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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【BL】季節の気持ち:秋

作者: 企画開発部

※BLの物語上に百合が存在している形です。


(※冬の目線で)


 俺は、地元の公園に秋を呼び出していた。

「なんで、ソレも連れて来た?」

 待ち合わせ場所までやってくると、秋と春がすでに先にやって来ていた。

「あーごめん。なんか、ついていくって聞かなくて…」

 俺は、秋だけを呼び出したはずなのに、どうやら春もついてきてしまったらしい。

「私から秋ちゃんを独占しようなんていい度胸ね!!」

 どうやら春は、俺が秋を独り占めでもしようと思っているみたいだ。やれやれだぜ。

「…………。どうでもいいけど、なんで春は秋の上にいるんだ?」

 ベンチに座っている秋の膝の上に春は座って、ぎゅっと秋に抱きついている。

「付き合いたてカップルなんだから、隙間なく一緒にいたいじゃん。うらやましいなら冬だって夏にすればいいでしょ」

「なんで、俺が夏にするんだよ……(どちらかというと夏が俺にしたいんじゃないのか?」

 知らんけど。少なくとも、座りたい時に椅子がなかったとしても、俺が夏の膝に座ろうとか思う時はないと思うけど。

「まー二人がそんなことしてたら、間違いなく私達はスマホに保存するでしょうね」

 秋がクスクスと笑いながら、妄想に花を咲かせようとしている。

「この腐女子軍団め……………(キモっ」

 二人は、BLという漫画をよく読んでいるらしいが、それがどんなものなのかは男子の俺にはよくわかっていない。

「それで、聞きたいことって何?」

 秋が呼び出された本題に入ろうとしたので、俺は秋の隣に腰掛けた。

「ぇ、その…なんで付き合い始めたの?」

 俺が小さな声で秋に問いかけようとすると、横から春が出しゃばってきた。

「そーれーは!私が秋ちゃんにー」

「お前に聞いてない」

 俺は、少しだけ春が苦手だ。小さな頃から一緒に居ても好き嫌いは発生してしまうものなんだろう。

「ま、春に告白されたからよ」

 俺の質問に対して、秋の『それ以上でもそれ以下でもない』と言いたげな回答にそれ以上突っ込んで聞けそうになくて口ごもった。

「………………そうか」

 なんだか、歯切れの悪い俺に秋はニヤニヤしているようだった。

「あ、ほら。春が好きなコーギーが遊んでるよ?」

 公園の芝生には、春が好きだというコーギーを連れた飼い主がフリスビーで愛犬と遊んでいる。

「ほんとだーー!!ちょっと行ってくる!!」

 それを見た春が、秋の膝からおりて、一目散に目の前の犬に向かって全力で走っていった。

 それを見届けた秋が静かに口を開いた。

「…ごめんなさいね。一人でくる予定だったんだけど、それで相談って何?」

「いや……その…………」

 聞きたいことはまとめてからココへ来たはずなのに、なんだか口ごもってしまった。

「同性に告白されて躊躇いはなかったのか?………でしょ?」

「そう」

 俺の言いたいことが分かるのか、秋が俺の聞きたいことを先回りして相談にのってくれる形になった。

「もし、私が仮に『冬と夏が付き合うきっかけを作るために春と付き合う事にしたの』って言ったら、どーする?」

 秋の口から爆弾発言が投下された。

「………そのほうが、俺にはまだ納得できるかもしれないな」

 同性と付き合う事が理解できない俺にとってしてみれば、そこに別の要因があるとするなら、まだ納得できるかもと思ってしまう。

「あらあら、秋はそんな人間じゃない。とか、そーゆーこと言ってくれないね」

 ようやく「嘘よ?」と言いたげに秋が冗談まじりに笑ってみせる。

「お前は、全力で面白くなりそうな未来に全振りするタイプだろ…」

 普段の腐女子な姿を目の当たりにしていると、正直そんな一面もないわけではない気がしてしまったんだ。そもそも腐女子という生き物は、なんで男子と男子をくっつけたがるんだ??と、思わずにはいられない。

「そうでもないわよ。そりゃ二人が付き合ってくれて、毎日目の保養できたら楽しいだろうけどね。そんな事のために、春を利用したら可哀想だもの」

 秋がまともな事を言うから、自分も少しは頭の中を冷静な方へとシフトすることにした。

「(………可哀想か。俺は、どちらかといったら、俺と付き合うことになった夏が一生可哀想な存在にならないかって事の方が心配だけど」

「私達、4人の関係が壊れることを不安に思っているの?」

 黙っている俺に秋が続けざまに質問をしてきた。

「そんなんじゃない。どちらかと言ったら、もし俺が付き合うなら、秋が一番いい」

 これは、学生時代からずっと思っていた事だ。

「いま、遠回しな告白した?」

「してない」

 これは告白ではなく、仮定の話だ。

「そう?」

「俺達って似てるだろ?性格の面で、常に冷静っていうか…お互いちゃんと周りを見て判断できるタイプだろ」

 いつも四人で一緒にいる上で、秋と一緒にいるのは、落ち着いていられるし、困ったことになったことがない。

「まーそうね」

 それは、お互い同じ気持ちなのだろう。

「春と夏は……なんていうか、感情的ってゆーか………どちらかといったら、俺等みたいな奴を振り回すようなタイプじゃん?なのに……」

 俺が、夏と一緒にいて楽しくないわけではないのだが、友達をこえる必要性がどこにあるのかが分からない。

「なのに、なんで付き合ったのか、ね?恋愛って冬が考えているほど理屈じゃないのよ。そうねぇ…冬に分かるように説明しろって言われたら……」

「うん」

 秋が、俺に分かりやすく説明するために空を見上げた。そして、公園で遊ぶ春を見つめながら、瞳を閉じるとようやく口を動かし始めた。

「もし、春が私に告白しないとするでしょ?その場合、私は一生春の一番仲良しな友達以上になれることはないの。その状態で、春が別の女の子に告白するところを想像してみたの」

 春から告白されて付き合ったのに、その想像はいるのか??という疑問で頭がいっぱいになった。

「う………うん?」

 けれど、秋の話の続きを聞くことにした。

「仮定の話だけど、それでも私はそれが嫌だなって感じたのよね」

「うーん?(つまり夏が、俺以外の男に告白したら、俺は嫉妬するのかってコトか?」

 べつに夏がそうしたいなら、すればいいし、特に嫉妬しないだろ……。

「だってね。それは、『親友』として春の事を一番知ってるのは私のはずなのに、いきなり明日から『恋人』として別の人が私の知らない春を知っているとか…私は耐えられないかなと思うのよ」

 女って、どこまでも複雑な生き物だな。と、心の中で思ったけれど口にするのはやめておいた。

「秋にも意外と情熱的な所があるんだな」

 恋愛は、人それぞれだと思うけれど、秋の意外な一面に少し驚いてしまう。

「うーん…あと、冬が悩みそうな事で言うとするなら、この恋が春の気の迷いだとしても私はいいの………」

 長く一緒にいる秋が、俺がぶち当たりそうな壁を想像して仮説を立てる。

「どうして?」

 それは、確かに考えた。夏の恋は恋じゃなくて、ただ一緒にいる時間が長い相手を選んだだけなんじゃないのかって。それは、本当に恋なのかって。ただの気の迷いで、明日から親友をやめなくてはならないほうが面倒かな。と思ってしまう。…こんなに四人でずっと仲良くしてきたのに……。

「もし、別れて友達に戻れなくなっても、たぶんこの世界で春のことを親友としても恋人としても、一番好きでいられる人間は…私だけしかこの世界にいないって断言できてしまうから、かしら。…そうね、ここまでくると恋愛は、ただの自己満足と言うことになってしまうかもしれないわね」

「……(自己満足……」

 秋は、もし春と別れて四人でいられなくなってもいいらしい。それだけ、いつ別れたとしても恋人としての時間や思い出のほうが必要不可欠で大切だと思ったから、付き合うことにしたという事だろうか。

「あまり、冬の聞きたい事への答えになっていないわよね」

 秋の気持ちを一通り聞いたところへ、春が帰ってきた。

「秋ちゃ〜〜〜ん!!なんか、めっちゃ遊んでたら、汗かいて疲れたぁぁ!」

 汗だくの春に向かってタオルを差し出す秋は……正直、恋人というよりオカンにしか見えない。

「あらあら、コーギーの毛が制服にいっぱい……一度、家に帰ってコロコロしないとね」

 それでも、秋の春に向ける目が愛しい者を見つめている表情にこれはこれでアリなのか?という気持ちにさせられる。

「はぁーい!それで、冬との話は終わったのぉ?」

「たぶん??それじゃーね、冬。また、みんなで遊びましょ」

 秋がベンチから立ち上がって、春の隣に立つと春もなんだか嬉しそうにしている。

「冬、ばいばぁーい」

 春が俺に手を振って二人が家に帰っていく。

 公園では、秋の紅葉がハラハラと散る並木道を二人が仲良く手を繋いでいる後ろ姿を見送る。


 もうすぐ、また冬がやってくる…。

 俺達も同じように毎年手を繋いだりするけれど、それはただ向こうが俺の手を温めたいって人懐っこく絡んできているだけのことで、春と秋のように心が繋がっているわけではないから、別にそこに意味なんてものはない。……それは、ホッカイロと機能は同じ。

 でも、それを秋が言っていた理論に当てはめてみると、夏が俺以外の男子に同じことをしているとしたら…………


「…………………それは、嫌かも…」


 だけど、俺にはその気持ちが嫉妬なのかどうかは分からない。秋のように、春を誰かから独占したいと思っているわけではないし。

 ただ言えることがあるとするなら、

「俺以外の人にも、ソレするんだ………」

 って、落胆して終わり。な気がする。誰にでも明るい夏が、俺以外に優しかったところで、そんなことは当たり前な事なのに、想像したらなんだか悲しくなって、寒空の下を一人で泣き出してしまった。それが、何故なのかも分からない。

「……………冬?どうしたの?」

 声がするほうに顔をあげてみると、目の前から夏がやってきいた。

「え?」

 どうやら愛犬の散歩にやってきた夏に遭遇してしまった。どうしたら、こんな偶然が起こりうるんだ。

「冬?!泣いてるの?なんで?どうしたの?」

 夏が、俺の顔を見ていきなりオロオロとし始めた。「お前のせいだっバカ」と、言ってやりたいけれど、それではあまりにも可哀想すぎるし、うまく説明できる気もしなかった。

「…………」

 皆が無愛想と言うわりに、俺は案外の甘えたがりで、見た目にそぐわない自分をいつだって悟られまいと猫をカブってきた。

 けれど、いつだって俺に対して優しい夏に本当の自分を見せることも出来ず、そして……なにより、そんな俺に青春の1ページの全てを捧げようとするコイツに苛立ちさえ覚えてしまうんだ。

「なんでもない…………」

 今日も俺は夏に対して冷たい態度を取ってしまった。公園から一人で帰ろうとする俺の背中のほうで「あぁ、マロンちゃん引っ張らないでぇ!あー冬!!待って!いかないでよ!!」という声が聞こえていたけれど、夏が俺を追いかけてくることはなかった。

 夏に秋ほどの独占欲がないことに、やっぱり俺達は、どこまでいってもただの友達なんだろうなと思いながら家に帰ってきた。


 家に帰ってくると、秋からメールが入っていた。

『まーとことん悩みなさいな。答えは一つじゃないし、自分が納得しなくちゃ意味はないんじゃない?』

 そのメールの終わりに、疲れ果てた春がスヤスヤと眠りながらヨダレを垂らしている画像が一緒に添付されてきた。



「リア充が爆発シロ……………………」

 自分の気持ちが分からなさすぎてイライラしているところに、幸せそうな二人の写真を見ていたら余計にむしゃくしゃしてきた………。


ー季節の紹介ー

春は天真爛漫少女のツインテってイメージで

秋は秀才でおっとりしてそうだけど、しっかり者のお姉さんみたいなイメージです。

夏は純真無垢で誰にでも優しい少年ってイメージで

冬はこじらせている男子ってイメージです。


そういうキャラ設定多めです(苦笑

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