馬鹿な行動
ヴヴヴヴと低く唸っている。
見た目は牛だろうか。牛の化け物、ミノタウロスといったところだろうか。
その姿は元の世界の物語で出て来るものと同じでとてもじゃないがこのモンスターが町を襲撃しても荒らさなかったとは思えない。人間以上の知能を持っているなどもっと信用できない。
しばらく睨み合いが続いた。いや、こちらが向こうの出方が読めず動けなかっただけだ。
そしてその沈黙を破り動いたのはミノタウロスだった。
先ほど殺したフラグムン兵の槍を手に取り突進して来た。
これはさすがに俺も茜も回避した。
茜に至っては「モンスターが武器を使うなんてね……。でも、そのくらいなら聞いていたほどの知能でもなさそう」とか言ってるし余裕はありそうだ。……俺の中のミノタウロスは武器、持ってるんだけどな。
「ウィンド!」
体制を整えるなり茜は魔法を放った。
確かあれは風の初級魔法だったか。
案の定、その風はミノタウロスの腕ではたき落とされてしまった。
ミノタウロスが全身に力を入れているのがわかる。槍を構え突撃の姿勢を見せる。
本当に人間以上の知能を持っているのか?同じことしかしていないように見えるが。
「メタモルフォーゼ。」
刀身を盾のように変化させる。表面には刃になっている。受けたあと、すぐに反撃が出来るようにした。
盾のように変化させたロングソードを構える。
突き出された槍の穂先を受け止める。凄い衝撃だ。なんとか穂先を外に流して反撃の機会を作る。が、ミノタウロスはそのまま突進して来て俺は数メートルほど後ろへ飛ばされた。盾は構えたままだった。それなりの速度で刃に当たったのだミノタウロスも無事ではないはずだがほとんど切れていなかった。
「くっ……。」
「相当硬いわね。それと、あんた、馬鹿なの?そんなわけのわからないものであんなのを受け止めきれるわけないじゃない。」
「……いけると思ったんだけどな。」
「無理だったわね。それに、今のダメージ相当でしょ?私に任せなさい。」
ついに茜が戦うのか。いまいち実力がわからないんだよな。俺より強いのは確かだけど。




