決着
かなり派手に戦って建物もボロボロになって来てるが大丈夫なのだろうか?茜の方も随分派手にやっているが自分の所有物なので問題は無のだろう。だが、今しがた大部屋の半分の原型を無くした俺はこの後大丈夫なのだろうか?これ、勝っても負けても悪い方にしか転ばない気がするんだが……。
今はそれとは別にキレいるようだが。
「ウィンドォォ!!」
突如、物凄い殺気と共に風の刃が放たれる。
硬化……で受けたら死ぬ!
「うおわぁぁぁぁぁ!」
奇声を上げですんでのところで回避する。
今までのとは比べものにならないほどの範囲の床が抉られている。
本当に風の初級魔法なのか!?
今までのもそうだがこれは明らかに威力が違う。
師匠に匹敵するぞ。
「あんたみたいなのがこの私に楯ついた上に軽い傷を負わせるなんていい度胸してんじゃない。
うっかり手足の一本や二本持ってっちゃう前に諦めて屈しなさいよ!昔みたいにさぁ!!」
これは洒落になってない。
そもそも先に攻撃してきたのはそっちだろ!?
なんという理不尽、ていうかこんなになってるのにこの建物の連中はなんで平然としてるんだ?
「罠」
猛攻からなんとか逃れながら仕掛けておいたものだ。ズガガっという音が響き、床から勢いよく槍が飛び出す。
が、それは風の刃によって粉々に砕かれる。
「あんたのすることが二度も私に通じると思ってんの?」
「嘘だろ?これじゃ」
もう、打つ手がない。
そして再び壁際に追い込まれて、なす術もなく敗北を待つだけどなった。
今、茜はキレているのでこの敗北は勝負が始まった時とは違い命に保証は無い。その証拠にさっきから風の刃が軽く傷つけて戦意喪失でなく、殺しに来ている。
「これで、詰みね。覚悟はいい?」
「待て待て、話せば分かる!俺を力ずくで屈服させるために始まった勝負だろ?それが今、完全に殺しにきてんじゃねぇか!!」
「大丈夫よ、殺すつもりはないわ。それに、たとえ腕や足の一本が無くなっても死なない限りはどうとでもできるから……多分。」
「そんなことされたらショック死するよ俺!?
後最後にボソッと小声で多分って聞こえた気がするんだけど!?」
「細かい事は気にすんなよ。」
そんな抵抗も虚しく茜は頭上で風の刃を軽く動かして狙いを定めている。
これはもうダメだな。まさか異世界に来てまで茜に振り回されるなんてな……そして殺されかけている。否、これから殺される。
……地獄行きは嫌だな。
このまま死んだら異世界に来てから一年以内に死ぬことになるので女神に言われた通り地獄へ送られる。あの女神なら脅しとかじゃなくてマジでやるだろう。
「気を沈めて下さい。そこまでにいたしましょうお嬢様。」
立派な扉があった場所からカイルが現れすんでのところで止めに入る。
その立派な扉は既に戦闘によって無くなっている。
カイルにはたくさん助けられている。まさに救世主なのだが不名誉な件でボロボロでなければ数倍はカッコよかっただろう。
「あたしもそれくらいにしといた方がいいと思うよー茜ぇー。」
こっちはいつ現れたのか赤髪短髪のメイド、リーネが立っていた。
「……ごめん、リーネ目的失うところだったわ。」
そう言って風の刃を引っ込めた。
とりあえず殺されはしないようだ。助かった……助かったのか?
だが、負けた。つまり俺は下僕にされるだろう。
蘇る幼き日々のトラウマ。
「賢治、お嬢様の下僕になるのは最初から免れることは出来ないが、俺とリーネの方でなんとかして幹部クラスにしてみせる。安心してくれ。」
「なんか事情がありそうだしなー。」
「これから下僕ルート確定だから複雑な心境なんだが、ありがとう。」
「私の下僕になる覚悟は出来た?」
「もうなんでもいいよ。」
「そう、それは良かった。それじゃ、下僕になってもらうとするわ。」
誤字脱字などがあれば教えて頂けると幸いです。
自分では中々気付かないんですよね(笑)
それ以外の感想もお待ちしております。