序文
お手に取っていただきありがとうございます
お気づきの人もいらっしゃるかもしれませんが、春の推理企画に間に合わなかった作品です
どうか鈍間な私を嘲笑してください
序文、本文の2構成から成りますが序文を読まずとも問題はないので飛ばしてもらっても結構です
ただ、読んでいただいたほうが最後が面白いと思います
また、本文を読み終わってからでも、もし気が向いたら読んでみてください
本文に入る前におよそ知ることのない妖怪というモノの特徴、性質についていくつか羅列しておく事とした
どうか参考に目を通して頂けたら幸いだ
一、妖怪とは、人、動物、植物、器物、自然物の5種、及びこれらのうちのいずれか一つに類似した本体の分からないものである
この5種類に類似したもの、というのはつまりこの5種類に正確に当てはまらないものである
ー、妖怪とは人智を越えるモノであり、他生物の程度を越す、または他生物に不可能な数々の能力を持っていたり持っていなかったりする
体を見え隠しできる、本体と異なる姿に変化する、恐ろしい怪力の持ち主であるなど例に暇ない
また知能において、人間を上回るモノとして天狗は代表格である
その他にも、覚という妖怪は人の心の内を察知する事ができるという
ー、前述した妖怪の変化能力には妖怪の個々によって程度がある
大きく分けると以降の3つのうちに分類される
・巧妙に化け、化けた対象に適した行動をするもの
・巧妙に化けてはいるが、行為やその様相の一部などにおかしな点があって妖怪変化である事が明かされるもの
・見た目も行動もどうにもおかしなもの、例として骸骨に化けて踊るなど
ーー以上においては、江馬務氏著の『日本妖怪変化史』を参考にさせてもらった
最後に妖怪について私が抱いている一つの法則として、妖怪とは妖怪としてあるモノで、それは幽霊とはまた一線を画していると私は心得る
と、言うのも幽霊も妖怪も人には出来ぬ術を使うが、幽霊はモノ(者、獣、物)の怨念や執念と言った感情により行動する
一方、他に害を成すことが大抵の妖怪の方針であり、それが彼らの理であることが多い
対象を恨みによって選択し、行為を制限するのはそれは妖怪ではない、霊の仕業だ
妖怪とはその性質により化かす対象の条件はあるが、基本、無差別に人に悪さする存在であり、彼らに倫理を説くというのは、無意味だ