宮の裏の妖精さん
ガラン、ガランと
鐘が鳴る。
降りてきた依頼書は受け取られるや否や、
瞬時に内容を確認され、手際よく捺印を押される。
「これは、3番の窓口に。」
手渡された書類を指示とおりに運ぶ。
窓口で受け渡した書類は「健康祈願」と書かれたファイルに挟まれ、
また別の作業区画へと回されていく。
休憩中、定年を間近に控えた作業員2人が、こんなことをぼやいていた。
「家族の健康、彼氏が欲しい、彼女が欲しい、
近頃の若い世代ってのは本当に丸くなったもんだ」
「野心がねぇよな。野心が。若いんだから、もっと上を目指さないといけねぇ」
時代の変化に対応できないオッサン世代はどこにでもいるものだ。
今日から3日間は1年で最も忙しくなる。
多くの人の願いを、お上に伝える大事な勤め。
また次の鐘が響く。
貴重なお時間を使って読んで頂き、ありがとうございます。
昨日より当サイトに投稿を始めました。
一日一短篇を目処に考えていたのですが、すでに折れそうです。