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解体探偵の日常推理 ~「話しかけるな」と言った解体癖持ち天才少女が、僕を助手にしてデレ散らかすまで~  作者: 卯月八花
【第3章】図書室の王子様

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第36話 再度、待ち伏せ

 荷物を取りに図書室に戻って、その日はそれで帰ったんだけど。


 夜に、菜月からのLINEが波のように押し寄せて来たんだ。

 小6のときに振られて以降まったく送られてきていなかったメッセージが、一気に届けられたようだった。


『図書室から駆けだしていったのはどういうこと?』『王子様のこと捕まえられたの?』『どうなったの?』『大丈夫なの!?』『まさか王子様のこと怖がらせたんじゃないでしょうね?』『ていうかなんで王子様は逃げたわけ?』『直翔、王子様になんかしたの?』というような内容で、届いたと思ったらちょっと間が開いて、またすぐ短文で現れる――といった具合だ。


 まあ、菜月だってあんな光景を見てしまったんだから不安だよね。王子様は脱兎のごとく逃げ出して、それを追って僕まで駆けだしたんだから。

 そして一番重要なことは、菜月は柘榴塚さんの自信溢れる笑顔なんか見てない、ということである。


 だから僕は、最大限菜月に安心感を与えようと思って、『僕の名探偵さんが必ずまた来るっていってる。リビルドするから待ってて』とだけ返信した。

 もちろんそれ以降にも短文で、困惑したようなメッセージが押し寄せて来ていたが(『リビルドってなに?』『それくーちゃんが言ってるの?』『なにがあったの?』)、答えようがなかった。だって、僕もなにも分からないんだから。


 どうして王子様はもういちど来るんだ? しかも律儀に菜月の担当日にって柘榴塚さんは断言してるし。王子様もそんなに菜月にご執心なら、菜月の仕事が終わるのを待って話しかけたらいいのに……というか、あんな逃げかたしたのにまた来るのか?


 というわけで、格好悪いけど追加のメッセージを入れた。


『柘榴塚さんが来るって言ってる。柘榴塚さんは自信があるみたいだよ。柘榴塚さんを信じて待とう?』


 すると、菜月からの波状攻撃は一段落して――やがて落ち着いた短文が来た。


『今度くーちゃんとLINE交換するわ』


 あ、僕じゃ話にならないって判断された。まあ事実だけどさ。


 ということで、彼女たちがLINEを交換したかどうかは知らないけれど、数日経ってまた菜月の図書委員担当日となった。

 その日は僕たちも家庭科クラブがあったんだけど、『外せない用事がある』といって休ませてもらった。


 そうして、放課後の図書室に柘榴塚さんと二人で赴く。

 入ると、カウンターで菜月が僕――を通り越して柘榴塚さんに向かって静かに頷いてみせた。

 それに柘榴塚さんは手を軽くあげて応えている。あれ? なんか二人で通じ合ってる? LINE交換して話し合いが済んでるってこと? そのやり取り、僕にも見せて欲しいんだけど……。

 なんてちょっとだけやるせない思いを抱きつつ、僕たちは配置についた。


 それは、図書室でも奥まったところにある、本棚が重なる場所だった。そのなかでも第2資料室と書かれた扉のすぐ近くの本棚の影で、僕たちは隠れて王子様を待ち構えることにしたんだ。

 僕たちが首を伸ばして様子を窺っているのは、そこから覗ける本棚――学校史が並ぶエリアだ。創立以来の60年ほどの歴史が並んでいる。


 一度逃げられている僕たちだから、王子様に顔を見られるわけにはいかない。それをしたらさすがに逃げられる。だから隠れて待とう――との柘榴塚さんの判断である。待つ場所も柘榴塚さんが決めた。


 しかし、学校史なんか見張ってどうするんだろう。

 なにをもって柘榴塚さんは、学校史なんて面白みのないものを王子様が調べると踏んでいるんだ?


「柘榴塚さん……」


 なんだか無性にそわそわしてきて思わず小さく声をかけると、彼女は僕に向かって、無言で唇の前に指を一本立てた。『黙れ』というジェスチャーだ。その手には、白い綿手袋がはめられている。もう片方の手には、先ほど見張っている本棚から彼女が抜いて借り出し処理をした本が――古そうな『南ヶ丘中学校文芸部 言の葉通信』がある。


 この文集は証拠品だし、念のために指紋は付けないようにしたい、とかいって白手袋をしたんだ。彼女は本気だ。白手袋の柘榴塚さんは、本物の探偵や警察みたいで、なんか妙に格好よかった。


 それから僕たちはしばらく、本棚の影でじっとしていた。猫にでもなった気分だった。物陰に隠れて得物が来たらパクっといく、そのためだけに全身の毛を使って辺りに気を配る……。そうしているうちに、僕の内から疑念は消え去っていた。王子様は必ず来る。だって、柘榴塚さんがそういっているんだから!


 僕の全身の産毛が、微細な空気の動きを感知した。

 思わず今以上に息を潜めて見守っていると、そこに……背の高い男子が現れた。

 本当に、あの王子様がやって来たんだ!



お読みいただきありがとうございます!

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