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プロローグ「難儀な彼女と告白レクチャー」

あらすじにも書きました通り

『青春をプロデュースするだけの簡単(?)なお仕事』からタイトル、ストーリー、キャラ設定をいじったリメイク版になります!


初回は1話の少し後の話。


登場人物は


軍羽千輝くさばちあき……主人公、日隠のサポーターでありプロデューサー

日隠ひかげなずな……メインヒロイン(のつもり)、思い込みがとにかく激しい。

浅葱天那あさぎあめな……教員、軍羽千輝の姉と親友であり、千輝のこともよく知っている。

 放課後、人気ひとけのない教室で女子と二人きりなんて状況下だったらおそらく誰しもが期待するだろう。 

 こいつ、俺に気があるんじゃないか?と

 今の俺はまさしくそんな状況。

 向かいに目をやると、最近この学校に転校してきたばかりの女子の日隠ひかげなずなが、少し頬を赤らめながらこちらを見つめ、ブレザーの袖をぎゅっと握りしめていた。

 普段の肌が白すぎるから、赤くなったのが目立っているだけかもしれないが……。


 こう言うと、リア充の告白場面じゃねぇかと思われるかもしれないが、そんなことはない。

 それというのも次に日隠が発する言葉を聞いていただければお分かりいただけるだろう。


 だいぶ間を置いた後で、日隠が口を開いた。

 内容は、俺にとっては最早聞き飽きたと言ってもいいこの言葉。

 「私の下僕として、未来永劫仕えるのならあなたの思いを受け止めてあげてもいいわ!」 


 日隠が言い放った、およそ惚れた側が言うものとは思えない内容の告白が、がらんとした教室に響き渡る。

 

 ポーズと言葉が合ってないんだよな……。

 というかそもそも、

 「お前はそんな台詞でおちる奴がいると思ってるのか? この口調だけ女王様じみた告白はもういいからさ……。 そろそろ普通のやつお願いします」

 俺はその主従契約のような言葉に嘆息しながら、ひとまず感想を返した。


 …………やれやれ、これでもう十回目の告白(仮)になるのか。

 もう二桁に突入したというのに、未だ一度もまともなものが見れてないんだが……。

 何回、俺を下僕扱いすれば気が済むのやら。

 

 予め言っておくと、この告白自体は決して俺に思いを寄せているから何度も挑戦しているのではなく、一種の『特訓』と言った方が正しい。

 そして、俺はその特訓の練習相手……というか審査員というだけだ。

 決して女子からの好意を無碍に扱っているというわけでも俺のストライクゾーンが違うとかいうわけでもない。

 ……まぁ、もし仮に今のが本番だとしたら、多分された側は、こいつ頭おかしいんじゃないか?いう感想しか抱かないだろうな。

 今の俺がまさしくそれだし。


 そもそもこの状況になっているのは、春も半ば、高校二年に進級してから一か月というタイミングで引き受ける羽目になった二つのミッションが原因だ。

 より細かく言うなら、そのうちの一つである『日隠の報復を成功させること』というのが主な理由。

 聞いた話では、中学時代に手ひどく振られたことがあって、その相手に一泡吹かせたいということらしい。

 もう一個のミッションというのはいずれまた話すとして、(仮)と言ったのはこういう経緯のため。

 つまり今は日隠の報復実行に向けて修行中というわけ。

 日隠の方に再度視線を向けると、今のはどうだった、と言いたげな期待のこもった目をしていた。


 ……これが告白として成立するとお思いなんですか?


 「五点、やり直し」

 クリップボードに挟んだリストへチェックをつけながら、いたって妥当な評価を伝える。

 日隠はそれを聞くと、信じられないといった様子の顔をし、がっくりと肩を落とした。



 逆に聞こう、この告白のどこにそんな点数に期待できる要素があったんですかね……?

 「あの告白でもダメなんて! え? 誰もあれじゃおとせないの?」

 おとせるかおとせないか以前に、はたして世界中の何人が告白と捉えることができるのかという事を言ってやりたい。

 もし捉えることのできる奴がいたら、そいつは日隠の脳内を読み取れる凄腕の超能力者に違いないだろう。

 結論、言葉からだけではまず告白と分からない。

 

 そんな俺の呆れと憐れみを含んだ視線を真っ向から受け止めてくれるはずもなく、日隠はなおも私の方が正しいとばかりに食い下がってくる。

 今回は前の時よりしぶといっすね。

 「ねぇ、それにしたって今の点数絶対低いでしょ! すごい自信あったのに」

 厳正なる脳内会議から出た結論に、異を唱えるとは……。

 ま、コンマ2秒くらいで結論出せるくらいの会議だったけど。


 というか、さっきの告白内容に自信があった…………だと。

 いよいよ、こいつの感性が分からなくなってきた。

 

 大体、俺はこれでも高くした方だ。

 

 ……初回の「私のために死ねる?」は、逆ベクトルに満点だったからな。

 それも元から気が強い性格とかが備わってるならまだしも、こいつの場合はどちらか言うと穏やかな部類だろうし、はっきり言ってしまえばキャラに合ってなかった。

 まさかこの人からこんな言葉が飛んでくるなんてとギャップという意味では最大レベルだろうが、ギャップがひどすぎてその落差に卒倒しそうになるレベル。


 「今まで散々マイナス点ばっか出してたやつが、何を言い出すかと思えば……。これは俺以外の誰が評価しても同じになるだろ、どう考えたって。……お前は本当にそれでリア充になれると思ってるのか?」

思わず疑わしげな目を向けた俺に日隠が弁解し始めた。


 「いや、一部のニーズには喜んでもらえるはず! そういう人を何て言うかは忘れたけど……。それと私はリア充になりたいわけじゃなくて、目的のために手を貸してもらってるだけだから!」

 もしかしてこいつの言い回しがやたら女王様っぽくなってるのってその一部のニーズのためってことなのか……?

 

 「そのニーズのことは今は考えなくていいぞ、日隠。……まぁ、お前の本来の目的が中学時代の出来事の払拭だってことは既に聞いてるけどさ。どちらにしたってもうちょいノーマルにお願いできないかな? それともお前の復讐したい相手はアブノーマルな趣味をお持ちだったの?」

 

 「ええと……まぁ、あんまりそういった印象は受けなかったけど……最近の女子はこういう人が多いし、男子からも人気だって言ってたから」

 「お前は生まれたての雛鳥かよ! すぐに何でも信じ込む癖どうにかしてくれ」

 思わず突っ込んでしまった。

 最近の若者はすぐに情報を鵜呑みにしがちだって聞いたことがあるけど……こいつもその例に漏れないみたいだ。


 「で、それは誰情報なんだ?」

 「えっと、朱鷺瀬さんだけど……」

 あいつ、あれほど日隠に余計なことを言うなと釘を刺したばかりなのに……。

 日隠のただでさえ思い込みが激しく、誰かれ構わず信用してしまうという性格からすると弁だけは立つ朱鷺瀬来葉ときせくるはは相性が悪いなんてもんじゃない。


 「いいか、お前は見た目だけなら転校生とはいえこの学校内上位に食い込めるんだ。問題はその何でも吸収して実践しようという、少なくとも今回に関してははた迷惑なそのスピリットにある。とりあえず心意気は認めるが、今は封印しておいてくれ」


 そう、こんなヒロインとしての素養はポンコツでしかない日隠ではあるが、それはあくまで内面の話。

 外見がずば抜けて綺麗なのは、紛うことなき真実だ。

 ミディアムな長さながら、混じり気の無い黒髪。それとは対極的に雪のように白く滑らかで、窓から差し込む夕日を反射して煌めく柔肌。

 分かりやすい特徴なんかはないが、有り体に言って黒髪美少女だ。

 大和撫子と言い換えてもいい。


 ……これで内面がもう少ししっかりしていれば言う事ないんだけどな。


 「うぅ……見た目だけならってのは引っかかる言い方だけど…………。じゃあどういうのがいいの? 軍羽君、文句だけじゃなくてお手本とかアドバイスとかが欲しいな」

 

 「そこに気づいてしまうとは、お前は天才なのか?」

 

痛いところを突かれてしまった……。

 まさか模範演技をしろと言ってくるとは……。

 あと今までのは文句じゃなくて講評だからな、その言い方だと俺がすごい嫌な人になってしまうだろう?

 

 「で、やってくれる?」

 目の前に立ち、上目遣いで頼んでくる日隠。

 そんな日隠の可愛らしい頼み方に、無意識に首を縦に振ってしまった。

 



 しょうがない、そこまで言うならやってやろうじゃないか。

 俺が本物の告白がどういうものか教えてやるよ。

 

 日隠の目を見つめ、口を開こうとしたその時。

 「勘違いしないでよね。別に、軍羽君のことが気になったとかそういうわけじゃないんだからね!」

 教室の後ろのドアあたりから、ツンデレ口調の告白が耳に届いた。

 声の主は、俺と日隠がよく知る人物の浅葱天那先生。

 

 「浅葱先生、年甲斐もなくいきなりテンプレのツンデレ台詞使うのやめた方が―――」

 

 ザシュッッ!!

 感想を言うより先に飛来する凶器。


 よく見ると、市販のボールペンのようではあったが、俺の目の前をかすめ、本来刺さるはずのない鉄筋コンクリートに突き立っている様子に戦慄せざるを得ない。


 「別に、眼を狙って投げたわけじゃないんだからね! 勘違いしないでよね!」

 そこは勘違いであってほしかった。

 

 え、というか眼狙ってたの?

 一歩間違えば三国志の夏侯惇の如く隻眼になるところだったのか。今さらながら鳥肌が……


 そんな俺の恐怖心もどこ吹く風と、今度は日隠に向かって思わず耳を疑うようなアドバイスをしはじめた。

 「なずな、これが確実に成功する告白ってやつだ、よく覚えておけ。」

 「いやいや、二個目のやつは絶対違うでしょ! あれは告白ってか脅迫だよ! ……てか浅葱先生いつからここに?」

 「お前に浅葱先生と言われるのはなんか変な感じだな、天姉でいいぞ。授業以外は。うーん、いつからって言われると……なずなの告白を5点と切り捨てたあたりから廊下にはいたぞ?」


 浅葱先生は俺の姉の大親友ということもあり、俺を幼い時から知っていると同時に、日隠の伯母にあたるという俺ら二人にとっての理解者的存在。

 ついでに言うなら、日隠のサポートやら面倒事を全部俺に投げてきたのもこの人。

 こっちもこっちで見た目はずば抜けて凛とした大人の女性なのに、性格は傍若無人という……。

 因みに天姉という呼び名は、俺が小学生へ上がる前に名字呼びが堅苦しいからと言ってヘッドロックされながらの命令を受けて定着してしまったものだ。


 「だいぶ前からいたなら入ってくればよかったのに……。あと切り捨てたって表現は違うからね? な、日隠、さっきのは吟味しただけで悪気はなかったよな」


 ……あれ日隠さん、俺の話をスルーしてまでさっきからメモ帳に何書いてるんですか?


 「ふむふむ……男性相手には、鋭利なものを投げつけてから、狙ってやったわけじゃないからね……と。よし! 軍羽君、やり直しの分、今からやらない?」


 それって俺が命の危険に晒されるんですがあのその……。

 というかどう考えても1度目のツンデレが告白の内容だったろ! 何で2回目を吸収しちゃったの!?

 何か既に手に握ってるし……ってまさかのカッターじゃん! 

 どっから取り出したの! 浅葱先生より殺傷力上がってるよ、それ!


 「ちょっと天姉、何とかしてよ」

 「お前、女子からの熱心な思いは人に頼らずちゃんと自分で受け止めてやるもんだぞ?」

 「何、今だけそんないいこと言ってるの!? あれじゃ思いは思いでも殺意しかないんだけど!」

 「当たって砕けろっていうだろ?」

 「物理的に砕けてたまるか!」


 俺の絶叫も、完全に天姉のやり方が正しいと信じ込んでいる日隠に届くはずもなく……。

 一歩、また一歩とゾンビのようにゆらりゆらり前進する日隠。

 それに合わせて少しずつ後ずさりする俺。


 「千輝~、骨は拾ってやるからなぁ~」

 壁に寄りかかりながら、面白そうに見物する天姉。

 またもや例えなのか、物理的になのか分からない上に縁起の悪いことを笑顔で言わないでほしい。

 

 「止まれって、な? 分かった、十回目のやつ百点あげるから!」

 必死の懇願、あるいは百点をあげるといったことが効いたのか、日隠が悩み始めた。

 やっぱり点数低かったことも含めての今の行動だったのかな? だとしたら今後迂闊に評価できないじゃん。

 とうとうカッターをテーブルの上に置き、完全に足を止める。

 「本当に?」

 「あぁ、嘘じゃない。何て言えばいいか分からないが、十回目のやつはインパクトも強いし、男側に立場を譲らないという意思があって、日隠らしかったぞ」

 褒め言葉を探すことに脳のリソースを全て費やしてただひたすら褒めると、日隠の表情が明るくなってきた。

 「じゃあこれで、また目的達成に一歩近づいたってことよね?」

 「あぁ、おめでとう! この調子でな」


 内心、これいつまで経ってもゴールできないだろとか考えてしまったが、それは自分の胸だけに留めておく。

 そんな俺からの言葉を聞き、普段の大人しめな性格とは別人かのように日隠はぴょんぴょん跳ねて喜んでいた。

 それを一瞥した後、クリップボードに挟んだ紙の最後の一枚をざっと読み流す。

 そこには今回の一件で確かなものとなった、日隠の致命的な欠点についての文を含んだプロフィール。

 

 「思い込みが激しく、とにかく人を疑うことを知らない。中学時代の問題がありながら、未だにそこは変わらない様子。良く言えば純粋……ねぇ」


 見た目に合ってないキャラをやろうとするのも、朱鷺瀬なり天姉の影響があってこそだもんな。

 今後は女王様キャラとヤンデレはやめていただきたいが……。


 


 これは……なかなかに難儀な奴だな……。




 そんなことを考えながら、いまいちキャラが定まっていない日隠にもう一度目を向けた。


読んでいただきありがとうございました。

一話で、これより少し前、なぜ千輝がこんなことに巻き込まれたのかについて書く予定ですのでしばしお待ちを。

また今回名前だけ登場した朱鷺瀬ももう少ししたら出ますので……。


今後もよろしくお願いします!

感想、アドバイス等ありましたらよろしくお願いします。

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