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黄金の魔術  作者: 木山碧人
第五章 ドイツ

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第64話 戦闘開始

挿絵(By みてみん)





 地下世界。黒龍の巣。地下二層。


 狭い洞窟を抜け、開けた場所に出る。


 そこは地面がところどころ崩落した場所。


 本来は、暗くて、よく見えないところのはず。


 だけど、薄っすらと見えた。その原因は奥の魔物。


「――――」


 発光する赤い眼光。それが、周囲を照らす。


 全長は一メートル弱。体は丸く、手足はない。


 その大部分が大きな赤い瞳で占める魔物だった。


 フォルムは目玉付きのジュークボックスって感じ。


 進路から考えて、接敵しなければ、先には進めない。


「あいつはグレア。魔物だ。目を合わせるなよ。能力は――」


 カモラは接敵したことがあるのか、助言しようとする。


 聞いておいて損はない。むしろ、戦いは有利になるだろう。


「そこまで聞ければ十分です。ヘケヘケを頼みますね」


 でも、それは、対等じゃない。


 魔物といえど、フェアに戦いたい。


 そんな気持ちから、助言を遮っていた。


「……騎士道精神か。止めはせんが、勝てよ」


 黒い小動物的な魔物。ヘケヘケを受け取り、カモラは言った。


 プレッシャーがかかる一言だった。だけど、それが不思議と心地いい。


「ここまで来て、負けられません。任せてください」


 懐に手を突っ込み、取り出したのは、自動拳銃。


 長らく使っていなかった、グロッグ17カスタムだった。


 銃口下には、小型のグレネードランチャーが換装されている。


 通常弾は非殺傷用のゴム弾。特殊弾は赤青黄黒の四色分用意がある。


(センスは使えない。だからこそ、地力が問われる……)


 ライターなら問題なくても、センスは別。


 激しい光は、きっと洞窟の外まで漏れてしまう。


 そうなれば、黒龍が反応し、襲ってくる可能性が高い。


 だから、銃を使う。音には鈍いらしいし、威力はそこそこある。


「対戦よろしくお願いします、グレアさん」


 スライドをカチャリと下げ、薬室に銃弾が装填される。


 これで準備は整った。後は、進路からどいてもらうだけだ。


 ◇◇◇


 地下樹海。赤い洋館。二階。銅像の間。


 立っているのは、入り口にある扉近くの壁部分。


 重力の向きが変わり、室内は90度回転したように見えた。


「……プランはあるの?」


 隣に立ち、問いかけてくるのは、サーラ。


 さっきまでの慌てぶりが嘘みたいに冷静だった。


「仏教では通常、浄手である右手に錫杖を持ちます。ですが、あの黄金像は逆。不浄手である左手に持つ。つまり、善行を重んじ、悪行を断じる仏教とは真逆の存在。わたくしが蹴っても反応せず、サーラ様が祈って反応したのが、いい証拠」


 起きた現象に対して、セレーナは考察を語る。


 サーラは腕を組んで、聞き入り、何度も頷いてる。


「……ふむふむ。だから?」


 だけど、まだその先が理解できないって顔をしてる。


 答えはシンプル。足に力を込め、上を向いて、言い放つ。


「悪行を重ねる。さすれば、道は開かれんっ!」


 同時にセレーナは跳躍し、近くの銅像を蹴り上げ、破壊する。


 すると、体がフワッとして、重力の向きが変わっていくのを感じる。


(ほら、やっぱり。これで、重力は元通り――)


 しめしめと笑みを浮かべ、セレーナは思考する。


「……っ!!」


 しかし、降り立つのは天井部分。

 

 それも体はズシンと重たい感じがする。


 体感は二倍。約50キロの重りを背負ってる気分。


(体が重いし、重力は戻ってない……。読み違えた……?)


 どう考えても悪化していた。


 失敗すれば、徐々に罰が重くなる。


 支えきれなくなって、いずれ、圧死する。


 そんな不幸な未来が、今の一手で見えてしまう。


「しんどそうだけど、大丈夫? このままじゃまずいんじゃない?」


 そこに、入り口付近に立つ、サーラが声をかけてくる。


 重力は据え置き。サーラが90度で、こっちが180度となる。


 悪行でギミックが動くのは、間違いない。だけど、正誤が不明。


 銅像を壊すのが合ってるかもしれないし、間違ってるかもしれない。 


「……少し、考えます。今は話しかけないでください」


 そう簡単には、攻略させてくれなさそうだった。


 ◇◇◇

 

 地下樹海。赤い洋館。三階。主の間。


「艱難辛苦の果てにこそ、黄金に至るはず」


 巨大釜の水面に映る映像を見て、ニコラは語る。


 観察すべきは、人の外見や発言ではなく、中身と行動。


 黄金錬成に至るための鍵は、人の精神性にあると信じていた。


「死ぬギリギリまで苦しんでもらうから」


 瞳は黒く濁りながらも、志だけは前を向いている。


 身の程は弁えてる。自分じゃ至れない領域だと知っていた。


 だから、他人に見出すしかない。それが、例え、間違いだとしても。



魔物のフォルム描写を一行追加しました。


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