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美人に転生って言ったよね!  作者: バーチ君
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新しい生活の始まり

 学校の帰りに私は友人の茜と食事をした後帰路に着いた。そこで、暴漢に襲われ死んだ。そして死後の世界に言った私は、そこに現れた女性といろいろ話をした結果、魔法のある世界へ転生することになった。転生する際、『美人に生まれ変わりたい』とお願いしたのだった。


 再び目覚めると、目の前には若くてきれいな金髪の女性がいた。



「チャーリー! チャーリー! 気が付いたわよ! ルカちゃんが目を覚ましたわ!」


“バタバタバタ…バタン”



 ものすごい足音だ。寝ころびながら足音の方を見ると若い男性が入ってきた。やはり金髪のイケメンだ。



「ルカ! ルカ! 目を覚ましたか!」



 私に覆いかぶさるようにして、青い瞳のイケメン男性が声をかけてきた。



「お前は高熱を出して3日も寝込んでたんだぞ! このまま死ぬんじゃないかと母さんとひやひやしていたんだ! でも、よかった~! 本当に良かった!」



 どうやら、私はこの2人の子どもとして生まれ変わったようだ。でも、何も記憶がない。自分の名前も、年齢も、何も覚えていない。



“どうしよう~。名前も何も覚えてないわ!”



 もしかしたら、私がこの子の身体を乗っ取ってしまったのかもしれない。そうなると、下手なことは喋れない。しばらくは何も話さないようにしようと思った。すると、私が何も話さないことを不思議に思ったのか、父親と母親らしき人達が心配そうに聞いてきた。



「どうしたの? どうして何も話さないの?」


「メアリー! もしかしたら、高熱の影響で声が出ないのかもしれないな。ちょっと様子を見ようか。」


「そうね。私、何か食べるものを用意してくるわ!」


「汗もかいたし、喉も渇いているだろう! 何か飲み物も持って来てやるな!」



 2人が部屋から出て行った。私は自分の置かれている状況を慎重に調べることにした。部屋の中を見渡すと、どうやら西洋風の作りになっている。布団もベッドも地球にいた時と変わらない。だが、家具もベッドもすべてが木製だ。自分の身体を確認するとものすごく可愛い手をしている。やはり子どものようだ。何歳なんだろう。すると、急にトイレに行きたくなった。私はベッドから降りて、屋敷内をうろうろしながらトイレを探した。下からは両親の話し声が聞こえてくる。



“結構大きな家ね。お金持ちなのかしら。”



 部屋の数も多い。いくつか扉を開けるとトイレがあった。見慣れた洋式トイレだ。私は用を足そうとズボンを下ろして便器に座った。次の瞬間、驚きのあまり大声を出してしまった。



「キャ————!!!」



 私の悲鳴を聞いて、父親と母親が慌ててやってきた。



「どうした? 何かあったのか?」



 私は首を振って否定した。驚いた理由は簡単だ。地球にいた時にはなかったものがついていたのだ。そう。美人に生まれ変わりたいと願ったはずなのに、男に生まれ変わっていたのだ。私は心の中で激しく動揺した。



“どうして? どうしてよ! 美人に生まれ変わらせてくれるって言ったじゃない! これからどうすればいいのよ!”



心配した父親が私を抱っこしてベッドまで連れて行ってくれた。そして放心状態の私を心配して覗き込みながら言った。



「本当に大丈夫なのか? 食堂でご飯の用意をしているから、何かあったら呼べよ。あっ、そうか! ルカは声が出ないんだったな。ならこのベルを鳴らせ! いいな!」



 冷静を取り戻そうと頭の中を整理していると、母親が食べ物と水を持ってきてくれた。でも、あまりのショックに食欲がない。少しだけ食べて後は残してしまった。



「あんなに食いしん坊だったルカが、これだけしか食べないの? やっぱり心配ね。」



 どうやら、父親も母親もルカという少年を相当愛していたようだ。私は何か申し訳ない気持ちになった。ベッドに寝ころんで今後のことを考えていると、部屋に小学生ぐらいの女の子がやってきた。かなり可愛い顔をしている。まるでお人形さんのようだ。



「ルカ! 大丈夫なの? 声が出なくなっちゃったんだって?」



 私は静かに頷いた。すると、女の子は心配そうに私の顔を覗き込んできた。その顔がものすごく可愛い。そうなると、自分の容姿が気になってきた。父親も母親も美男美女だ。私が壁にかけてある鏡を指さすと、女の子が壁から鏡を外して持ってきてくれた。恐る恐る鏡を覗き込むと、鏡に映った自分の姿はまるで天使のように可愛かった。



“まさか、これが私? すごく奇麗! でも、男なんだよね。何でよ!”



 だんだん腹が立ってきた。



“こんなにきれいな顔にしてくれたなら、どうして女にしてくれなかったのよ!”



 翌日、ベッドから起きることになった。でも、家の中のことも父親と母親が何者なのかも知らない。昨日来た女の子の名前も姉なのか妹なのかもわからない。これからどうしようかと途方に暮れていると、母親が私の異変に気付いたようだ。



「ルカちゃん! あなた、もしかして何もわからないの?」



“どうしよう。このままじゃまずいわよね。なにもわからないのにどうすればいいのよ!”



 私が何も返事しないでいると、父親が心配そうに母親に話しかけた。



「メアリー! もしかしたら、この子は高熱で記憶をなくしたんじゃないのか?」


「そ、そんな~!」



 母親が顔に手を当てて泣き始めた。そして、優しく私を抱きしめてきた。



「心配しなくてもいいのよ。私があなたを守ってあげるわ。きっと、あなたの記憶も戻るから。」



 昨日部屋に来た女の子も泣きながら私に抱き着いてきた。



「ルカ! お姉ちゃんだよ! 分からないの? エリス姉様って甘えてくれたじゃない! 思い出してよ!」



 私は勇気を振り絞って声を出した。



「エ、エリス姉様」



 すると、私を抱きしめていた母親が驚いたように私の顔を見た。



「ルカちゃん! あなた、今、喋ったわよね! 声が出るようになったのね!」


「ルカ! なら、俺のことも呼んでくれるか? 以前のようにチャーリー父様って!」


「チャーリー父様。メアリー母様。」


「ルカちゃん! 良かったわ! 声が出るようになって、本当に良かったわ! これなら、記憶もすぐに戻るわね!」



 この家は2階建てのようだ。私の部屋は2階の一番奥だった。エリス姉様に手を引かれて、私は1階の食堂まで行った。そこには、使用人らしき人達がいた。



「坊ちゃま。元気になったようで何よりです。」



 執事のような服を着た男性が代表して挨拶をしてきた。すると、父様が使用人達に言った。



「みんな、ありがとう。お陰でルカが元気になったよ。ただ、ルカは病気の影響で記憶をなくしているんだ。そのつもりでいてやってくれ。」


「はい。畏まりました。旦那様。」



 食事を食べている最中、私に思い出させようと姉様がいろいろと教えてくれた。この家はスチュワート王国の男爵家であること。家族はチャーリー父様とメアリー母様とエリス姉様と私の4人であること。父様は30歳で母様は28歳。姉様は7歳で私はもうすぐ5歳になるらしい。



“私は男に生まれ変わったんだから、『私』のままじゃおかしいわよね。これからは『僕』っていうしかなさそうね。”



「父様。母様。姉様。ありがとう。僕、記憶が戻るように頑張る。」


「無理をするなよ。」


「そうよ。ゆっくりでいいんだからね。」


「うん。」


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