初日
「おらぁぁ!」
シアンの怒号が響く。
案の定山に入ってから数分後俺たちはヴェアウルフの群れに襲われた。
それを主にシアンが燃え盛る拳で殴り殺しているのだ。
どうやら彼女の戦闘スタイルは体術(主に拳)による物理攻撃のようだ。
ちなみに彼女は魔法が使えない。彼女の繰り出す拳が燃えているのは俺が付加魔法で彼女が手に付けているグローブに炎を付加したためだ。
一方、弟のシオンはというと超野生的な戦い方をする姉のシアンと違いロングソードと魔法を器用に使い常に全体を見て戦っている感じがある。なので今回の彼はシアンの撃ち漏らしを迅速に処理している。
みるみるヴェアウルフたちが減っていく。今回は俺の出番はなさそうだ。……いや訂正なさそうじゃなくてない。俺たちを襲ってきたヴェアウルフたちはあっという間に全滅した。
「片ずいたぜ。この程度なら何回襲ってこようが問題ないな!」
「姉さんそれは困るよ全然進めなくなるから……。」
「そうか?しかし賢治、お前便利だな!付加魔法なんて今まで見たことなかったけど目の当たりにしてみると素晴らしいものじゃないか!シオンも付加魔法覚えたらどうだ?」
「残念だけど僕には無理だよ。賢治さんみたいなのをやったらすぐに魔力が無くなっちゃうから。付加魔法は使用者の魔力次第でその効果が変わる。姉さんの打撃が凄いのもあるけど付加魔法によるあの炎の威力はそうそう出せるようなものじゃない……それを出せる賢治さんの魔力は桁はずれだよ。」
「まあな。まだまだ魔力は残ってるぞ?」
「意外と凄いんだな賢治は。戦闘は素人だけど。」
「それは、まぁ……な?」
「そろそろ日が落ちますね。今日はここで休みましょう。
シオンの言う通りかなり日は落ちている。既に峠を越えて下っているが夜の行動は危険だその判断は正しいだろう。
「休んでいる間にヴェアウルフに襲われるだろ?どうするつもりだ?」
「そこはですね、僕たちの周りに木を置いてそれに賢治さんの付加魔法で火をつけてもらえばヴェアウルフくらいなら避けられます。問題は……賢治さん、どのくらいもちます?」
「余裕で朝までいけるぞ!」
「流石にそれは……無理だと……。」
「そこまでいくとスキルじゃね?魔力無限とか?」
なんでわかるんだよ!?いや、適当に言っているだけか。たまに核心を突いてくるタイプかこいつ?
「人のステータスを勝手に詮索するのはよくないよ姉さん。」
「ん?ああ、悪かったよ賢治。」
「いいよ別に。ていうか姉弟でもお互いのステータスを知らないのか?」
「ああ、知らないぜ。」
「かなり抽象的には知っている部分もありますよ。少なくとも僕は姉さんの補助が多いので知っている方がいいので。」
「じゃあ準備しようぜ?」
「よし!こんな感じか。賢治頼むぜ。」
「任せろ。ファイア!」
周りに置かれている木に炎があがる。
が、実際に木が燃えているわけではない。普通の魔法なら燃えるが魔法効果を付加しているのでその炎は物理的ダメージを与えることは出来るが木には影響はない。
今日はここで休み明日には山を越えられるだろう。