Chapter9『シオン・エルザス』
この物語には、恋敵もいなければ障害物もありません。
ただ、登場人物たちひとりひとりのそれまでの人生だけが、障害です。
この章は……互いに苦しんできたひとが、お互いの存在に慰めを見いだす……そんな章でしょうか。
Chapter9『シオン・エルザス』
公爵が中庭で倒れて、一日が過ぎた。
城は表向き、平穏を保っている。
みなが常の仕事をし、常のように振る舞っている。
それは、領宰ライラの手腕によるところが大きい。
むろん、ライラは公爵の倒れた理由を知っている。
公爵の寿命があと何年残っているのかは分からないが、公爵の症状は悪くなりこそすれ、決して回復はしない。
どんどん、意識を失う間隔が狭まり、意識を失っている時間が長くなり、隠していても、いずれは公になる。
いままで、表沙汰にならなかった方が不思議なくらいだった。
それゆえライラは敢えて公爵が倒れたことを秘匿せず、その夜のうちに公表したうえで、城の者には平静を保つよう、厳命した。
ただし、倒れた原因については医師による診断を待つ、として秘匿。
あわせて、側近の者を通じて継嗣内定の噂を流させた。
これで公爵の容態がどうであれ、継嗣が決まっていれば、領土を護る祈りが絶えることはない……みな、そう思うはずだ。
この時点で継嗣内定を公式発表としなかったのは、リナに王立魔法院の認可がおりない、という万が一のことを考えて、である。
むろん公爵の倒れた日の翌朝早く、ライラは転移魔法によって王都へ使者を急派し、魔法院および国王に対し、リナの国王謁見と継嗣認可の内諾を得る手続きに入っている。
そして、王立魔法院からは仮ではあったが、魔法院での試問と祈族への転化を条件とした認可の書状が、その夜半には届いていた。
それゆえ、エルザス公爵領のすべての領民に向けた『エルザス公爵公女リナ』の正式な公示も時間の問題となっている。
リナの存在は、ライラという有能な領宰を通じて、瞬く間にエルザス領のなかで揺るがぬものになりつつあった。
*
幽かな音を立てて、公爵の寝室の扉が開いた。
猫のような足取りで、薄く開いた扉の隙間から忍び込む人影。
扉を閉めて、ほっと、一息。
「どうしたんだい? ルカ」
部屋の奥から声をかけられて、侵入者は、ひっ、と息を詰まらせた。
月明かりのさす寝台のうえ、なかば起こした身を枕に凭せかけて、シオンが侵入者を見つめていた。
「毎度毎度、吃驚させないどくれよ。起きてたのかい?」
「すこしばかりまえに目が覚めてね。寝ているのももったいないと思っていたところだったのだけれど……」
「なに笑ってんだい?」
ルカがシオンの笑い声に気づいて、顔をしかめた。
「いや、よく意表を衝いてくれるひとだと、思ったまでだよ。まさか忍び込んでくるとは思わなかったから」
「どうして入ってきてすぐに、あたしがルカのほうだと分かったのさ? 会ったと思うけど、リナとあたしって、似てないかい?」
不思議そうにルカがシオンに訊ねた。
生まれてこのかた、この歳に至るまで、ハルセリの近所のひとびとや知り合いに、ルカとリナはよく取り違えられていた。
一度も間違わなかったのは、母親ぐらいのものだ。
もっとも、ふたりが口を開けば、間違う者などいなかったが。
「なんとなく、かな。それに、わたしの勘ではリナはどこかに忍び込んだり、冒険をする気性ではないと思うのだけれど。わたしに会いたければ、きっとライラか誰かを通して、まずは許可を求めてくるだろうね」
「ふうん、分かるもんなんだね」
と、ルカ。
公爵と会うためには、それなりの手続きが必要だ、ということを、暗に仄めかされているとは、まったく気づいていない。
シオンのほうも、ルカの来訪を歓迎していないわけではないらしく、それ以上は、なにも言わなかった。
ただ、興味深そうな微笑が深くなっただけだ。
「でも言っとくけど、驚いたのはあたしのほうが、ぜったい多いんだからね」
突然、思い出したようにルカが言った。
『よく意表を衝いてくれるひとだ』と、言われたのを根にもったらしい。
「最初にあんたの顔見たときと、急に倒れちまったときと、さっきと。……あと、倒れちまったとき衛士が来て、あんたのこと『公爵閣下』って呼んだとき!」
「なるほど」
シオンは止まらない笑いに肩を震わせながら、寝台のそばの灯りを灯し、ルカを手招いた。
暖かい灯火の色に薄明るくなった室内を眺めながら、ルカは寝台のはすかいにある卓子の椅子をひっぱってきて、シオンのそばに腰掛けた。
「でも、最後のは君にも責任がある。ふつう、わたしがシオンだと言えば、みな気づくものなんだよ」
「そりゃ、気づかなかったのは、あたしがバカなせいなんだけどさ。あんた、あたしが気づいてないな、と思って、わざと黙ってたとこ、なかったかい?」
ルカにしてみると、家名に知名度がない者ならともかく、シオンが初対面のときに家名を名乗らなかったのが、引っかかっている。
ルカだって、『シオン・エルザス』だと名乗られれば、いやでも分かる。
しかし、彼は『シオン』とだけ名乗った。
それから、そのあとのシオンの意味ありげな笑い。
どう考えても、わざとらしい。
「確かに、わざとだね」
シオンはあっさり認めた。
「どうしてそんなことしたのさ?」
「君に『公爵さま』と、呼ばれたくなかったから」
ルカが目をぱちくりさせた。
「たまには誰かに名前を呼ばれてみたいと思っていたのでね。君のリナは呼んでくれなかったし」
「呼んでくれって、頼めばどうだい?」
「リナにかい?」
「リナじゃなくても。お城にたくさんいるだろ? 誰でもいいじゃないか。適当なのつかまえて」
「わたしが頼むのかい?」
「ほかの誰がそんなこと頼むのさ? 呼んで欲しいのは、シオンだろ?」
シオンは、はたと考え込んだ。
どうやら、そういう状況は考慮外だったようだ。
「どうだろう……みな、『畏れ多くてできません』と、言うだろうね。確信はないけれども。あのライラですら、わたしのことを『シオン』と呼ばないところから察すると」
「じゃ、ともだちは?」
ルカの何気ないこの問いで、楽しげに答えていたシオンが、初めて言葉を詰まらせた。
「いない……と、言ってしまうと、まるでわたしの人格になにか問題があるような感じがしてしまうのだけれど。まあ、いまは近くにいないね。王立魔法院に通っていたころのともだちは、みな死んでしまったし、前ウィンチェスター公爵のカレルとは気安い仲だけれど、彼が引退してからは王都でも顔を会わさなくなってしまったしね。ウィンチェスター公爵領まで、たいした用もないのにそうそう出向くわけにもいかない」
「なんだか、さみしい生活に聞こえるねえ」
ルカが、椅子からすべりおちるように床に腰を下ろし、寝台の端に顎を載せてシオンを見上げた。
ちょうど、シオンから見ると、寝台にルカの首だけ載っているように見える。
「そんなことはないよ。……でも、ときどき……誰かに名前を呼んで欲しいときがあるのも確かだね」
「あたしは……あのあと、あんたのことリナに話してて、ついうっかり『シオンが』って言ったら、リナにほっぺた思いっきり抓られたんだけど。『そんな、呼び捨てなんて、なんてこと』って。ほっぺた、伸びちまうかと思った」
ルカは痛みが甦ってきたように、両の頬に手を当てた。
「でも、わたしは君に『シオン』と、呼ばれて嬉しかったよ。できれば、これからも呼んで欲しいのだけれど」
シオンが、ルカの結い上げていない髪に指を滑らせた。
ルカはくすぐったそうに顔をしかめて、首を竦めて立ち上がると、椅子に座り直す。
「あたしはいいけど。いいっていうか、そっちのほうが呼びやすくていいけどね。でも、リナに言っといておくれよ? ……あと、シオンのところの、えと、ライラっていう……ひとにも」
ルカの眉が曇った。
「領宰どのに会ったんだね。どうしてだか苦手のようだけれど?」
興味深そうに、シオン。
「……リナにさ、ひとりで出ていこうとしたこと、謝ったんだよ。そしたら、リナが泣き出したり拗ねたり怒ったり喚いたりするのは、いつものことだけど、一緒にいたライラまでなんでだか凄い剣幕で怒り出して……。あたし、二刻ぐらい難しい顔で説教されてさ」
はあ、と深い溜息をついたルカを横目に、シオンは、
「やはり、泣きむしどうし結託したようだね」
と、ひとりごちた。
けれど、それはルカには聞こえなかったようだ。
昨夜の騒動が頭のなかから離れないのか、憂鬱な顔で、考えごとをしている。
「ルカ。では、リナとは仲直りできたんだね?」
シオンが難しい顔をしたルカに訊ねた。
ルカは、一瞬、ぎくりとしたようで、それから、おもむろに首を横に振った。
「『もう、姉さんなんか知らないから』って、振られちまってね。最初、同じ部屋に寝台がふたつ入ってたんだけど、その場のなりゆきで、リナは隣の部屋に移っちまって……いまは口もきいてくれない」
「それはなんだか大変なように聞こえるのだけれど。大丈夫なのかい?」
シオンが枕から身を起こし、少々、心配げにルカを覗き込んだ。
「大丈夫って……仲直りできるのかってこと?」
ルカにとってはシオンの心配するところがよく分からなかったらしい。
きょとんとした顔で、訊ね返す。
シオンが頷いた。
「そんなの当たり前じゃないか。今回のがやっぱり、いっとう凄かったけど、ケンカなんていつものことだし。三日ぐらいしてリナが落ち着いたら、部屋をのぞきにいくよ」
「そんなものなのだね」
納得しきれないようすで、シオンはふたたび枕に身を預ける。
「きょうだいゲンカなんて、そんなもんだと思うけど? でも、三日はぜったい口きいてくれないからね。リナはライラといろいろやることがあるみたいで急がしそうだけど、あたしは、もう、ひまでひまで。もちろんリナは相手してくれないしさ、こんなに、なんにもすることがなかったのなんて、生まれて初めてだよ」
ルカは寝台の台座のところに足をかけ、膝の上に肘を置いて、詰まらなさそうに、頬杖をついた。
「それで……わたしのところへ来たのかい?」
「それもあるし……ちょっと、訊きたいこともあったし。この部屋があたしらの部屋とあんまり離れてなくて、助かったよ」
いま、リナとルカ、ふたりは城のもっとも深部、公爵家の私的な部屋の集まっている区画に部屋をもらっている。
リナが公爵の家族になるからだ。
区画を仕切る扉の向こうには常時、衛士が詰めているものの、基本的には呼びつけさえしなければ、公爵家の身内のみの空間になる。
つまり、この区画に常に出入りできるのは、公爵と、ライラ、リナとルカの四人だけということだ。
「あんたがこの部屋に運び込まれたのは見てたから、そこから曲がった角の数と、扉の数をかぞえといてさ。階段は使わなかったから、憶えるのは楽だったけど」
公爵家の区画は決して狭いものではないが、城全体からすると、ちいさな区画である。
また、ほかの場所のように無理な増築はおこなっていない。
なんどかの改修はあったものの、城門及びそれに続く城壁を除けば、おそらく城の建設当時の姿をいまに留めている、唯一の場所であろう。
それゆえ、それほど複雑な構造にはなっていない。
「それで、ルカ。訊きたいことって?」
シオンが促した。
ルカは珍しく即答しなかった。
言い淀み、シオンを上目遣いに眺めやる。
「言えないようなことなのかい?」
咎めるような口調で、シオン。
一瞬、一昨夜のルカの姿が脳裏を過ぎったか、眉をひそめる。
「い、いや、そんなことはないんだけどさ」
ルカの声が小さくなった。
「あ、あのさ。シオンが倒れたのって、あたしのせい?」
シオンの反応を見逃すまいとする、ルカの視線に、シオンは微笑。
「やはり、突拍子もないことを思いつくひとだね。どうして、そんなことを?」
「だって、木から落ちてきたあたしを受け止めてくれたろ? あたし、結構重いし。それに……」
「それに?」
ルカの顔が赤くなった。
「あんた、ほら……あたしの血、すこしだけど飲んだろ? あれで、気持ちが悪くなったんじゃないかと……思ったんだけど……」
ほっておけばそのまま床に沈み込んでしまいそうなほど、項垂れているルカの姿に、シオンは笑いを堪えることができなかった。
「わ、笑うこた、ないじゃないか。あたしは、ほんとに心配したんだからね!」
顔をしかめて不満げに零すルカに、シオンは、
「済まない」
と、謝りはしたが、それでも笑いは止まらなかった。
「君はすこしも重くなかったし、それに……君の血はとても素敵だったよ。……でも、そんなこと気にしてたなんて。なんて、可愛いんだろう」
額に手を当て、ルカの見るところ、止まらない笑いを堪えようとしているようにも見えないシオンを、ルカは、すこしふくれ気味に見つめている。
「ライラはなにも言わなかったのかい?」
ややあって……ようやく収まりかけてきた息を整えながら、シオンは言った。
「なんにも。あたしのこと、怒るだけ怒ったら、あとは忙しそうにリナと出ていったよ。あたしも……あれ以上怒られるのも、やだったから訊かなかったし」
ふうん、とシオンが意外そうに呟いた。
「よく気の付くひとだから、君に心配させるようなことはしないはずだけれど……。珍しく怒ったんで、うっかりしていたのかな」
と、思い巡らせる。
「どうして倒れたりしたんだい? どっか、具合でもわるいのかい? ……見たところ、そうは見えないんだけど。でも、昨日まで元気だった奴が、突然倒れて、そのまま逝っちまうってのも、あたしらのいたとこじゃ、珍しくなかったし」
ルカは自分のせいじゃないということが分かって、急にいろいろと心配になってきたのか、シオンの頬に手を当てて、そのぬくもりと自分の頬のぬくもりを較べながら、
「倒れたときも思ったけど、ずいぶん冷たいよ?」
心配げにシオンの顔を覗き込んだ。
「心配しなくてもいいよ、ルカ。祈族の体温は君たちよりずっと低いんだ。あたたかい血を飲めば、すこしはあたたかくなるけれど。でも、これは病気じゃない。君の耳が長かったりするのとおなじ、生まれつきのものだよ」
シオンは頬に当てられたルカの手を取って、指先に口づけた。
「わたしが倒れたのは、寿命のせいなんだ。……信じられないような顔をしているね」
こくり、と、ルカは頷いた。
「祈族はね、外見は老いないんだ」
「知ってる。聞いたことがある」
と、ルカ。
「でも、寿命はある。不死というわけではないんだ。だから、わたしも死んでしまう最後の瞬間まで、この姿のままだけれど、わたしは今年で八七十歳だ。あと五年か、八年か、たぶん十年、この身体は保たないだろうね」
「どっか、痛むのかい?」
「いや。いつもはどこもおかしくないんだよ。若い頃と……なにも変わらないね。でも、ときどき意識を失ってしまう。いまはまだ、ときどきだけれど。これから少しずつその間隔が短くなって、眠っていることのほうが多くなって……。最後に、眠りのなかで死んでゆくんだ。寝台に横臥わった身体は、塵になる。わたしの身体のなかで止まっていた時間が、一気に流れだすようにね……。なかなか潔く見える死に方で、気に入っているのだけれど」
自嘲気味に笑ったシオンは、ふと、ルカのほうを見遣った。
そして彼女が、いつのまにか椅子から立ち上がっていたことに気がついた。
不意打ちで、鼻を抓まれる。
「シオンはまえに、あたしのこと叱ってくれたけど、きょうはあたしが叱る番だね」
ルカの目は据わっていた。
目尻に、涙が浮いている。
「シオンは、まるで自分がいつ死んだっていいように言うけど、そんなんじゃ駄目だよ」
「ああ、いまわたしが死んだら、リナが大変だからね」
涙を催すほど憤っているルカの気持ちが理解できず、宥めようと差し伸べられたシオンの手は、ルカにはねのけられた。
「だからそんなんじゃなくって! 死んだら、なにもかも終わっちまうんだよ? やなことだってなくなるかわりに、いいことだってなにもないんだ。生きてなきゃ、いいことなんかないんだよ?」
ルカは真剣そのものだった。
十八にしかならない小娘が、八百年を越える歳月を生きてきた男に意見する愚を、彼女は感じていなかった。
寝台の端に手をつき、潤んだ瞳でシオンをまっすぐに見つめる。
「だからさ、ほんとに死んじまうときまで、どうしようもなくなっちまうときまで、いいことのために生きてようよ。つらいことだってたくさんあるけど! いつ死んじまってもいいような、死ぬのを待ってるような……そんなふうに言われたら、あたしは……哀しいんだよ」
涙を零すルカの手をひき、身体を支えるようにして、シオンは彼女を寝台の端に座らせる。
「君は、ひとのために泣けるんだね」
彼女にとって、生きていることはつらいことだったはずだ。
シオンとて、異族の混血の境遇が、どのようなものであるか知らないわけではない。
かつて学んだ魔法院で、混血であることで迫害されながら、おのれの魔法の才だけを支えに、血を吐くような訓練をこなし、まわりに自分を認めさせた者を知っている。
また、自分の身体しか売るものがない街娼の境遇についても。
都市で餓死者が出れば、多くは、働くちからのない老人か、体力のないこどもか、身体を売る女たちなのだ。
ルカは魔法の才があったわけではない。
自分だけでも大変だろうに、養わなければならない妹を抱えて、それでも生きることを諦めなかった。
そして妹とともに、ここまで来たのだ。
その彼女にとって、生きることに飽く者は、生きることを諦める者は、どれほど哀しく映るだろう。
「済まない。もうあんなことは言わないから、泣かないで」
涙を拭くものが見あたらなくて、シオンは自分の寝具の袖で、ルカの頬を拭った。
ルカは頷き、しばらく涙目を瞬かせる。
ようやく落ち着いたころ、ルカは寝台から椅子に座り直した。
「だいたい、死ぬったって、すくなくとも五年くらいは先の話なんだろ?」
なんだかまだ不満そうな気色に、シオンはすこし用心して、
「そうだね」
と、答えた。
「いまは忙しいだろうけどさ、リナがあんたを助けるようになったら、あんた、もうちょっと楽しくやりなよ? このお城、シオンがいるこの場所だけ、なんだかさみしいよ?」
「寂しい?」
「そう思わないかい? どこもかしこもたくさんひとが働いてるのに、ここのあたりだけ、ほんとに静かで」
「ここは、わたしの家族だけの場所だからね」
「だからさ、ひまになったら、ともだち呼んだりしてさ。お茶なんかしながら詰まんないことしゃべってるのも、けっこう楽しいよ。あと……こいびと……つくってみたり」
こいびと、という言葉で、ルカは自分で言ったにもかかわらず、頬を染めた。
赤くなっている自分を誤魔化すように、慌てて言葉を繋げる。
「シオンは見栄えもいいし、優しいからさ。あんたさえその気なら、いくらだってひっかかると思うんだけど。なるたけ騒がしくて世話焼きなの選んで、身の回りの世話焼いてもらったりして。そういうの、駄目かい? ライラが焼き餅焼くとか?」
「ライラが?」
「うん」
「彼女は……焼き餅は焼かないと思うよ。わたしが突然そんなひとを連れてきたら、目を丸くして、卒倒しそうだけれど」
片目を瞑り、真面目な顔でシオンは思いを巡らせ、ルカに言った。
「じゃあ、決まり。楽しくやろうよ」
ルカは勝手に宣言して、椅子の背もたれで伸びをした。
「考えておくよ。ずっとまえにやりたいと思って、結局、公爵になってしまってできずにいたこと……。君がいてくれたら、思い出せるかもしれない」
と、シオン。
「なら、なるべく、さっさと思い出さなくっちゃね。ゆっくり考えてて時間が足んなくなるかもしれないし」
訳知り顔に頷くルカに、敵わないな、と微笑する。
そして、シオンはふと思いついた。
「ねえ、ルカ?」
「なんだい」
「君はさっき、わたしの鼻を抓んだけれど、あれはなんだったのかな? ちょっと、痛かったけれど」
たしか、こんどはあたしが叱る番だ、といいながら。
叱ることと、鼻を抓むことにはなにか関連があるのだろうか?
「え、あ、これ?」
虚を衝かれたように、ルカは言い淀んだ。
自分で自分の鼻を抓んで、軽く捻って見せる。
「痛かったかい? ごめんよ」
「いや、痛いのはたいしたことじゃないのだけれど。どういう意味なのかと思って」
「あ……えと、シオンさ、子供の頃、親に怒られて、ああいうのなかったかい? 悪戯して鼻抓まれたり、耳引っ張られたり、ほっぺた捻られたり……よっぽどのことしたら、げんこつ喰らったり、ごはん抜きだったり」
ルカの言葉に考え込みだしたシオンのようすに、ルカは慌てて付け加える。
「も、もしかしたら、偉いとこの子って、そんなふうに叱られないのかもしれないね。で、でも、おでこ指で弾かれたりしたこと、ないかい?」
たっぷり考え込んでから、シオンは、
「なかったようだよ」
そう言った。
「昔のことだから、忘れていることもおおいけれど」
「シオンの母さんって、ずいぶん物わかりのいい、ひとだったんだねえ。あたしなんて母さんに、ちょっと夕御飯つまみ食いしただけで、ほっぺた抓られてたけど」
どうやら椅子の座り心地がよくないらしく、ルカはふたたび床に座り込んで、寝台の端に肘をついて頭を載せる。
「物わかりのいいひとだったかは……分からないな。なにしろ、生きているときに会ったことがないから」
妙に抑揚のない声で、シオンは言った。
「シオンは……母さんがいなかったのかい? あたしらの父さんがいなかったみたいに?」
シオンはルカの言葉に、首を横に振った。
「母は、わたしが十六のときまで、存命だったよ」
「じゃあ、なんで……って、訊いちゃいけないよね。いろいろ、どこだって事情ってあるもんね」
慌てて口を閉ざすルカに、シオンはもう一度、首を横に振った。
「君たちが……知っていたほうがいいこともあるかもしれない。知らなければならないことなら、いずれ、分かることだけれど」
シオンは窓の外を見遣った。
*
「祈族の女性は、子供を産むと長生き出来ないんだ。子供を産まなければ千年でも生きられるのに。どうしてなのかは、わたしも知らないけれどね。だから、わたしの母も、わたしを産んで十六年で亡くなってしまった」
シオンはルカのなめらかな金色の髪に指を滑らせながら、話し始めた。
こんどは邪険にすることなく、ルカはシオンにされるがままに、寝台の端から、シオンを見つめている。
「母は子供を産むために他家から嫁してきたひとで、父とは気が合わなかったようだ。わたしを産むと、すこしの使用人だけ連れて、ここから遠く離れた南の離宮へ籠もって、生涯をそこで終えた。わたしは母に会ってみたくて、何度も手紙を出したけれど、ついに返事はもらえなかった。わたしは母の顔を肖像画でしか知らない」
シオンは口を噤んだ。
ルカは黙ったまま。
ルカの肩先で、さらさらとシオンの指先をすべってゆく髪の音だけが、幽かに響く。
「母は、父に望まれなかったら、きっとやりたいことがたくさんあったのだろうね。でも、それは叶わなかった。愛されて嫁したわけでもない男の子供を産んで、自分の寿命を縮めて死んでいった。……わたしは父の望んだとおりの祈りのちからをもって生まれたけれど、それは、奇跡でもなんでもないんだ。ただ母の命を奪って、手に入れただけのものなんだよ」
「ずっと、シオンはそう思ってきたんだね。母さんに嫌われてたって。父さんにも、シオンとおなじことができたら、自分以外の誰だってかまわないんだって」
寂しそうに、ルカが呟いた。
「いまではもう、ずっと昔のことさ。でも、誰かに自分の名前を呼んで欲しくなるような夜には、思い出すこともあるけれどね。そして、こんなふうに誰かを犠牲にして血を繋げていかなければいけないなら、いっそエルザスの名など、なくなってしまっても構わない、そう思いもした」
それは、シオンの嘘偽らざる告白であっただろう。
現にシオンは直系の子をもつどころか、妻さえ娶っていない。
いままで、誰にもうち明けなかった、想い。
百余年の時間をともにしてきたライラにさえ気づかれることなく秘め続けてきた、いたみ。
「でも……君たちなら、エルザスの名を決して重荷にせずに生きてくれる。わたしはそう思っているし、願っているよ」
シオンがルカを見た。
言葉もなくシオンを見つめる、ルカの眼差しに優しい笑みを返す。
だが。
ルカとリナ、ふたりが『名』に苦しまずに生きてゆくのを願うこと。
それは、シオンはその生の果てるまで、『名』に苦しみ続けることではなかったか。
ただ封土を護るために生まれ、彼が生まれる前に父と国王とのあいだで始まった軋轢に耐えるよう教育され、彼もまた、それに応えて生きてきたこと。
長い生のうちに、苦しみから逃れる術を探すこともなく、その苦さを楽しむかのように生きてきたのは、『名』の重みのなかで生きて死んだ父と母への、愛惜だったか。
ただ、それは秘すべきことだった。
秘して、シオンの死とともに埋葬されるべき想い。
「あの、さ。こういうふうに考えるのって、どうかな」
シオンの想いをよそに、躊躇いがちに、ルカが言った。
「シオンの母さんも父さんも、はじめにちょっと行き違ったんだって。どっちも、嫌いじゃなかったのに、はじめに意地張って、どんどん上手くいかなくなって」
頼りなさそうに、はにかんで俯く。
「偉い奴って、変なとこで意地っ張りだろ? 父さんは、ほんとはシオンが自分の息子で、自慢でしょうがないのに、顔に出すのは恥だとか思ってて。シオンの母さんも、ほんとはシオンのこと気にしてたんだけど、もう、意地張ってる自分をどうしようもなくってさ。……あたし、そう思うよ? だって、シオンはこんなに優しくていいひとなのに、その親が冷たいわけないじゃないか」
シオンは、言葉を失っていた。
ただ、穏やかな、しかし微笑を失った表情で、ルカを見つめている。
一生懸命、言葉を選びながらシオンになにかを伝えようとしている、彼女を。
「あたしの母さんなんかバカだから、種族が違うのに父さんについていって、すぐに死なれて、自分は洗濯女やりながら、ときどき身体売ってたけど。結婚の申し込みにもらった柳で編んだ腕環を死ぬまで大切にしてたよ。ずっと、父さんのことが好きだって。……惚れたら、そんなもんなんだよ。苦労しても、寿命が縮んでも、惚れた奴のためなら、しかたないかって。そんでもって、嬉しいこともいっぱいあったりして。だから、シオンの父さんも母さんも、たくさん相手がいるなかから一緒になったんだから、嫌いじゃなかったはずなんだけど、きっといろいろややこしくなってさ。それだけのことだったんだと思うよ」
ルカはそこまで言って、ぽすん、と、頭を寝台に埋めた。
横を向いて、シオンを見上げる。
シオンは目を閉じていた。
「ごめんよ。あたし、余計なことばっかり言って、シオンを困らせてるね」
「……違う」
シオンは低く呟いた。
「君の言うことが、真実であったらいいと……いま、祈っていた」
ルカは、彼自身が『名』の重荷を負ったままであるという事実に、気づいていなかったかもしれない。
気づいているはずがない。
けれど、彼女の言葉は確かに、シオンにあることを気づかせたのだ。
すべてを変えて、過去すら読み替えて、自身が幸せであるべきことを。
「祈っても、真実であっても、もう、ふたりともわたしには届かない過去にいるのだけれど。それでも」
シオンには、それ以上を言葉にすることが出来ないようであった。
沈黙し、青い月明かりを浴びるシオンは、寄る辺ないように、ルカには見えた。
孤独であるように。
さみしいのだ、と、ルカは思う。
たぶん、ずっと昔から、シオンはさみしかったのだ、と。
ルカは立ち上がって身を乗り出し、目を閉じたままのシオンの唇に、くちづけた。
「ルカ」
穏やかなくちづけのあと、シオンが名を呼んだ。
目線が重なる。
そのシオンの瞳の彩に、いままでと違う生き方があるのだということを、父と母を裏切ることなく自身の意志で生きてゆく方法を、思いがけず見いだしてしまった者の惑いが浮かんでいたことに、ルカは気づいたか。
「シオンにどうしようもないことって、あたしになにができるってわけじゃないけどね。でも、思い詰めたってしかたないよ。……楽しくやろうよ」
「わたしを、慰めてくれるのかい?」
「あたし……男のひとを慰めるのって、こんな方法しか知らないんだけど」
シオンの腕に抱きかかえられて、ルカは寝台のうえ、シオンの横に座った。
「いいのかい? 本気にしてしまうよ?」
ルカのあたたかな身体は、凍えた血をもつシオンには、ただそれだけで宥めになった。
「いいよ。こいびとにしてくれ、なんて、面倒なことも言わないから」
靴を寝台の下に脱ぎ捨て、シオンの寝具の襟の釦をはずしながら、ルカ。
「あとで、すこし怖い思いをするかもしれないけれど。構わない?」
寝台に押し倒されて、ルカの金の髪が花の開くように敷布に広がる。
「シオンの、好きにしていいから」
冷たく、優しい手が頬に触れるのを感じながら、ルカは目を閉じた。
*
青月が傾いている。
目が覚めて、ルカはシオンの腕枕で眠っていた自分を認めた。
あたたかに部屋を彩っていた灯火は、消えている。
寝台の下、深い色合いの絨毯に、毟られた花弁のように散っている、ふたりぶんの衣装。
まだ眠っているシオンを起こさないようにと、静かに身を起こす。
湖面を渡る風が窓から忍び込んで、すこし肌寒くはあったが、ルカは気にならなかった。
身体の奥に、シオンの熱が残っている。
いままで受け入れてきた誰より冷たく、けれど誰より優しい、熱さ。
くちづけも、愛撫も、なにもかも甘やかで、なにひとつ、嫌なことはされなかった。
思い出して、すこし身体が火照ってくるのを感じる。
耳朶まで赤くなって、ルカは飲み物でも、と寝台のまわりを見渡した。
『あ、あたし、なに、のぼせてるんだろ? こんなの、初めてじゃないのに』
見渡して、シオンの枕元、隠されるように小さな卓子に小振りの瓶と、硝子の杯が置いてあるのを目に留めた。
すこしくらいなにか残っていないかと、そろそろと近寄って瓶を手にとって見る。
底のほうに僅かに沈んでいるが、たぶん逆さに振っても出てこないだろう。
杯のほうも、同じ。
何気なく、杯の縁にこびりついた昏い液体を舐めてみる。
血だった。
「なにか、飲み物をもってこさせようか」
「ひ、あ」
突然、背に声をかけられて、ルカは杯を取り落とした。
杯は、音もなく絨毯に転がる。
「だ、だからさ、吃驚させないどくれよ。起きてたなら、そう言ってくれればいいのに」
驚きのあまりの涙目で、どきどきする胸に手を当てて、シオンを振り返る。
「わたしも、いま目が覚めたのだけれど。君があんまりあどけない顔で、子猫のように腕のなかで眠っていたものだから、わたしもつい眠ってしまっていたようだ」
シオンの腕のなかで、寝顔をさらしていた自分を想像して、ルカはますます顔が火照ってくるのを感じていた。
だいたい……ルカはシオンの『おかしな』物言いを、聞き流すことができない。
あどけないとか、子猫のようとか、聞いているほうが恥ずかしくなってくる。
「で、飲み物はなにがいい? 当直の衛士を呼べば、すぐにもってくるはずだよ」
「い、いいよ。あたし、帰らなきゃ。お城のひとにあたしがここにいるのばれたら、シオンが困るだろ?」
慌てて身支度しようと寝台の下に身を屈めるルカを、シオンは腕を取って引き留めた。
「困らないよ」
ふいに目が合って、ルカは息が止まりそうになる。
「わたしはこの城の主人だからね。誰をこいびとに選ぶのも、わたしの自由だ。……君がわたしを拒まないかぎりは」
抱きすくめられて、ルカはどうしていいか分からなくなる。
広い寝台の中央で、座っているシオンの肩に背を寄せるように寄り添う。
胸のしたにシオンが軽く手を添えていて、どうしても意識してしまう。
「あ、あたしは……か、構わないけど……」
添えられたシオンの手をぺちぺちと軽く叩きながら、ルカ。
「では、決まりだ。楽しくやろう……君の言うとおり」
さきのルカの科白を真似たものか、こともなげに言い切って、シオンは足下のほうにあった掛布を引き寄せ、大切なものを仕舞うように、ルカをくるんだ。
「あとは、君がわたしのそばで騒がしくして、わたしの世話を焼いてくれれば嬉しいね。中庭の四阿で、リナとライラと、四人でお茶をしてもいいかもしれない。厨房に言えば、とびきり美味しいお菓子を焼いてくれると思うよ。わたしとライラは、ちょっとお茶は飲めないけれど」
ルカは身をよじってシオンを振り仰ぐ。
見つめて、なにか言いたいことがあったはずなのに、なにも言えなくなる。
月明かりのなかのシオンは、青白く輝いてみえた。
美しい、その姿。
けれどルカはその姿に、ほんのすこしだけ違和感を覚えた。
正確には、姿、ではない。
顔の印象が……どこか、違う。
「シオン……」
「なにかな?」
「シオンって、そんなに……牙が長かったっけ」
見れば、微笑を刻む口元に、皓い牙がわずかに覗いている。
シオンの微笑が深くなった。
「血が欲しいと思っているからね」
どこか投げやりにも聞こえる声音でシオンはそう言って、ルカの唇の端にくちづける。
ルカは瞬きふたつしたのちに、躊躇いがちに自分で自分を指さした。
「ここには、ほかに誰もいないよ」
と、シオン。
ルカの表情が凍った。
「はじめに言ってた『あとで、すこし怖い思いをするかもしれない』って、そういう……こと?」
「そういうこと」
シオンは答えて、いまはもう傷ひとつないルカの右腕に唇を寄せた。
一瞬、ルカは腕を退きそうになった。
実際にそうしなかったのは、彼女がこれまで、男のするがままに身を任せるよう、自分自身を抑えてきたためだ。
もちろん、シオンはふつうに口づけただけ。
「でも、大丈夫。いまは自制できているし、さっき君が来る前に、瓶にあるのを飲んだばかりだ。切羽詰まって、嫌がる君の喉に咬みついたりしないから」
言いながら、ルカの首筋を指先で辿る。
陶然と、ルカの肌のぬくもりを味わっているように。
「いつか喉を許してくれたら、嬉しいけれど。君がいいと言ってくれるまで、我慢しているよ」
「欲しいなら、あたしが寝てるあいだに……って、考えなかったかい?」
「こいびとの寝込みを襲うような、酷い男であって欲しいのかい?」
そういうのが好きな奴も多いんだけど、と、ルカはこころのなかで呟いた。
もちろん、あたしは違うけど。
思いついたことがあり、思いつきを実行に移して顔をしかめ、シオンの首に腕を廻して、有無を言わさず唇を重ねる。
「ルカ、君……口のなか、切れているよ」
くちづけのあと、シオンの唇に血が滲んでいた。
ルカの唇にも。
押し殺すような息遣い。
きり、と、シオンが歯を喰いしばる。
さきほどよりも僅かに長く、牙が覗いて見える。
「切れてるんじゃなくて、あたしが自分で切ったんだけど」
と、ルカ。
「なぜ……」
困惑を隠せないままのシオンの問いを、ルカは笑顔で遮った。
「女のほうから誘ってるんだからさ、そういうの、野暮じゃないか」
その言葉に、シオンは笑った。
彼のなかに籠められた、なにかを静かに解放したような、涼しい明るさをまとう笑い声。
「君は……ほんとうに、リナの言ったとおりのひとだね」
肩を震わせるシオンに、ルカは慌てた。
「リナが? なんて……ああ、もう。どうせ、バカだとか、考えが足らないとか、慌て者だとか……そんなとこだろうね」
がっくりと溜息をついたルカの肩を抱いて、シオンは首を横に振った。
「違うよ」
「じゃあ、なんて?」
「あとでリナにお訊きよ」
ルカは、寝台に身を預け、促されるまま、シオンに喉をさらした。
「怖がらなくてもいい。痛くしないから」
必死に抑えてはいたが、震えているのがわかったらしい。
それでなくても心臓の鼓動が早い。
こうなることを許したのはルカ自身なのだが、血が出るほど咬みつかれると分かっていて、平然としていられるわけがない。
「そ、そう言われて、痛くなかったためしが……ないんだけど」
困惑の滲む言葉に、シオンが低く笑う声が耳元で聞こえた。
宥めのような愛撫。
甘やかなくちづけ。
「……痛くないよ? 怖ければ、わたしの背に爪をたてても構わないから」
優しい声。
その響きに眩暈すら覚えながら、ルカは頷いた。
「君の、血が欲しい」
シオンの囁きは、真摯な愛の告白に似ていた。
……すみません。
読者の方々にはいろいろ謝りたいことがあるんですが、どこから謝ったら良いか分かりません。
なにが難しかったかと言って、設定に関するあれこれを登場人物の会話の中に織り交ぜながら、大急ぎで恋愛フラグを立てなければいけなかったことでしょうか……
書いた当時、プロット立てる段階で、異様に恥ずかしかったことを覚えています。
でも、自分で書いておいて言うのもなんですが、双子の妹の方を自分の娘に、双子の姉の方を自分の恋人にしてしまう公爵って……倒錯してるなあ……と。




