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2話 サブヒロインこそ真のヒロインみたいです。

二話です!!


遂に日隠のある意味でアドバイザー的存在の朱鷺瀬ときせさん登場!!!


むしろ朱鷺瀬さんのためにある回と言っても過言じゃな…………


それでは本編をどうぞ。

 教室にかけられた時計に目をやると、針はほぼ縦一文字。

 放課後をほぼ丸々費やすことになった、苦行ともいえる告白レッスンからようやく解放され、今は俺と日隠の二人きり。

 教室には、先ほどまでとは違うゆったりとした時間が流れていた。



 そんな中、俺はというとあまりの疲労に自分の机にぐったりと身を預け、一種の無気力状態。

 静かな教室でレベルの高い美少女と二人だけだからといっても、全く何かするどころか話しかけようという気さえ今の俺には起きない。

 これが特に疲れていない、普段の俺だったら多少は展開も変わったかもしれないだろうが……。

 

 それもこれも、当然先ほどのレッスンで尋常ならざる精神的ダメージを受けたせいだ!!

 あれほどまで思いを伝えるのに不向きな人間がいるなんて想像もしていなかったよ。


 そんな被害者側である俺の心身ともに満身創痍な様子を気にとめる様子もなく、日隠が手元の本に視線を落としながら、声をかけてきた。


 「ねぇ、軍羽君さ……話があるんだけど」

 これ以上、変な言動されるのも困りものなので、机の上に組んだ両腕に顔をうずめ、防御形態に入る。

 外敵から身を守るべく甲羅に首をひっこめた亀にでもなった気分だ。


 「ちょっと、顔あげなさいよ」

 スルーしたことにご立腹なのか、上から普段よりツンとした声が降ってくる。

 

 「ただいま、千輝君の精神は留守にしております、発信音の後にお名前とご用件をお話しください。ピー」


 「えぇと……名前は日隠なずなといいます。感謝を伝えようかと思って…………ってちっがぁぁう!」

 

 途中で冗談だと気づいたのか、声をあげてツッコミ、恥ずかしさを誤魔化そうとしている。

 

 しまったぁ~、こいつこういう冗談とかネタで言ったこと真に受けちゃうやつだったわ。

 顔は見ていないが、おそらく無意識に反応してしまったことに対して赤くなってるかもしれない。

 

 しかも内容が感謝だったなんて、少し申し訳ないことしたな。

 でもちょっと面白かったから、もうちょいこのままにしとくか。

 引き続き、顔は机に突っ伏したままの格好で日隠の様子を観察する。

 まぁ、目で直接見てるわけではないので観察ってより聴いてるだけなんだが……。

 そんな俺の意地の悪い考えが分かっているのか、いないのか、日隠はあーっ、もう!なんて声とともに机をバンバン叩き始めた。


 「だから、話を聞きなさいってば!」

 うーん、次はどんなフリをしてみようか。

 そして、唐突に頭に浮かんだ言葉をそのまま呟く。

 

 「ナズナッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ」

 少し地声より高めにして、それなりに声真似までやったぞ。

 さて日隠はこれにどう返してくるかな?

 「わ、わう~ん……」

 ほとんど間を空けずに、頭上から聞こえてきたのは寂しげな犬の鳴き声。


 まさかの犬真似!? これは俺の負けだわ。

 危うく吹き出しそうになるところだった。

 顔を上げると、顔を真っ赤にして、俺を睨みつけるナズナッシュと目が合う。

 しかし、役になりきるためか手を犬の前足のようにしてポージングを取っていたため、睨まれてもあまり怖くなかった。

型まで合わせるとは……。何だ、その無駄な役者根性じみたものは。

 「ナズナッシュ……。さっきのはいい返しだったと思うよ?」

 「ナズナッシュって命名やめなさいよ! しかも笑ってるし。というか二回も私に冗談を言うなんて……軍羽君って最低な男ね…………変態」

 両手を腰に当てて、聞き捨てならないことを言う日隠。

 「どこに変態と呼ばれる要素が!?」

 

 ただ冗談を言って、日隠が反射的にそれにノッてしまったというだけで、別にこの状況にやましいことなんてないはずなんだが……。

 

 日隠は、自分の肩を抱き、身を捩ると俺に向かって言い放った。

 「私にあんなことを言わせて辱めたことよ!!」


 おい……冗談のノリのことを『あんなこと』とかいう伏せ方するなよ。


 何やら今の爆弾発言に呼応するかのように部屋の外がざわつき始めたので、後ろの入り口から廊下の様子を確認してみる。

 そこには「とうとう軍羽君、やっちゃった?」という声や、「あいつは周りのサポートはしても、自分はリア充にならないタイプだと思ってたのにぃ!」と嘆く同級生の姿が。

 どうやら、日隠の声が思いのほか響き渡ってしまったようで部活帰りに荷物を取りに来た奴らに聞かれていたみたいだ。何と間の悪い……。

 

 中にはこちらへ「リア充死すべし」オーラが滲み出た一団が、恨めしげな目線を向けてきたりもしたが、それに関しては無視。


 数分ほど周囲からの誤解を修正した後、改めて教室に戻って来た時には、先ほどまであった姿はいつの間にかスクールバッグともども消えていた。

 

 人に話があるとか言っておきながら、先に帰るとか……。

 こんな風に日隠を育てたやつの顔が見てみたい!

 あ、一部は天姉からのの影響か。それならしょうがないな。

 

 とは言え、俺も元から早く帰りたいと考えていたので、好都合といえば好都合。

 帰りの支度を素早く済ませ、ひとまず教室から出ると、昇降口へと向かった。


*********


 廊下を歩いている間、今日のことや今後どうしていくかということが頭の中を駆け巡っていた。

 うーん、そもそもあいつのミッションはこのまま進めていずれ成功するのか? いや、今日だけでも不安を覚えた箇所がいくつもあった。

 他人の言ったことに影響を受けやすいという事は、そのまま自分というものを持っていないという事につながっている可能性がある。まぁ少し違うが、朱に交われば赤くなるというやつだろう。一方で普段は冷たい感じを貫いているけど、あれすら自分を守るために演じているのだろうか? あのクールさや冷淡さがそのまま彼女の本質だとはどうにも思えないんだよな。


 それにくわえて、未だ会っていない天姉から押し付けられた問題児二人。

 貰ったプロフィールを見た限り、あれはあれでまた一癖も二癖もあるようなやつらだったな。写真はついてなかったが、たしか一人は先輩の『御堂コハク』、もう一人は……えっと何だっけなぁ……。

 少し考えたが、なかなか思い出せないため、天姉から貰ったプロフィールを取り出そうと、鞄の中を片手でゴソゴソと探る。

 「どこに入れたっけかな…………あ、あった」

 

 ようやくつかんだと思った矢先、

 「よっ! グンシ!」

 何者かに背中を押され、階段を三段ほど踏み外しそうになった。

 

 慌てて、その三段分を跳び、階段の踊り場に足をつく。

 「あっぶねぇなぁ! 来葉!」

 「んー、ポーズまで決まってれば満点だったんだけどなぁ~。……とうっ!」

 来葉と俺が呼んだ少女は、わざわざ一番上の段まで上がり直すと勢いよく跳び下り、鮮やか俺の隣へと着地した。

 勿論、本人が言ったように両腕を上にビシッと伸ばすというポーズを決めながら。

 相変わらず元気な奴だな。


 「これが満点の見本だよ?」

 「いや、勝手に競技化されてもなぁ……。大体俺不意打ち受けてるっていうハンデあるし……」

 「まぁまぁ、細かいこと気にしたら負けだよ!」

 茶目っ気のある笑みを浮かべた来葉に顔を覗き込まれ不覚にもドキッとしてしまった。

 背中を押されながら、さらに階段を下り、昇降口へ向かう。


 一年の途中から転校してきた俺と真っ先に仲良くなり、今では一番の良き理解者でもあるこいつは朱鷺瀬来葉ときせくるは

 カーディガンを羽織りつつも、腰にはパーカーを巻くという独特なスタイルを出会ったときから変わらず続けている、背が低くふわっとした小動物系女子だ。

 そして日隠に女王様キャラこそ最近の流行りという法螺を吹いた張本人。

 というか、日隠が転校してきて以来、毎回のように悪い意味で影響を与え続けている気がする。


 てなわけで、まずはその件についての糾弾から始めようか。

 「来葉さぁ、また日隠に変なこと吹き込んだろ? なんか今日あったら練習とはいえ下僕扱いされたんだけど……」

 それに対する被告人の反応はあっけらかんとしたものだった。

 顎に指をやり、少し考えるような仕草をした後、こちらへ顔を向ける。


 「え? だってグンシ、あぁいうの好みでしょ?」

 「いやいや、流石に女王様がタイプになったことはないぞ?」

 「えぇ、おっかしいなぁ~。前グンシの部屋を漁った時に、そんな感じのものが出てきたような……」

 何こいつ人の部屋の捜索勝手にしてんの? てかそれを何で姉貴は容認しちゃったの?

 「一応確認しとくけど……それって、いつの話?」

 「グンシが転校してきてから二週間後くらいかなぁ~。その時グンシに取材するつもりだったのにいなかったからさぁ、お姉さんに言ったら、泣きながら「え、千輝の新しいお友達?

遠慮なく上がって!」って言ってくれたからさ」


 あぁ、そういえば転校生について知ろうみたいな特集記事で、俺のこと書こうとしてた時あったなー。

 言い忘れていたが、来葉は一年の頃から広報部と放送委員会の二足の草鞋。情報を動かすことに関しては右に出る者はいないとまで言われている。

 つい最近もサッカー部のキーパーとマネージャー二人の修羅場がすっぱ抜かれたとかなんとか……。


 話を戻そう。そうそう、日隠に冗談を言っちゃダメってとこだったな、たしか。

 「今後はあいつに冗談とかデマとか言わない方がいいぞ? 何しでかすか分からないからな。下手したら人を刺しかねない」

 「あぁ~、今日グンシがやった放課後のレッスンみたいに?」

 納得したように、手をポンと叩く来葉。


 今更だが、グンシというのは来葉専用になりつつある俺のニックネーム。

 転校してきたその日に直感で決めたらしい。

 「お前って本当に耳が早いよな。いつ知ったんだ?」

 「さっき用があって浅葱先生に会った時かな~。ま、今度からは善処しますって! そんなことよりグンシさ、さっきからその手に持ってるファイルは何?」

 

 来葉が指さしていたのは、先ほど階段で押される前に鞄から取り出した青のファイル。

 瞬時に天姉から極秘事項と言われたことを思い出し、自分のブレザーの中にしまいこむ。


 「ん? 今の動きは怪しいなぁ~? 見たい知りたい広めたい!」

 二つ目までは百歩譲っていいとして、三つ目は絶対ダメな奴だろ……。

 まぁ、それが来葉の情報収集力の源なんだろうけど……。


 いやいや、思わず熱意に負けそうになったがこれだけはダメだ。

 だって、渡す際に関係者以外に見せたら存在を抹消する。とか言われたし……。

 

 しかしそんな天姉からの脅迫を来葉が知っているはずもなく……。

 「全てのスキャンダルとスクープは私の掌にあるんだよ! つまりその秘密も私の物じゃなきゃダメなのだよ!!」

 手をわきわきさせながら迫ってきた。

 「何だよ、その理屈! やだよ、渡したら殺されるかもだし!」

 

 遠慮なく俺の脇腹に両手を当てると、ブレザーの中に手を突っ込んできた。

 「自分の命と私の喜びどっちが大事なの!」

 ムニュッと背中に柔らかい感触が押し付けられ、一瞬たじろいでしまったが今はそれを嬉しがっている余裕はない。何せ命がかかっている。

 「それは迷うことなく、自分の命だろっ!」

 

 「むーっ!」

 頬を膨らませ、こちらに訴えかける視線を送ってくる来葉。

 まさしく小動物のような愛らしい様子に思わず防御が緩んでしまうところだった。


 いちいち一つ一つの動きが俺の心を揺さぶってくるあたり、とんでもなく手強いな。

 何かほとんどのスペックにおいて日隠よりもこっちの方がメインヒロインっぽいんだが……。


 このままだといずれ持ってかれそうだな、てか普通に渡しちゃいそう。

 ということで、俺の頭上にファイルを持った手を掲げ、来葉の手が届かないようにする作戦に切り替える。

 「ふははっ、これならどんなに頑張っても届くまいよ」

 「うわっ、ずっるい! このっ!」


 ぴょんぴょん飛び跳ねて、俺の手から何とか奪い取ろうとするも数センチほど足らずに、来葉の手が何度も空をかく。

 

 そんな来葉の動きに合わせて揺れるはなだ色の髪と双丘に俺は目を奪われてしまった。

 

 だって、放課後日隠と特訓していた時は見れなかった光景だし?

 まぁ、日隠も絶壁ってわけじゃないんだけど……こっちの背にいくはずの栄養が胸に流れてしまった少女の方が圧倒的に強いのは間違いない、うん。

 にしても、可愛らしい仕草と言い、破壊力抜群な核弾頭と言い、いちいち全てがツボを押さえているあたり、やっぱりこっちの方がメインヒロインなんじゃ……。


 「うぐっ、ふぬっ、やぁっ!……やった!」

 

 跳びはねること五十回ほど……。まぁ詳しくは数えてないけど。

 とうとう俺の手に持っていたファイルに手を届かせ、ファイルをひったくられてしまった。

 「やった!! 遂に取れた!!」

 

 くっ、千輝、痛恨のミス。

 「いや、返せって、おい!」

 「折角手に入れた情報をみすみす手放すような真似を私がするわけないじゃん!」

 片脇に戦利品を抱えて勝ち誇った表情。

 何てことだ、胸に目が行き過ぎたのが敗因だとでもいうのか!!

 「さぁて、気になる中身はなんじゃろなぁ……っと!」


 躊躇うことなく、来葉がプロフィールの紙に目を通し始めた。

 それはもう、一枚一枚じっくりと隅々まで読み込んでいる感じだ。

 

 余談だが、来葉は学習においての記憶はともかく、こういう自分にとってスクープになると思ったものへの記憶力が尋常じゃない。

 つまり今回に限って言えば、この情報はもう来葉の頭からほぼ消えることはないということ。


 あ、トップシークレットのはずなのに全部詳細まで知られるとか俺死んだんじゃないか?


 さようなら、明日の俺! ありがとう、今日までの俺!


 現世からの別れの言葉を心の中で述べていると、ほとんど中身を読み終えたであろう来葉が俺のブレザーの袖を引っ張っていた。

 「そういえばここに八重倉麗やえくらうららさんって名前書いてあるじゃん?」

 俺に腰をかがめるよう促した後、耳打ちしてくる。

 

 その名前って俺がさっき思い出せなかった、問題児だって言った二人のうちの一人だな、そういえば。

 「たしか載ってたな、で? そいつがどうかしたか?」

 「だからさ……」

 耳にかかる来葉の吐息が、こそばゆい。

 

 いちいちヒロイン力の高い行動を次々繰り出すのはやめてあげて!

 相対的に日隠さんのヒロイン力はもう0よ!

 

 しかし、今までのが易しく感じるくらいにヒロインらしい言葉を、来葉は続けて囁いてきた。

 そう、その内容というのが…………

 


 「私と明日デートしてくれない?」

 

 え? まじか? 嘘だよな?

 驚きのあまりのけぞって来葉に目を向ける。

 本人は特に冗談を言ったつもりもないようで、普段通りニヘッとした悪戯っぽい笑みを返してくる。



 

 いやいやいや、メインヒロイン以外のデートが最初のイベントとかそんなことあるの!?

 というか「八重倉さん」の名前が載っていることと何の関係が!?

 

 様々な疑問が浮かんだが、最終的には来葉の「だめかな」という上目遣いに負けて、了解してしまった。

 


 




 ちなみにその夜、電話で天姉に懺悔したところ「朱鷺瀬は関係者みたいなもんだから別にいいぞ?」というなんとも適当な返事が戻ってきた。


 びくびくして損したわ。


読んでいただきありがとうございました。


僅か二話にして最後でそれなりの急展開にしたつもりですが、いかがだったでしょうか。


天姉に問題児と称された二人も名前だけではありますが判明してきて、ますます日隠の影が薄くなってき……話が進んできたような気がします!


次回はデート回!


とはいえ、「来葉が広報部であること」という点を考えると、どんな展開か予想がついてしまうかもしれませんが…………



感想、アドバイス等々お待ちしております!

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