押し問答
「構いません」とニャーディが言うと、誰もそれ以上は進言しようとしない。
馬車、街の中、城内、別館、そして、ニャーディの部屋。
執事も侍女も追い出され、ニャーディと二人だけとなる。
一応、短刀は取り上げられたのだが、誰も持てないため廊下に置いてある。
「緊張しないで、もう誰もいません」
「あの、ニャーディ様は…」
「ニャーディと呼んで」
「はい。ニャーディは、私のようなものと、関わってはいけません」
「なぜです?」
「い、忌み子だからです」
「忌み子の何が悪いの?」
「わかりません」
「なら、問題ないでしょう」
「怪我の治療をします。包帯を取りますね」
「だ、だ、駄目です」
「あら? なぜかしら?」
「えっと、か、顔が醜いからです」
「それだけ?」
「は、はい…」
「なら、問題ないでしょう」
「お、お願いです。お願いします。包帯を取らないで…」
「私が、これだけ親切にしているのに、あなたは先程から隠し事ばかり」
「ごめんなさい。でも、言えることと言えないことがあります」
「言ってみないとわからないでしょう?」
「おっかーや、とうちゃんにも、駄目と言われてます」
「あなたは私を傷つけています。私の心はその程度だとでも?」
駄目だ、この人、自己中すぎる…。 涙が出てきた。
「男の子が泣いてはなりません。泣きたいのは私の方です」
「誰にも言わないで、そ、そしたら、教えます」
「はい。私を信じなさい」