帰ってきて
リザルトを出発してから2日が過ぎた。この2日間は長く感じた。当初与えられていた仕事は失敗し、2日で帰ることになってしまったのだ。
だが、収穫もあった。仕事の失敗とそのことについてこれから報告に行くわけだ。
「賢治ではないか!仕事に行っていたのではないのか?シアンにシオンも。それにその美しいお嬢さんは誰なんだ?」
「カイル!いや、それが仕事は……。」
「失敗だ。」
「ああ、初めての仕事だったのにな……。」
「そうか……。そんなこともある、気にすることはない。」
リザルトに入ってすぐに顔見知りであるカイル・ヴァーチスに会った。話しかけてくるまで気づかなかったな。
「……お嬢様がどう出るかだけどね。」
「まぁ、仕事は失敗したが収穫もあるし、そんなに心配する必要はないんじゃないか?」
確かにシアンのいうとおり収穫はある。収穫はあるが茜はどうだろうな……。不安だ。
「これから報告だろ?悪いことにならないよう祈ってるよ。それじゃあまた後でな。」
「ああ、また後で。」
「ほら、さっさと行くぞ賢治!シオン!」
「はい、行きましょう。アイラさんも。」
「は、はい。」
そういえば気に留めていた割には最後までアイラのこと聞いてこなかったなカイル。
アイラというのは、シオンを助けてもらった緑髮の少女のことだ。
回復魔法の使い手は希少らしいし、あの時、何故あの現場にいたのか聞くことはたくさんある。それでリザルトまで同行してもらったのだ。
「茜ぇーシアンたちが帰ってきたみたいだよ?報告があるってさー。」
「もう?随分と早くない?何やってんだか。どうせ賢治が足引っ張ったとかでしょうけど。」
「じゃあ呼んでくるねー。」
扉が閉じる音がしてリーネはシアンたちを呼びに行った。
西園寺茜以外誰もいなくなった広い部屋でため息をついた。
こんなので私たちはオストロミスに勝てるのかしら?向こうの情報も全然足りてない。情報がないから相手の戦力もろくにわからないで戦っている。こんな絶望的状況で勝負を挑む馬鹿はいない。この世界の殆どがオストロミスの裏の顔を知らない。いや、知られていないから裏の顔というのか。そんな中で私は気づいてしまった。
あの時の私は少し思い上がっていたのだろう。
元いた世界で死んで気がついたら女神と名乗る人物に促されるままにこの世界へとやってきた。この世界では、私に備わっていた力で難なく適応できた。いや、簡単になんでもでき過ぎた。だから、オストロミスの裏の顔を知ったときこれも容易にこなせてしまうと思ってしまった。
だが、やがてすぐにそれは間違っていたことに気づいた。いや、間違っていたというのは少し違うか。全くの情報不足で強大な敵に挑むというのは愚かで馬鹿なことかもしれない。けど、それでも挑んだことは間違っていないと私は思う。例え今よりも酷い状況でも挑まなければ希望はゼロのまま終わる。だけど、どんな状況であっても抗い続ける限り希望はある。
例えこの世界の殆どの人が影で世界が救われたことに気づかなくてもいい。オストロミスの野望は打ち砕かなければならない。むしろ気づいていないのならばそれでいい。そのことを知れば人々は不安や恐怖に襲われるだろう。だが気づかぬうちに彼の野望を阻止すれば人々は不安や恐怖を抱くことなくいつも通りの平穏な日々を過ごせるのだから。
そんな中で石野賢治の存在は大きい。彼も死んでこの世界へきたのだろう。元いた世界から知り合いがきた。それだけでそれまで自分一人だった世界が変わる。
リーネが部屋を出てから彼らを連れてくるまでそれほど時間はかからなかった。
扉の開く音がしてリーネ、シアンシオン、賢治……それから緑髮の少女の順に入ってくる。
「……誰よその女?」
「帰っていきなり浮気された妻みたいなセリフかよ!」
「そらそうだろ?お嬢様からしたら本当に知らない女が部屋に入ってきてんだから。」
「そりゃあそうか。そうなるよな、普通。」
「あの、すいません。なんか悪いことしちゃったみたいで……。」
「いえ、お気になさらず。アイラさんは何も悪くないですから。」
「まぁいいわ。早く報告しなさい。その少女も何かあったから連れてきたんでしょう?」
こっちでゴタゴタやってるうちにしびれを切らした茜が報告を催促した。まぁゴタゴタやってなくても早く報告しないといけないわけだが。




