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お嬢様の仰せのままに  作者: ワンサイドマウンテン
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開戦の引き金

コツコツと廊下に靴が床を踏む音が響く。そしてその音がぴたりとやんで扉が開く音へと変わった。一歩二歩と再び靴が床を踏みそこでその音は止まる。



「来ましたか。すでに全員集まっております。」


「うむ。では、聞いてくれ。先程この『フラグムント』領内に『リザルト』の西園寺茜の使者という者が二名入った。そのうち一人は元王国騎士団14代団長カイル・ヴァ―チスを名乗っているそうだ。疑問はあるがリン様はこれを西園寺茜からの宣戦布告と受け取られた。リン様がそう思われた以上そうそうこのことは変わらん。……この意味がわかるな?」


「つまり、その二人を殺せと?」


「そういうことだ。」


「しかし、これがもし宣戦布告の使者でなかったときは……。」


「……間違いなく戦争だろうな。だが、どちらにせよ戦争は起こる。その時にカイル・ヴァ―チスを殺しておけばこちらが有利な状態で開戦することができる。向こうの士気もかなり下がるだろうしな。」


「ですが、私はこれが宣戦布告の使者だとは思えないのですが……。確かにお互いにあまり関係はよくないですが一触即発というわけではありませんし戦争を仕掛ける理由もありませんよ?」


「儂もそう思う。だがあの方が、リン様がそう決断したのなら仕方がない。いつも通りやれることをやるだけだ。」


「……今回ははずれだったということですか。」


「ああ、意味の無い開戦を防ぐことが出来ないなら早く終わらせるまでだ。儂が尽力し、早期講和に持っていく!」


「頼みましたよ、ダンケさん。」





『フラグムント』領北東では二人『フラグムント』の街へと向かっていた。



「なぁカイル、『フラグムント』の街まではどのくらいかかるんだ?」


「そうだな普通に進めば1ヵ月程度だが今回は急ぎの内容でな少々ペースを速めないといけない。俺一人なら2週間だが賢治もいるし2週間と3日といったところだろう。」


「そんな中で俺の修業みてくれんのか?」


「それはさすがに無理があるな……。要件が終わった帰りにじっくり見て……。」


「どうした?」


「伏せろ!」



突然の気迫のこもった顔と声に戸惑いつつも咄嗟に言われた通り伏せた。

頭上では鉄と鉄がぶつかり合う音がしていつの間にかカイルに担がれさっきいた場所から離れていた。



「流石に対処されるか。まぁ、こんなんで殺せるとは思ってなかったがな。」


「今ので殺せなかった以上ここからは必ず犠牲が出る。いかに犠牲を少なくしてこいつらを殺せるかが重要だ。いくぞ!」



突然の攻撃の後ゾロゾロと武装した集団が出てきて俺たちを殺す?なぜだ?お互いに仲は良くはないが何か用があってきた者を殺しにかかるなんて……。もしくは相手は『フラグムント』じゃないのか?



「何を止まっている!」



カイルの声と剣と剣がぶつかる音で今自分が置かれている本当の状況に気付いた。

今は相手が誰なのか襲ってきた理由はなんなのかではない。戦いが始まっているのだ。そこですることは簡単、戦うだけだ。でなければ自分が死ぬ。

ロングソードを抜き構える。付加魔法はいつでも発動できる状態に。

体重をかけいつでも踏み出せる。向ってくる相手は二人得物は槍と剣か。まずは槍を持っている方かだ。

剣士が槍使いよりも前に出た瞬間。



変形(メタモルフォーゼ)!」


「な!?」



俺の持っているロングソードは槍使いの胴体まで伸び、その刀身の一部が枝分かれをし、鎌のようになる。あとは身体を捻りロングソードを引くだけ。

何が起こっているのか分からないままの槍使いは銅を真っ二つにされドシャリと崩れ落ちた。

刀身は元に戻ったが迫っていた剣士に攻撃は出来ない。高く振り上げられた剣から繰り出される一撃を何とかロングソードで受けるが体制が崩れその場に転んでしまう。

当然相手がこのチャンスを逃すわけがなく再び剣を振り下ろす。



加速(スピードキッカー)!」



瞬時に転がっていた石を付加魔法で加速させ投げつける。

その石は相手の右目に直撃し、体制を崩した。俺はこの瞬間を見逃さず迷わずロングソードを突き出した。声にならない悲鳴をあげて倒れた。その死体からロングソードを抜いて構えるとカイルが他の襲撃者を全滅させていた。

戦闘が終わり俺も膝から崩れた。



「……初めて人を殺した……。」


「そうだ賢治、お前は人を殺した。だが、殺さなかったら賢治は今ここにはいない。相手もそれは同じだった。生き残ったのが賢治だったというだけだ。そういうのは人として正常ではあるが次に同じことが起きた時それを気にしていては今度は賢治が死ぬぞ?」


「……ああ。」


「しかし、あれはどこの差し金だったんだ?オストロミスか?まさか『フラグムント』というわけではないだろうし。もしそうなら戦争ものだな。」


「進むのか?」


「……そうだな、このまま帰るわけにもいかないし進もう。それに賢治、そのがっつり浴びている返り血をどうにかしないとな。」



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