出陣
「作戦の立て直しか?」
とりあえず黙っていては話は進まないのでなんとか進めようと話を切り出す。
「いえ、それじゃ間に合わないわ。境界からここまでそんなに距離がないの。早く待ったをかけないと……。」
「でも、この千人程度じゃまともに戦えるとは思えないよ。」
「なら奇襲ってのはどうだ?奇襲なら兵力が劣っていても勝てるかもしれないだろ?」
「……あんた、今フラグムントの軍勢がいるあたりを往復してきたのよね?それであんたはあの開けた土地で奇襲が成功するとでも思ってるわけ?」
「いや、夜にでも仕掛ければいけるかなって。」
「こっちはなるべく早く待ったをかけないといけなのよ?夜まで待っていられるわけないでしょ!」
「……非常に今更じゃがまだ講和の可能性はまだあるかもしれぞ?先程はああはいったがな。」
「「「「「「!?」」」」」」
「……詳しく聞かせてもらえるかしら?」
「確証は得られておらんが今攻めてきておるフラグムントの軍勢を指揮しておるのがダンケかもしれん。もしダンケが指揮をしておれば講和は成るかもしれん。」
「今から確かめに行かせる時間は無いわよ?」
「現地に行って確かめるしかあるまい。」
「つまり当初の予定通りに事を進めるということね?でも、そこにそのダンケという男がいなかった場合はどうするつもり?」
「……講和は無理じゃろう。じゃが、その場合は儂が責任をとる。全軍の指揮を儂にあたけてくれぬか?」
「茜、迷ってる時間は無いよ?」
全員の視線が茜に集まる。決断を待っている。
恐らく全員がどんな決断であれ従うつもりだ。俺もそうだ。
「分かったわ!リオット、あなたの提案を採用するわ。すぐに出るわよ!シアンとシオンはここに残って備えなさい!他は行くわよ!」
「「「「「「仰せのままに!」」」」」」
「いよいよだな。大丈夫か?アイラ。」
「はい、実戦は初めてだけど大丈夫。色々……叩き込まれたから……。」
色々叩き込まれたって何!?何をされたんだ!?
「いっ色々って何?」
「……血に慣れさせるために斬られ続けたり……。」
何!?何の拷問それ?
「あとは内臓とかを……。」
「あー、聞いといてあれだが、これ以上言わなくていいぞ?」
「……ですよね。」
なんて恐ろしいことをやってんだ!?俺ならショック死するぞ。
「賢治、アイラ、集まって。」
「あっ、はい!」
「おう。」
言われた場所は壇上だった。前には茜が立っていて、その後ろに幹部たちが控えている。壇の前にはおよそ千人の兵士たちがひしめいている。
「知ってはいると思うけどこの『リザルト』領内に隣のフラグムントが攻めてきたわ!私たちはそれを迎え撃つ!既に一部が占領されているけれど押し返すまでよ!出陣するわ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
下僕といっても激励には普通に乗るんだな。
士気も上がっている。
いつ用意されたのか馬が繋がれておりそれぞれが乗って飛び出て行く。
どうしよう、俺馬とかならないんだけど……。
「どうした、もたもたしている暇はないぞ?」
「……それが俺馬に乗れないんですよね。」
「……仕方ないのう。儂のに乗れ!この馬なら二人くらい問題ないわい。」
「……すいません。」
リオットさんの馬に乗せてもらい俺も街を出る。少し出遅れてしまったが直ぐに本体に追いついた。