人外との遭遇
村を出てから、173日目。
いよいよ人外とすれ違うことが多くなってきた。
このまま大きな道を行くか、森の中を行くか。
「おい、忌み子、汚いから端っこ歩けっ!」
誰が誰に言っているのかもわからないので、無視していると、突然蹴り飛ばされた。
「何、誰? みたいな顔して無視してんだよ。お前以外、どこに忌み子がいるんだよ」
なるほど図鑑で見た狼亜人か、確か、性格が悪く喧嘩っ早いため、注意が必要だった。
「すいませんでした。お許しください」と土下座をする。
狼亜人は引っ込みが付かないのか、土下座した俺の顔面を蹴り飛ばす。
その反動を利用して、大きな道から転げるように、吹き飛んでみせた。
「けっ、二度と、この道を歩くんじゃねーぞっ!!」
(よかった。たすかった)
「待ちなさいっ!! その子に謝りなさいっ!!」
(えっ!? 余計なことしないでよ…。倒れたまま目を瞑っていよう)
「何だぁ、この糞ガキがぁっ!」
(そらみたことか)
「誰が糞ガキだと? 貴様、サバトラ侯爵家のご令嬢ニャーディ様に向かって…何をしておる、騎士団共、この賊を捕らえよっ!!」
(うっ…面倒な予感がする)
「そこの子。大丈夫ですか?」
「ニャーディ様、触ってなりません。手がお汚れになります」
「何を馬鹿なことを言っておる」と俺の頭を抱える。
薄めを開けると猫亜人であった。
すぐさま土下座し感謝の意を伝えると、立ち上がり、笠と刀を拾い森に逃げ込む。
「待つのです」と右腕を引っ張られた。
「何か御用でしょうか、忌み子には関わってはなりません」
「ニャーディ様、その子の言う通りですぞ、関わってはなりません」
「駄目じゃ、連れて帰るぞ」
絢爛豪華な馬車、ニャーディ専用なのか、他には誰も乗らない様子。
「いけません、忌み子である私と二人切りなど…」