ただいま
村を出て176日目。
荷物運び用の仕掛けから、何が送付されて来たのかとワクワクする村人たち。
まさか、モンタが女の子を連れて出てくるとは思わなかったらしい。
「こ、このめんこい子は、一体っ!?」
「サバトラ侯爵家のご令嬢ニャーディ様っ!?」
「モンタ、誘拐は駄目だ…」と村中の老若男女がご立腹する中、「あ、あの、ち、違うのです」と口を開くニャーディ。
ニャーディが説明してくれなかったら、俺、フルボッコだったよ?
「そ、そんで、おめぇ、どうする気だぁ?」
「俺とニャーディだけじゃ、赤子さ、取り出せぇと思って」
「でも、生まれるまで、あと6,7,8ぐらいとして、大都市へ戻るには、200日かかるぞ? やはり誘拐と思われちまうんじゃねーか?」
「しまった…そこ、考えてなかった」
「あの…この村で、住まわせて頂けないでしょうか?」
「いやぁ…。いいんだけどよ。侯爵家ご令嬢じゃ、この村はきついぞ」
「私、生まれてくる子と、ずっと一緒にいたいのです」
「おう、モンタよ。ニャーディ様、こんだけ覚悟決めてんだぁ? おめぇはどうなんだよ」
「ニャーディ、もう二度と、父や母とは会えないぞ? 貴族としても生きられないと…わかってるのか?」
「はい。でも、お願いがあります」
「おう、何でもモンタに言えやぁ、ぶっ飛ばしてでも、約束させてやらぁ」
「ふふっ。ありがとうございます。モンタ様と夫婦になりとうございます」
「そいつぁ、おめでてぇなぁ! モンタ、おめぇも、いっちょ前の男だ」
村では、モンタとニャーディの新居が作られ始める。
猫亜人のニャーディは、たちまち村の人気者となった。
物珍しさにちやほやされるだけではない。
その村へ打ち解けようとする真摯な姿勢、できることは何でも自ら行う努力、分け隔てない純真な心。
「おめぇ、とんでもねぇ、嫁さんもらったもんだな」
とうちゃんに褒められたぜ。
そして、ニャーディの陣痛が始まる。