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なろうラジオ大賞7

年賀状を出したら引っ越すことになった話

「まずいことになった」

斑目修吾は頭を抱えていた。昨日は忘年会でかなりの酒を飲んだ。その勢いで高校時代の元カノ、支倉環奈に年賀状を書き、投函したことを思い出したからだ。


ズキズキと痛む頭。冷静になった朝。

「なんであんなこと書いちゃったんだ。酔った勢いこえぇ」

大学進学で上京した自分と、家業の手伝いを優先して地元で進学した彼女。別れを切り出したのは彼女の方だった。


「遠距離なんて無理」

進学先が決まった後にそう言われて、別れるしかなかった。でも友人によると彼女には親の決めた縁談の相手がいたそうだ。家業の関係での政略結婚。環奈は在学中に結婚、出産。在籍期間ギリギリでなんとか大学は卒業したらしい。


修吾は何人かと付き合ったものの結婚には至らず、そのまま東京で就職。しかしそれも上手くいかず、親のツテで再就職が決まって地元に帰って来た。それを知った高校の同級生に誘われた忘年会で、環奈の今を聞いた。


『未亡人』


旦那が急死したそうだ。二回りくらい年上の旦那だけど仲が良さそうだったと聞いてチリチリとした痛みが修吾を苛んだ。

「なに嫉妬してんだ俺。別れを決めたのは俺だろ」

環奈は『別れたくない、俺と結婚しよう』そう言われたかったんだと思う。お互い現実的なところがあって、そんなドラマには飛び込めなかった。


「だからってなんで年賀状に書いたんだ俺! 他の人から丸見え!」


『新年明けましておめでとう

 昔よく行ったあの店で待ってます

 忘れられなかった』


「バカだ俺。しかもなんで深夜のうちに投函しちゃったんだよ。どうしよう……。そうだ! 問い合わせてみよう」

郵便局に電話。

「ダメか。そうだよな……。アルバイトで潜り込むか? いや、環奈の家の担当になれるわけじゃない……。家の前で待ち伏せ? いや、窃盗じゃんそれ! はぁ」

頭を抱えてゴロゴロと床を転がった。


「いや、まだ手はある。環奈の弟の太樹! いやあいつになんて言うんだよ。あいつ俺が環奈捨てたってめっちゃ怒ってたよな。逆に俺の方が捨てられたんだっつの。あ、配達員なら! いやどこの担当になるか分かんないもんな……。詰んだ」


そのまま正月は明け、修吾は例の店に数日通った。いつ来るのか分からない。そもそも来られても困るが呼び出した以上仕方がない。


店に通って数日。結局彼女は来なかった。複雑な気持ちで家に帰りいつも通りTVを点けると、彼女が映った。


『元夫殺害容疑』


修吾は、震える右手で口元を押さえた。



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