新種
その日は町から少し離れたフラグムント兵達の野営地に世話になった。
一晩中兵士達が交代で見張りをしていたが特に何も無かったようで平然と夜が明け朝がきた。
「……朝か。」
とりあえず起き上がってフラグムント兵に軽く挨拶をして顔を洗う。
少し呆けているとフラグムント兵が話しかけてきた。
「えーと、従者の方、茜様が呼んでいます。」
「ああ、わかったすぐに行く。」
言われた場所に行くと茜は岩に座って寝ていた。
付近にフラグムント兵はいない。野営地からはまた少し離れているようだ。
来るのが少し遅かったか?
起こすために近づく。
「……!」
改めて見てみるとまぁ、美人なんだよな……。
それも黙ってたらの話だけど。
トントンッと軽く肩を叩いて起こす。
「ッ!あんた、何考えて!」
「俺はただ起こそうとしただけなんだが……。」
俺に非はないが1発殴られた後茜ついて行き昨日の町へと入った。
「なんでまたここに戻ってきたんだ?フラグムント兵に任せて進めばいいだろ?ここはお前の領土ってわけでもないしさ。」
「うるさいわね!私の勝手でしょ。あんたはおとなしく私の言うことを聞いて大人しく付き従ってればいいのよ。」
フラグムントのトップにもよるが茜を見限ってフラグムントに着くってのもありだな。対談で相手がどんなのか分かるだろしそこで判断だな。
「……今、この気にいっそフラグムントに着こうとか思ったでしょ?勘違いしてるようだから言ってあげるけど最初に私に楯突いてきて負けたのに幹部待遇として私の元に置いてるのは別にあんたの能力を買ってらとかじゃないのよ?ただの私の気まぐれ。なんなら今から路傍に迷わせてもいいのよ。私の元を去っても行く場所はないわ。」
「すいませんでしたね。」
「……感情がこもってないようだけど。」
「ここにいましたか!探しましたよ。」
フラグムント兵か。とても焦っているようだ。
「何か分かったの?」
「はい、まだ憶測なのですが町を見て分かる通りモンスターの襲撃があったにしては全く荒らされていません。いつもならただ闇雲にその力を振るうわけですから荒れないことは無いんですが今回は荒れていない。我々はここにモンスターの襲撃があったと聞いて派遣されました。それ以外というわけでは無いはずです。これらのことを踏まえるとこの町を襲撃したモンスターは知能を持っていると言うことになります。」
「……知能を、持っているか。」
「それはどの程度のものだと想定しているの?」
「恐らく最低でも人間並みの知能は持っているかと。」
「……それは厄介ね。」
厄介とかそういうレベルじゃ無いだろ。
ただでさえ人間離れしすぎているモンスターだ。
種類にもよるだろうが知能は低いのが分かった。
今まで戦ったのもトカゲとヴェアウルフくらいだけど。
「とにかく一度我々の元へと戻って下さい。リン様との対談を控えている茜様に何かあったら我々は……。今夜にはこの知らせを受けてダンケさんも到着する予定ですので、討伐は明日。」
「了解したわ。戻るわよ。」
「ダンケさんも忙しいな。」
「では、行きましょう。」
その直後先導するフラグムント兵が血飛沫を上げて倒れる。
「「!?」」
「……まさか。」
「そのまさかね。」
俺たちの前に現れたのは例のモンスターだった。




