リザルトが動く
黒煙が天高く立ち昇っている。
燃えてるのはリザルト領とフラグムント領とを分けるフラグムントが建てた関所だ。
なんだかんだで迷った挙句燃やした。今も中にいたフラグムント兵たちの断末魔の叫び声が聞こえている。やはり焼き殺すのはえぐいな。心にくるものがある。だが、いくら強いとはいえカイルが1人でフラグムント軍を相手に戦って時間を稼いでくれているのだ、一刻も早く茜の元に戻りこの状況を伝えなければならない。それならここで悩んで止まっている暇はない。そして燃やした。
建物はほとんどが木造であったからか割と早く焼け落ちた。
「これでリザルトに入れるな、急がねぇと。」
そのころのフラグムント陣営ではカイル一人に手間取っているようだった。
「……今の間に、何人斬られた?」
「恐らく二中隊程度の人数は斬られたかと思われます。」
「これ以上、カイル・ヴァーチス1人に人数を費やし、犠牲を増やした挙句にその時間までをも無駄にするわけにもいくまい。よって、我々は目の前のカイル・ヴァーチスを無視し、リザルト領内へと進軍する。だが、カイルを放っておくことは出来ない。一部を残すことにする。この場に残りカイル・ヴァーチスの足止めを担う者たちは全方位から囲み一定の距離を保ちなるべく被害を抑え、足止めを。」
「御意!すぐに全軍に伝えます。」
ダンケの指示はすぐにフラグムント全軍に伝わりやがて指示された通りになった。
「なんだ?急に敵に変化が。」
たくさんの死体の中でカイルは急激な敵の変化に気づいた。
大量の兵たちが突然大移動を始め、今までただ自分を囲っていたものが明らかに意図ある囲み方に変わり、ある程度距離を取られている。
……これは何かあるな。
「ハァハァッ、やっと着いた。ようやく『リザルト』だ。屋敷までもうすこしだな。」
リザルト領とフラグムント領を分けるフラグムントの関所を燃やし、強引に突破した賢治はリザルトの街に到着していた。
「あれ?賢治、帰ってきたんだね?で、随分急いで帰ってきたようだけど……。」
「リーネさんか。今すぐに茜に伝えてくれませんか?」
「ただ事じゃなさそうだね。何が起きたの?」
「……。フラグムントが攻めてきました!今、カイルが領内手前で引き受けてくれていますけど……。」
「フラグムントが攻めてきてるって、じゃあ何!?賢治はカイルに届けられなかったの?いや、今はそんなことはどうでもいいね。急いで茜に伝えないと。」




