西園寺茜
扉が開き8年ぶり(多分)に西園寺茜と顔を合わせた。
8年ぶりの幼馴染はムカつくことに世間一般的には美人……いや、美少女になっていた。
長い黒髪をサイドテール、綺麗なブラウンの瞳、凛とした鼻すじ、白い肌。
だが、俺はコイツの本性を知っているので別にどうということもないが。
そんな感情に浸っているまでもなく俺のすぐ横を何かがかなりのスピードで通り過ぎた。
その直後、鈍い音と共に俺の、斜め半歩後ろにいたカイルが悲鳴を上げた。
その顔面にはなんだコレ?よくわからないが鉄球に近い物が直撃していた。
当然ながら数秒後には鼻血を垂らして倒れる。
カイル無事なのかこれ?
「遅いのよ!ホンット使えない。」
望まない再開を果たして、最初の行動と発言がこれである。
「……で、あんたは8年ぶりに再開した幼馴染に挨拶もしないわけ?」
「ひっ久しぶり。」
「まぁいいわ。」
やっぱり相変わらずか。願わくば変わっていて欲しかった中身さえ良ければルックスは最強クラスだし。
「ところで、カイル大丈夫なのかアレ?」
茜への評価はそこそこに部屋に入るなり顔面に鈍器(?)をぶつけられて沈黙しているカイルを指す。
「はぁ?大丈夫に決まってんでしょ。倒れる前のセリフが「お嬢様の手で死ねるなら本望……ていうか最高。」よ?そんな変態なんてほっときゃいいのよ!てか、目障りだから片付けてリーネ。」
ひでぇな、昔より悪化してんじゃん。なんか可哀想だな、カイル。
でも、言われてみれば喜んでいたようにも見える。やっぱり大丈夫そうだわ。
「わーかりましたー。すいませんねー、お客さん見苦しいもん見せちゃってー。」
現れたのはリーネと呼ばれる短い赤髪の女性メイド服を着ている。
強烈な年上属性を放っている美人さんだ。
それに、茜の横に立つとなんか茜が可哀想だ。何がとはあえて言わないが。
「おい、今何を思ったのか正直に言ってみろ。」
しまった顔にでていたか!?
「いやーリーネさんてすごい美人だなーと。」
「おい、正直に言えっていったよな?」
「すいません、リーネさんが隣に立つとなんか茜が可哀想だなーって思いました。」
「何が?」
「いや、まあその、」
必死で取り繕おうと言葉を探すが太ももにローキックが飛んできて1メートルほど飛ばされた。
「何か私にいうことは?」
「すいませんでした。」
「まったく、羨ましいぞ賢治!」
復活したカイルがむこうで喚いている。
しかも、大真面目な顔で、だ。
いいやつではあるがコレに限り黙っていてもらいたい。
「リーネ。」
「はいはいー。」
リーネはカイルに近づき足払いを掛けて派手にこかす。そのまま襟首を掴み引こずってカイルを部屋の外へと連れて行く。
「リーネお前もか!嬉しいぞこうも立て続けに美女になぶられるとは!遠慮はいらない!」
「続きは医者にでも聞いてもらって下さ〜い。もう手遅れでしょうけどー。」
そんな二人のやりとりを見ながらなんとも言えない感情を抱く。
それを打ち砕いたのは茜の発言だった。
「あの変態は!高い戦闘能力がなかったら速攻で処断してるってのに。」
「それよりも俺を呼んだのはそんなことのためじゃないんだろ?てか、なんで俺がこの世界にいることを知ったんだ?」
「そうね、伝えることがあったの。それとあんたを見つけたのは偶然よ。」
「伝えたいこと?」
「単刀直入に言うわ。あんたの師匠オストロミス・ガーシスマンは危険人物よ。あんたを弟子にしたのも利用するため。と言うわけであんなやつの弟子をやめて私の下僕になりなさい!」
師匠が危険人物?てか、下僕だと!?
頭がついていかないんだが。
彼女から発せらたあまりに突飛な言葉は俺の脳をショートさせるのには十分だった。