勝利を
「ウィンド・スピード。」
この付加魔法は一つの対象に最大で三つまで魔法効果を重ね掛けすることができる。その分付加させる魔法効果がひとつのときに比べ大量に魔力を消費するが俺には関係ない。
今放ったのは対象を加速させる魔法効果に風の魔法効果を加えたものだ。
対象はもちろん石だ。
「またそれかぁ。芸がないねぇ。打開するために時間稼ぎまで頼んでおいて実行したのがその程度じゃあ言われた通りに時間を稼いで死んでいった兵士も浮かばれないね。」
飛んで行った石は全て剣で弾かれる。予想通りに対処してくれて助かった。
作戦はこれからだ。
対象を加速させる魔法効果に風の魔法効果を加えたのはこのためだ。
残念ながらこの風は茜が放つ風の魔法には到底及ばない。だが目的はそこではない。
弾かれたその瞬間に風の効果が発揮される。不規則な風が起こり砂煙が上がった。
いや砂煙というよりは砂塵だな。予想よりも大きな効果を発揮したようだ。
「目くらましね。小賢しい。この程度でなにが……!?」
十分すぎる。次の攻撃を当てるための牽制を完璧に行うのには!
「変形!」
この攻撃には二本の槍を使った。
当然だが槍は俺の持っているロングソードより長い。その分だけ自由に変形できる。
穂の部分を複雑に枝分かれさせ刃のついた檻のようにして囲む。穂の部分だけでなく持ち手の部分も複雑に枝分かれさせる。牽制というよりは動きを極端に制限させて攻撃を当てにいくためのものだ。
これで相手は囲まれて動きは制限した。
「うわっ、やってくれたなぁ。で、これで僕の動きを抑えて次を確実に当てるつもりだろう?残念だけどやっぱりこの程度じゃあ僕には通じない。」
「まだ次が最後なんて言ってねぇぞ?」
「へぇ、まだあるんだ。」
「変形!」
「で、またそれか。さっきと同じように二段構えになっていてなにか別の仕掛けがあるんだろう?とりあえずここからでておこうかな。」
槍で作った檻はあっさりと破壊された。変形の弱点の一つだろう。
部分的な強度が極端に落ちることで破壊されやすくなる。
動きを制限するようにしていたが完全なものではなかったし今回はそれでいいだろう。
だが檻を破壊するために振るわれた剣は振りきられていてすぐに次には対応できない。
そこを狙う。そしてそれで終わりだ。
「速度がなきゃ当たらないんだよこんなもの。」
目標まで到達し枝別れさせたが躱されてしまう。
だが……。
「おらぁぁぁぁぁぁ!」
「!?」
そのままロングソードを振るう。
そして。
「ッ!」
「……やった!」
掠り傷ではあるが確かにその頬に傷を負わせた。
「掠り傷程度で……!」
「いや、十分だぜ。」
「ッ!?……カハッ。まさか……。」
男は苦しそうに血を吐き始めた。
上手くいったようだ。
「ポイズンソード。名前の通り毒が塗られた剣だ。」
「そんな、……馬鹿な!うっ。毒が塗られていたなら気付くはず……。」
「言っただろう。俺の放つ魔法は特別だってな。実際に刃に毒を塗ったわけじゃなくて毒の魔法効果だ。お前のしている魔法対策は通じなかったみたいだな。」




