女はマイクを持って記者に対してこう言った。
「私の方こそすみません。自分でも覚悟はしていたのですが、やはりこの場でもあなたのような気持ちを抱く方がいるのだからファンの人だってそう考える人も沢山いらっしゃると思います。しかし、私はもう決めました!自分で開いた道です。後悔はしていません。」
するとマネージャーが気を利かして会見を終わらせてくれた。
「え〜。今日は会見は終了したいと思います。質問がございましたら、事務所を通して頂ければ返答できる話は返答したいと思います。では以上になります。足を運んで頂きありがとうございました」
記者やら報道関係の人は会場をあとにした。
今考えてみればやりすぎたなと自分でも思った。
反省しなきゃな…
すると菜穂がこちらに向かって走ってきて…
抱きついてきた。
「ばか…何であんなこと言ったの…私は終わりでもあなたは終わりじゃないのに…。これでネットで悪口でも言われたら私…」
「菜穂…僕は自分のしたいことをしたんだ。それに数百のネットで悪口を書く人より目の前の大切な人1人を取るよ。それに…」
「それに?」
「僕は菜穂が頑張ってたの…知ってたから。あんな風に全部を知らない人が悪口言っているのを見るとなんか腹たっちゃってさ。それよりゴメンな。せっかくの引退会見だったのに…」
「ううん…。嬉しかった。秋人が私の事ちゃんと見てくれてった知れて。やっぱり誘って良かった」
すると菜穂は僕の胸で再び涙を流した。
さすがにここで邪険にはできないと思った。
だから僕は彼女をそっと抱きしめた。
どのくらい時間が経過したか。
気づけば外は夕方から夜になっていて、マネージャーに家に帰るように促された。
「じゃあ、帰るか」
「うん!一緒に帰ろ!秋人♪」
帰り道。僕達は何故か無言だった。
菜穂はずっと下を向いているし、僕もなんだか気まずくて声をかけずらい。
すると帰り道が別れる所まで到着した。
「それじゃあ、私あっちだから。今日はありがとね」
「う…うん。じゃあ、また明日な」
「待って秋人!」
僕は帰り道の方向を向いていたから菜穂の方へ振り返った。
菜穂は僕にキスをした。
「な、何を…!?」
「いいのっ!今日のお礼。私、これから素直に生きていくから!また明日ね!」
そう言って彼女は走り出した。
夜なのに、目の前の景色が明るく感じた。
映画のワンシーンのように彼女はとても輝いていた。
僕は間違いなく葵が好きだ。
だけど、少し胸の奥がザワついた。
その理由は僕にはまだ分からなかった。
こうして家に帰り、やることを済ませて寝ようとした。
しかし、なかなか寝付けなかったのは多分…夏が始まるせいだろう。
そう考えた秋人だった。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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