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ミニスカート

作者: 後戸みどり。

鬱になった。


私は両親にも友達にも恵まれている普通のJKだった。

中学3年生の夏、母親の前で担任の先生に

「行ける高校がありません」

と告げられた日はさすがに笑った。

慌てて塾に通わせてくれた両親には感謝している。私も期待に応えるように偏差値を20上げた。私も頑張ったけど、1番頑張ってくれていたのは母親だったと思う。有難い。

行ける高校が15以上増えた。とある都立に行くことにした。

落ちた。

1番行きたくない高校だったけど、なんだかんだ楽しかった。毎日バカやって、ある程度悪さもして。たまに頑張って定期テストで学年1位をとったこともある。部活にも入った。バンドを組んだ。中学生の頃から独学でギターをやっていたこともあってとても楽しかった。青春だった。

友人関係も上手くいっていた。何もかも上手く行きすぎていた。高時給のバイトを見つけてそこら辺のJKよりお金もあった。

いつも通り学校に行って、あれは英語の授業中だったかな。

突拍子もなく涙が出てくる。なんだろうこの感じは。初めてだった。

自分でもどうしたらいいか分からなくなってトイレに逃げた。わんわん泣いた。あんなに泣いたのは幼稚園ぶりだった。たまに落ち着くと周りの教室で授業をしている先生の声が聞こえる。すごく孤独だった。荷物も全て学校に置いたまま家に帰った。専業主婦で家にいた母は、何も言わずに抱きしめてくれた。一緒に泣いてくれた。

「迎えに行ったのに」

「全部置いてきちゃったの」

「そっか」

理解がある母親でよかった。そう思った。

その日から母親が狂った。

小さい時から明るかった娘が突然手ぶらで泣きながら帰ってきて、何もしたくないと引きこもり出したのだ。狂ってもおかしくないと今なら思う。

1週間くらい引きこもった。生きていく上で当たり前のことが出来なくなった。ご飯もトイレもお風呂も全部出来なくなった。大好きだったSNSも全部消した。

ある日母親に無理やり学校に連れていかれた。相談室を締め切って心理カウンセラーの人と話した。言葉が喉につまって上手く話せなかった。初めての感覚だった。

周りの大人たちから毎日毎日

「なんでそうなったの?」

「誰にも言わないから理由を教えて?」

と言われることがストレスだった。

私にも分からなかった。1番難しかった。

どんな時も自分を追い詰めた。すごく苦しかった。でも理由が分からないなら、ただの甘えだと思った。私が悪いと思った。

ある日病院に行かないかと父親から言われた。意味がわからなかった。大好きな父親にお前は病気だ、と言われてたくさん苦しくなった。

鬱だった。

薬は、飲まない選択をした。すごく楽になった。ただの甘えじゃなかったんだ。私は病気だったんだ。仕方ないね。って逃げれることがすごく嬉しかった。

3年も引きこもった。

久しぶりに化粧をした。

3年も経てば自分の顔も変わっていて化粧をするのが楽しかった。伸びきっていた前髪も切って、外に出てみたりもした。真っ白になった不健康な細い私の指に似合うリングを探しに行った。今はもう入らないけど大事に引き出しにしまっている。

もうこんな時間だ。出勤です。行ってきます。

ありがとうございます。

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