ミーハ・ペテンニクス
名乗りを上げてミーハはナイフを構えて一気に距離を詰める。
その狙いはシオンだ。
「ファイアウォール。」
ミーハの動きに素早く反応したシオンが魔法を唱える。シオンとシアンの周りを炎の壁が囲む。
それをミーハは炎の壁に当たるすんでのところで飛び上がり壁を回避する。そして死角である真上から二人に迫る。
「それは失策じゃんヨ?自ら動ける範囲を狭めた。それに俺を殺すだけならお嬢サンを壁の外に出して相打ちでも狙うべきだったじゃん?」
「動ける範囲が狭くなったのはお前もだろ?やれシオン!」
「我が武具は寒さにて凍てつく水…フロストスピア!」
ミーハに向かって一直線に氷の槍が伸びていく空中なら身動きができないうえに迫る氷の槍の速度も速い。これならいけるはずだ。やはりあの兄弟は凄い。ミーハ・ペテンニクス、かませじゃないのか?
「甘いじゃんヨ?そんな浅知恵で俺が殺せると思ったら大間違いじゃんヨ!」
その直後に氷の槍はミーハの身体を貫いた。……はずだった。その場にあったはずのミーハの身体は消えて僅かにずれた位置に彼はいる。
「どういう……こと?」
「シオン前だ!」
「遅いじゃん!」
周りを囲っていた炎の壁が消えてようやく三人の姿がはっきりと見える。
シオンは左手に傷を負っていた。
「ヒール。」
「おいおいおいおいおい。お前何種類魔法使えるんダ?」
「ヒールは水の魔法に属しますよ?それにさっきのはどういう種が?」
「わざわざ自分の手打ちを明かすなんて三下のすることじゃんヨ?教えるわけねぇジャン。」
「俺のことも忘れんなよ?」
ミーハに強烈なシアンの一撃が見舞われる。しかし、その攻撃も直撃した瞬間にミーハの身体は消える。
そしてずれた場所に彼は現れる。
「大したことねぇじゃん。さっと始末して賢治クンを連れてくじゃん。」