成長の第一歩
「何だ!?今の?」
さっきの轟音ただ事じゃない。
どうする?師匠を呼びに行くか?
でもそれだと俺が想像している通りだと手遅れになってしまう。
俺が行くか?
だが、付加魔法はまだ完璧じゃないし……。
「おい、少年この集落にモンスターが侵入した悪いがこの集落のはずれにオストロミス・ガーシスマンという高名な魔導師が住んでいる呼んできてくれないか?その間この集落の男連中で時間を稼ぐなるべく早く読んできてくれ!」
話しかけてきたのはこの集落の棟梁の息子だった。
そうか、時間を稼ぐだけなら俺でもなんとかなる。
それに、今の実力がどれだけなのか試したい!……まだ修業初めて1日だけど。
「あの、俺その人の弟子なんです!だから時間稼ぎなら俺がやります、それにもしかしたら倒せるかもしれません。」
「本当なのか?その話弟子がいるなんて聞いてないぞ?」
そらそうだ弟子になってまだ1日しか経ってないからな。
「だが、本当なら助かる期待しているぞ、だが無理はするなよ?」
「ああ、任せてくれ!」
「では、呼んでくる、モンスターはここから右に真っ直ぐ行けばいる頼んだぞ!」
そう言って棟梁の息子は走り去って行った……ていうかあの人走るのおそっ!
こりゃあ急いで向かわないと。
モンスターが暴れているという方に向って走り始めた瞬間目の前で爆発が起きた。
それと同時に狼に似たモンスターが現れる。
今思えばモンスターは軽くトラウマだ異世界に来て最初の危機だったからな。
だが、似ているのは顔の一部だけでよくよく見れば狼とは異なる。
その尻尾は無数の針のようだし、大きな二本の牙がむき出しになっている。
それに、酷く鋭利な爪攻撃に特化したような感じだ。
「くそっ、もうこんな所まできているのか!?実用レベルじゃないがどうこう言っていられない。」
近くにあった小石を拾い叫びながら投げつける。
普通ならこんな小石牽制にもならない……だが付加魔法なら。
「ファイアーボール。」
ありったけの魔力をこめてイメージしたのは火。
投げ出された小石は炎をまとってモンスターに飛んでいく。
だが、その炎をまとった小石はモンスターに当たる直前で叩き落とされた。
叩き落としたモンスターにも炎は触れていたはずだがせいぜい毛が少し焦げただけ。
分ってはいたがやはり効果が無い。
「ならこれならどうだ!」
モンスターから少し距離をとり今度は複数の小石を拾って投げる。
火とか水とか風や雷みたいないわゆる王道は無理なら。
邪道ならあるいは……。
「加速」
今度は小石を加速させた、大量の魔力も込めたし見た感じ時速500k/mくらいは出てそうだな……目で見えてる時点でそこまで出てないか。
そんな不安とは裏腹に魔法効果で加速された小石がモンスターに直撃する。
どうなんだ?少しだけのけぞったし牽制くらいにはなるのか?
「これならいける!」
さっきよりも多くの小石を拾って投げる。
もっともっとだ、もっと多くの魔力を込める。
「加速」
直感的にさっきよりも速い。
だが、これでは勝てない。
でも、これを当て続ければかなりの時間を稼げるはずだ。
放たれた小石はモンスターに直撃すると思われたが、その小石は空をきってどこかに飛んで行った。
「嘘……だろ?躱された?」
いつのまにかモンスターは先程の位置から右に大きく離れている。
あの小石はさっきのよりも速いはずだ最初のが躱せなかったのにどうして!?
思考に入る間もなくモンスターが尻尾を大きく振るうそれと同時に針が飛んでくる。
「その尻尾の針とばせんのかよ。」
すんでのところで回避したところに鋭利な爪が襲ってくる速い。
大きく身を捻りなんとか躱せたが猛攻はまだ終わっていない。
回避するのがやっとで付加魔法を使うひまがない。
……いくら回避に専念しているからってこんな攻撃をギリギリではあるがよく避けられているな分からないけど師匠が言っていたステータスの影響なのか?
その一瞬の思考が仇となり少し回避行動が遅れてしまう。
なんとか直撃だけは回避したが背中に掠ってしまった。
だが、そのせいで次の回避行動も遅れてしまい次々と傷が増えていく。
……もう限界だいよいよ追い詰められ周りには折れた木などが散乱していて逃げ場がない。
「師匠はまだなのか?これじゃあこのモンスターに殺される。」
時間稼ぎを初めてからかなりの時間が経っている。
これなら集落の人たちも逃げられているはずだ、もう俺もにげてもいいんじゃね?
……といっても、もう下手に動き回れないけどな周りの倒れている木が邪魔すぎる。
ん?まてよ……これならいける!
少し思考を巡らせた後全身の力を振り絞ってなんとか立ち上がる。
「さあ、こいよ狼この状況を巻き返してやるからよぉ。」
離れた位置にいたモンスターは徐々に距離を詰めてくる。
あと少しだもう少し近寄ってこい!
そこだ!
「加速」
あらかじめ拾っておいた小石を投げる。
しかし、これは難なく躱されてしまう。
「そんなのは予想の範疇だっての、こんな所じゃあ動ける範囲も決まってくる。ようはそこに次の攻撃を仕掛ければ当たる!」
痛む腕を押してちょうどいい感じに先が尖っている木を投げる。
「今度のは小石と威力が違うぜ躱した方がいいかもなぁ!ま、躱せたらの話だけどな 加速」
動ける範囲のないモンスターの首元に深々と木が突き刺さる。
モンスターは鮮血をまき散らし奇声を発しながらのた打ち回る。
「ははっ、ざまぁみやがれ。」
なんとか倒すことができたな、報告しに行かないと。
そこにいきなり強い衝撃がきて吹き飛ばされてしまう。
何だってんだ!?あのモンスターは殺したはず?まさか二体目!?
なんとか身体をおこしてみるとまだモンスターは生きていた。
これ以上は無理だ。
諦めかけたそのとき目の前のモンスターが突然炎に包まれた。
こんなことが出来るのは師匠しかいない。
「おーう、生きてるか賢治?すまんな来るのが遅れてほかのところのモンスターを処理していたもんでな。」
師匠は間に合ったようだ薄れゆく意識の中師匠の顔を確認して意識は途絶えた。