第59話 隔離解除
~~~ 隔離された町 ~~~~~~~
二条家の小部屋。
武蔵が受け持つ患者が今朝亡くなった。
残りの生存者は4名となる。
武蔵は、生存者の容態を確認するも
全員の呼吸は小さい。
かなり息苦しいようだ。
要するに状態が悪いということである。
そう4人とも。
自分はというと悪化はしてない。
では改善したのかというと、
依然赤い斑点は消えていない。
悪化も良好もしてないのだ。
これらを総合すると、やはりあの偽医者の
薬には効果がないと判断せざるおえない。
あの医者を信じていたら自分も含め皆
死んでしまうと武蔵は結論付けた。
麻疹は妖怪の仕業だ。
なので効果のある薬はないと学んだのである。
それは果たして本当なのだろうか。
偽医者の薬は少なからず効果があった
ように思える。
妖怪の仕業であっても有効な薬があるのでは
と悔しいが偽医者から得たような気がした。
もし麻疹に対する治療方法が見つかれば
大発見だ。
そう考えたら居ても立っても居られない。
武蔵は、他の漢方で効くものがないか
試みることとした。
薬というものは直ぐに効くものではない。
看病し様子をみる必要がある。
時間が経つのもあっと言う間だ。
いつのまにか夜となっていた。
そして、むなしくも1人の死亡を確認する。
その者は、偽医者の薬を飲んでいない
最後の1人であった。
皮肉にも偽医者の薬を飲んだ3名が
残ったことになる。
だが方針は変わらない。
偽医者よりも効果のある漢方を探し出す
と意気込むことに。
次の朝。
ついに来てしまった。
残り3名、全員が明け方に亡くなっていた。
武蔵の思いは、やれるだけのことはやった
という感じでいる。
結果、麻疹の新治療法が見つからなかった。
患者を実験に使い成果が出せなかった
ことに心残りとなった。
ー-1週間後--
武蔵は、全身から赤い斑点が完全に消えた
のを再確認する。
奇跡の回復に、自分は選ばれし幸運の持ち主
であったのだと興奮を覚える。
だが、大広間の風景を見て、武蔵の感動は
動揺へと変わる。
大広間の病人もまた、みな赤い斑点が消失して
いたのだから。
武蔵は麻疹という病の教えを改めて思い返す。
麻疹に掛かれば、治療法はなく、
ほとんど者が死に至るというものだ。
助かるか否かは運であると。
では大広間にいる500名の患者も皆
幸運だったのだろうか?
大部屋で亡くなられたのは1名のみ。
武蔵の推測する。
麻疹には強さのランクがあり、今回は弱い
ものだったのではないかと。
武蔵が思考してる中、別の場所でも異変が
起こっている。
地域を隔離していた防壁の一ヵ所が
なんと取り壊されている。
役人による100名から構成される視察隊が
感染地域内へ入るからだそうだ。
それは、隔離地域内にいる一部の店主達が、
麻疹はこの世から消え去ったから隔離を
解いてくれと主張したのが発端のようだ。
病人が消え去ったということで、
誠であるか確認するために、
視察隊が組まれたということになる。
確認方法は簡単だ。
顔と手足に赤い斑点の者がいるのか否かだ。
そして、度距離を取って病の判定ができる
ため、視察隊も気楽に入って来たのである。
視察隊は、病人が集められてるという
5か所から確認が開始された。
そして、その場所については
麻疹の者がいないお墨付きを頂いた。
次に役人たちは、家を1件1件と回り、
病人の存在を確認する。
それは、まる2日に渡って確認され
病を持つ者が1人もいないことが確定された。
感染地域は安全であると決断が下り、
ついに隔離が解かることとなる。
長い長い2週間は終わりを告げた。
住民達は隔離前の日常に戻れると喜んでいた。
それとは裏腹に、直に喜べない者達もいた。
隔離内に居た薬院の連中である。
というのも、5か所の仮設医療場所のうち、
3か所の病人はほとんど亡くなり、
数名しか回復できなかった。
対して、風雷が担当した2か所は、
死亡者の合計が3名と、逆にほとんどの者が
回復したという事実が判明したのである。
当然、会話に参加してる武蔵も驚きを
隠せない。
今回発生した麻疹は力が弱く、
他の仮設医療場所でも死者は数名程度しか
出ていないと思い込んでいたら。
こうなると、薬院は無能であり、
風雷の治療は正しかったということになる。
このことが世間に知られれば、
薬院の威信に関わるどころか、
存続が脅かされる事態となりそうだ。
ただでさえ、風雷は偽医者で、彼の治療では
治らないと言いふらしてるのだから。
敵対する2つ薬院、元正院と長寿院で
珍しく合同会議が開かれ、
風雷の対処方法について議論が交わさることとなった。
そのころ風雷はというと、元患者や知人の家を
回っていた。
風雷の心情としては、身の危険を感じ一刻も早く
この国を出て行きたいところである。
最後に、町の皆さんとお別れをしたい気持ちもある。
そこで、仲良くして頂いた皆さんの家を
回っているということだ。
お別れと言っても、心の中でつぶやいてるだけで、
この国を出ていくだとか、さよならと伝えている
訳ではない。
風雷「お疲れ!」
和江「どうしたさ。急に?」
自宅への帰り道、米屋の前で作業してる
和江さんを見つけ声を掛けた。
風雷「今日くらい、休んだらどうだ?」
和江「倉が空になるさね。
仕入れにいかんと店が潰れる。」
風雷「隔離期間中、荒稼ぎしたのだろう?
数日店を閉めてても問題なかろう。」
和江「人聞き悪いこと言わんとくれ。
変な噂立つがね。」
風雷「特に用事はない。
診療所へ戻るところだ。」
和江「そうかい。
なら内の米持って行きな!」
風雷「気持ちは有難い。
自炊はしてないから下げてくれ。」
和江「なら後でおにぎり持って行くさね。」
風雷「済まぬ。では邪魔した。」
和江さんと店の前で他愛もない立ち話しを
して、風雷は歩み出す。
そして診療所に近づくと、店の前に
5人の人影が見る。
近づいくと、役人が来てるようだ。
悪い予感しかしないが、逆戻りして
逃げたりでもしたら印象が悪い。
風雷はそのまま店の前まで進むことに。
役人「お主!医者の風雷か?」
風雷「左様だ。何用か?」
役人「医学の知識がなく医者を名乗り
適当な治療をして、銭を騙し
取っているという容疑が掛けられた。
事情を聴きたい。
奉行所まで来てくれないか?」
さてこれは困った。
風雷的には、この件が、いつか来る
だろうとは感じていた。
まさか、明日国外へ出発しようとしてた
矢先に運悪く今日来るとは。
一瞬ではあるが、逃げきれるか、
この場の全員倒すか、
もし同行すればここへ戻ってこれるか、
など思考を回転させ。
風雷「なるほど。
ではその疑いを晴らすとしよう。」
風雷は同行することを選択した。