第39話 足掛かり
『ホフブロイハウス』一階。テーブル席。
周りにいる客からは、ざわざわとした声が聞こえる。
そんな客たちをかき分けて現れたのは、ジェノとアンナだった。
「……三階の計数は0。以上が今回の結果です」
テーブル席にたどり着いたジェノは報告する。
手には計数器を持っていて、数字は0を示している。
顔は青ざめていて、右拳は腫れ上がっているように見えた。
(期待通り、いえ、これは、期待以上の成果……)
その姿を、セレーナはただ見つめていた。
褒め称えたいところだけど、今はできない。
だって、結果はまだ確定していないんだから。
「アンナ……。今の発言に、間違いはないか?」
場には、緊張感が張り詰めている。
そんな中、リアは侍女のアンナに確認を取る。
「間違いございません。敵の道具使用により、三階の床は分解。二階部分と繋がってしまったため、計数不能。よって、計数は0。予想を的中させた相手方の勝利となり、一、二回目が引き分けだったリア様の敗北は、確定しました」
自らの肩を抱き、悔しがりながらも、アンナは務めを果たす。
その手には、0を示す計数器が握られ、敵味方の報告が出揃った形。
これでようやく決まった。短いようで長く感じた、人数えゲームの決着。
「吾輩の負けか……」
肩を落としたリアは、敗北を甘んじて受け入れている。
向こうが条件を決めた以上、抗議する展開も考えにくい。
「では、約束通り、魔術結社『イリーガル』の情報提供にご協力願えますか?」
だからこそ、堂々と条件を突き出してやった。
勝者の特権。次のステージに進むための足掛かり。
魔術結社『イリーガル』の打倒。そのための一歩だった。
◇◇◇
ドイツ。ミュンヘン。???。
薄暗い部屋には、三人の人影があった。
中央に円卓があり、それぞれが席に腰かけている。
「ヒッヒッヒ。どうやら、リアがよそ者の手に落ちたようだねぇ」
最初に声を出したのは、しゃがれた声の老婆。
紫色のとんがり帽子に紫色のローブ服を着ている。
水晶玉に映る『ホフブロイハウス』を見て、語っている。
「だから、劣悪種は信用ならないのよ。入団の時に弾いていれば」
次に声を出したのは、金髪を長い三つ編みにした少女。
黒のロングドレスに、赤い星型の髪留めを身につけている。
手には二本のフラスコを持っていて、液体を混ぜ合わせていた。
「運命の輪の正位置。状況の好転の意。我々の計画に支障はない」
タロットカードをめくるのは、長身の男。
灰色のローブ服に、白黒の仮面を被り、声は低い。
そんな男の言葉により、集会は密かに終わりを迎えていった。




