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解体探偵の日常推理 ~「話しかけるな」と言った解体癖持ち天才少女が、僕を助手にしてデレ散らかすまで~  作者: 卯月八花
【第4章】未確認神獣・銀ヒョロの解

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第58話 あなたは私の窓

「善処する」


 篠原会長のその言葉を聞いたとき、僕は心底安堵した。


 生徒会長に勝ったんだ! さすが、僕の名探偵さん。

 ロープの結び方から真実を紐解いて、あの武闘派生徒会長を相手にここまで鮮やかな立ち回りを演じるなんて。


 やっぱり、僕の名探偵さんはとんでもないぞ。



* * * *



 生徒会室を出ると、特別棟4階の廊下には放課後の日常が広がっていた。

 吹奏楽部の練習音や、野球部のカキンカキンというバットのノック音が遠くから聞こえてくる。その静けさの中で、僕は隣を歩く彼女に、心の底から感嘆を漏らした。


「すごいね、柘榴塚さんって。本当にすごいよ」


「なにが?」


「だって、あんな迫力のある会長相手に一歩も引かないし。僕なんて萎縮しちゃってたのに、君は平然として脅し……じゃなくて、交渉を成立させてさ」


 僕の言葉に彼女は少し照れくさそうに視線を逸らして、ぼそりと呟いた。傾いてきた陽光が差し込む廊下で、彼女の髪が黄金色に縁取られている。


「……どうってことないよ。あれは、水間くんのおかげだし」


「えっ、僕?」


 意外な言葉に思わず目をぱちくりさせてしまう。

 僕、なんか役に立ったっけ? ひたすら怯えて、話を合わせろって小突かれただけじゃ……。


「あなたのお喋り力が効いたんだよ」


「ああ……」


 あれか。僕が『お喋り部門のエース』だから、二人の秘密を学校中に言いふらしちゃうぞ! って言外で脅したやつ。

 ……どうなの、それ。ていうか僕、そんなにお喋りな自覚はないんだけど。そりゃお喋りは嫌いじゃないけどさぁ……。


 複雑な心境で眉を寄せていると、柘榴塚さんは不意にこちらに向き直った。丸っこい瞳が、真剣な光を宿して僕を見上げてくる。


「それだけじゃない。あなたという存在が、私を活かしてくれている」


「え……」


 突然の告白めいた言葉に、僕は面食らって言葉を失った。


「会長さんとの取り引きは、私一人じゃできなかった。……正直に言うと、一文字結びがどうこうなんて、ほぼ当てずっぽうみたいなものだった」


「えっ、嘘でしょ? とてもそうは見えなかったよ」


 まるで真実を見透かす魔鏡でも持っているみたいだったじゃないか。


「どちらかというと、私たちが来る前にカーテンを閉めていて、私たちが来てから開けたっていうほうが怪しかったよ。見られてくないことをしていたってことでしょ」


 そういえば、確かに僕らが生徒会室に入ってからカーテンを開けてたっけ。


「……」


 僕は黙って考えてしまう。あの二人が見られたくないことをしていたって……生徒会室でなにをしていたんだ!


「まあ、ああやってカーテンの結び方から鎌をかけて相手をうまく誘導できたのは、あなたという存在がいてくれたからだよ」


「そ、そうかな……」


「あなたは私の窓だ、水間くん」


 改まって、柘榴塚さんはそんな言葉を口にした。


「窓……?」


「あなたからは新鮮な空気が流れてくる。すると、酸素を取り入れた脳みそが、思った以上に回ってくれる」


 柘榴塚さんは自分のこめかみを人差し指でトントンと叩くと、柔らかく微笑んだ。


「だから、思考がクリアになる」


「なんだかよくわからないけど……」


 僕は照れ隠しに頬を掻いた。


「つまり、僕って役に立ててるの?」


「もちろん」


 力強く頷く彼女。その瞳に映る僕は、なんだか少しだけ頼もしく見える。


「あなたは私の最高の助手だよ、水間くん。これからもずっと一緒にいて欲しい」


「あ、うん……分かった。よろしくお願いします……」


 ストレートな言葉に、心臓が大きく跳ねた。

 4月の当初は「話しかけないで」とまで言っていた彼女が、こんなにも素直に感謝を伝えてくれるようになるだなんて……。

 頬を桜色に染める彼女の横顔を見ながら、僕は噛みしめるように思った。


 人間って、変わるものなんだなぁ。


 僕たちの未来は開けている――そう、このときの僕は思っていた。柘榴塚さんは僕に心を許してくれていってるし、僕もそれが嬉しいし。


 それは、これから教室に戻って、食べかけのお弁当を再開するくらい明るい未来を予感させるもので。

 僕らを止めるものなんてこの世には存在しないんだと、そう無邪気に信じられたんだ。



お読みいただきありがとうございます!

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