打開する
「……なんなんだよ、こいつ。」
「あ、ゴメン。君入れるの忘れてた。11人ね。」
「黙ってたらもう少し長生きできたかもしれないのにね。ほとんど君の存在を忘れてたんだ。そして君はミノタウロスとの戦闘で負傷している。いや、あれは戦闘と呼ぶには……。どっちにせよ君がこの中で一番楽に殺せるわけだから、殺すね?」
「なっ!?」
「逆巻け。我が武具は風。その役はシルフ。吹き荒れろ大地の咆哮。デバイスト・ウィンド!」
「!おっと。」
荒ぶる風の塊が俺の前を通過する。
風が通った半歩後ろには奴がいた。
詠唱もかなり高速化されてたし今のを躱せるなんて相当な反射神経を持っているようだな。
「危なかったぁ。自分で体験するとやっぱり違うなぁ。それより自分はいいの?そのミノタウロスは片手間に相手できるほど弱くはないよ?」
「ヴァァァ!!」
「くっ。」
突進してきたミノタウロスを見事にさっき作った風の剣で捌く
この突進は意外と速くそして重い。それを受け流す、捌くなどをするのにはそれなりの技量が必要とされる。どうやら魔法だけでなくそれを応用した戦いもできるようだ。それを何より必要とする俺はできていないのにな。つくづく自分の無力さを痛感し地面の砂利を握りしめる。
「すごいなぁ!今のを捌けるんだ。はやいとここっち片付けて僕も加わろうかなぁ。」
そういって微笑んだ。すごく不気味な微笑みだ。
「相手に仕掛けさせなければ常に不意を突いてくる攻撃は出せないはずだ。こっちから行くぞ!」
フラグムント兵たちがその言葉と同時に囲んで一斉に斬りかかる。
「うん、考えたね。まぁ殺られる前に殺れなんて当たり前だけどこの状況じゃあ妥当かな。でも残念僕の強みはそこだけじゃないんだよ。」
「ぐぁっ!」
瞬く間に3人が斬られ3人の抜けた穴から包囲を脱出する。
「流石に囲まれるのはきついからね。」
「こんな奴、どうすれば……。」
「僕もねぇ、最初はこんなんじゃなかったんだけど僕の都合上ある程度の自衛ができた方がいいかなって。そしたらいつの間にかこんなになってたんだ。でもガチガチの武闘派には勝てないなぁ。あくまで自衛のために身につけたのもだしね。さて、お喋りは止めだ。」
また微笑んでいる。やはり不気味だ。
どうする?俺はろくに動けない状態だ。
付加魔法でどうにかなるのか?
この動けない状態ならそれでどうにかするしかない。でも、そのためには……。
やってもらうしかない。ただ、その前に。
「加速。」
砂利を無数に正面へと投げる。砂利だと少し軽すぎるかと思ったが十分だろう。牽制としては、だが。
「ッ!?小賢しいなぁ!」
動きは少し止めた。今なら……。
フラグムント兵に向って叫ぶ。
「頼む、時間を稼いで欲しい。俺がこの場覆す魔法を撃つための!」




