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水と油

作者: うかんるり

芝生に大の字で横になる私を怪訝そうに彼は見ている。

彼は地面に横になるなんて汚いと思っている。

土にはどんな雑菌がいるかわからないと、鞄を地面に置くことすら嫌がる。


この大地と一体感を味わえないなんてもったいない。

どうせ服も体も帰ったら洗うんだから、そんなに目くじら立てなくてもいいじゃん。


彼の足元に猫が寄ってきた。

彼は生きものが苦手だ。

こんな小さな生きものにも固まってしまう。

それなのに懐かれるから不思議だ。

手を猫の口元に差し出すと、指を舐めて小さな声で鳴いた。

餌を催促してくる。

残念だけど、今はあげられるものを何も持っていないんだ。


私と彼は180度違う。

出身地、育った環境、仕事、趣味や好きな映画も笑いのツボも全く共通点がない。

それなのに私たちはほぼ毎日、駅やスーパー、コンビニ、いろんな場所で時間もまばらなのによく会った。

どこか似ているところもあるのかもしれない。


今日は私の母校に遊びに来ている。

ここで友人たちと集まる予定なのだが、その前に私のお気に入りの場所を案内している。

この目立たない場所にある芝生で私はよく昼寝をした。


お気に入りの木も案内した。

私は樹上から夕陽が沈むのを眺めるのが好きだった。

「相変わらず天真爛漫やな」と彼は言う。

天真爛漫なんかじゃない。

自分が一番リラックスできる方法を実行している。

それだけだ。


立ち並ぶ校舎の間にある空き地にも案内した。

ここで友人たちと毎年、焼き芋パーティーをした。

一斗缶に落ち葉や端材、アルミにくるんだ芋を入れて焚火をした。

温かいインスタントのスープをすすりながら、いろんな話をした。

もちろん学校から許可をもらっている。

焼き芋をする日は、朝から大忙しだ。

許可書をもらうためにキャンパス内を駆け回り、落ち葉をかき集めた。


「サボってばっかやな」と彼が笑う。

無駄な時間なんてなかった。

ここでしか味わえない時間を思いっきり楽しんでたんだよ。


私たちは水と油のようにお互いを理解することができない。

理解できないから知りたいと思う。

過去も現在も未来の自分も全部知ってほしい。

水と油も振れば混ざり合うこともできる。

だけど彼はそれをしない。

そのままでいさせてくれる。

ふわふわ浮いてしまう私に寄り添ってくれる。


「さて、行こっか」


遠くで友人がこちらに手を振っている姿が見えた。


結婚報告に行った日の話でした。

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