第4話 能力発揮
■呪禁師■
風雷⇒主人公。バンパイアであり医者でもある
優紀乃⇒音夜の妹。風雷が捜索中
■桐生家■
沙樹⇒ヒロイン。桐生家頭首の娘
利玄⇒桐生家の用心棒
~~~ 桐生家 ~~~~~~~~~~
♪チュンチュン
朝だ。障子越しだが日差しが眩しい。
今日は天気がいい。
風雷は昨夜のことを思い返す。
「疲れている」と言い無理言って、
宴をそうそうと切り上げたのだ。
風雷は基本人見知りである。
楽しくもない会話を楽しそうにするのが苦手だ。
ここの女中は仕事ができる。
そんな形で宴会の席から出たというのに
用意された部屋へ付くと既に布団が敷いてあった。
ありがたいことだ。
寝るには早い時間ではあったが、旅の疲れからか。
直ぐ寝てしまい。今に至る。
毒の件はというと、もし犯人が存在した場合、
騒ぎになると探し出し辛くなるとのことで、
頭首から内密にしてほしいと申入れがあった。
特に反対する理由もないので風雷は同意することに。
犯人捜しは利玄が行うのだという。
今は、空腹だが体調はすこぶる良い。
天気も良い事だし、風雷は外に出ることにする。
庭へ出るとほうきで落ち葉を掃いている者が居る。
沙樹「おはようございます。風雷様。」(^o^ )
風雷「様はいらん。」
沙樹「わたしくにとって、お医者様は神様です。
風雷様と呼ばせてください。」(^o^ )
風雷「勝手にしろ。」
風雷「朝早くから掃除か。感服する。」( ..)
沙樹「大げさです。
誰しもがおこなっていることです。」
風雷「いやいや。
誰にでも出来ることではないぞ。」( ^^)
沙樹「褒めて頂き、嬉しいです。」(^^ )
風雷(くっそ、その笑顔。優紀乃としか思えん。)
沙樹「お腹の具合はすっかり良くなりました。」
風雷は唾をゴクリと飲み込む。
風雷(空腹だ。)
風雷「確かに!診察は不要のようだ。」
沙樹「一応、診て頂く事は可能でしょうか?
安心したいです。
父上にも報告しなければなりませんし。」
風雷「そう言えば、約束だったな。」
2人は縁側に腰かける。
風雷「腕出してみろ。
噛みつくが、痛くないからご安心したまえ。」
沙樹「はい。」(^o^ )
風雷は大きな口を開けかぶりつく。
筋肉質でない女性の血は最高だ。
本人は気づいてないが、150mlほど
飲み干す。
風雷に取っては少量だ。正直、物足りない。
だが、飲み過ぎると理性が利かなくなる。
沙樹「このような診察、初めて拝見しました。」
風雷「だろうな。全国でも私だけだろう。」
風雷「毒は完全に消えてる。
消化器系も正常だ。
何の心配もいらん。」
沙樹「お医者様がそう言って頂けると
安心します。
金1両で足りますでしょうか?」
風雷「滅相もない、納めてくれ。
食事に、宿、衣服まで恩恵を受け
これ以上恥をかかせるな。」( >_<)
沙樹「では、せめて朝食をご馳走させてください。
これは譲れません。」(^o^ )
風雷(満面の笑顔だ。
もう朝食は済ませたとは言えんな。)
風雷「ちょうど、腹が空いてたところだ。
ご馳走となろう。」
~~~ 食事処 ~~~~~~~~~~
屋敷の隣にお食事処がある。
桐生が経営する飲食店だ。
お店と屋敷は内部ではでつながっており、
屋敷の料理人や女中もこの店を兼任で
お手伝いしている仕組みのようだ。
店内は30人ほど座れ、広い。
沙樹「ご注文は?」(^^ )
お品書きを見る。
店を開けたばかりのようで、客は風雷しかいない。
風雷「仲居もするのか?」
沙樹「いつもはしません。
風雷様がおりますので特別です。」(^^ )
風雷「楽しい方だ。」( ^^)
風雷はいつしか優紀乃と会話しているような
錯覚に陥る。
風雷「おすすめはなんだ?」
沙樹「蕎麦が1番人気です。」
風雷「では、その1番とやらを頂くとしよう。」
沙樹「承りました。」m(_ _)m
一人に年配者が店に入って来た。
沙樹「一爺、腕どうなされました?」
ー重「大したこねぇ。ちょっとひねっただけだ。」
近所に住む大工のー重がやって来た。
左肘にタオルを巻いてる。
沙樹「ちょうどよかった。
こちらにお医者様がおられます。
診てもらいましょう。」
風雷「それ、痛そうだな。
タオルを取って傷口を見せるがいい。」
ー重は風雷の真横の席へと腰かける。
ー重「断る。医者なんぞに見せたら一生治らん。」
沙樹「こちらのお医者様は普通とは違うんです。」
ー重「普通じゃない?意味わからん。
ますますそんな奴は遠慮する。」
男1「よう、ねえちゃん。
こっちも注文、頼むわ。」(-- )
柄の悪い3人組の男が、店内に入って
席に着くなり沙樹に大声で叫ぶ。
風雷「荒くれ者か?」
ー重「ありやぁ、鮫坂組の者だ。」
風雷は小声で、ー重に問う。
ー重は、連中の小指に特徴的な入れ墨があるのを
確認し、どこの連中か特定した。
風雷「鮫坂組?」
ー重「あぁ、隣町のいかつい連中どもだ。
毎日のように桐生へ嫌がらせに来とる。」
男2「いつ来てもカビ臭え店だな。ここは。」
沙樹「お待たせいたしました。」
沙樹が3人の側につき注文を取る。
男1「頭の娘じゃねぇか。
あんた、働くんか?
はははは。ついに桐生もおしまいか?
1両出してやっからオレ様と遊ぼうや。
そっちの方が金になるだろう。」
このやり取りを見ていた風雷は、
険しい顔へと豹変する。
楽しいひと時をじゃまされたあげく、優紀乃が
荒くれ者どもにいたぶられているではないか。
風雷「おい、貴様ら!」
ー重「おまえら!」
風雷とー重が同時に立ち上がり3人へ威嚇する。
ー重「客じゃないなら帰れ!目障りだ。」
男1「うるせい!じじい。口出すんじゃねぇ。」
沙樹「おやめください。わたくしが悪いのです。」
男1「だってさ。」(^^ )
風雷は怒りのあまり男1の元へ駆けつける。
すると男3がその行く手を塞いだ。
風雷はそいつをにらみつける。
風雷「どけ!」(--#)
男3「はい?聞こえね~。」
風雷「バカと会話しても無駄だな。」
この一言で、男3は怒りで風雷の顔面に
右フックを入れる。
・・・
その場の全員が凍り着く。
風雷は拳をかわすことなく、
わざと顔面にまともに受けてみせたのだ。
本来なら脳震盪で倒れてもおかしくない。
だが風雷は倒れないどころか微動だにせず
平然と立ち尽くしたままだった。
大木に殴ったかのような印象である。
男3「痛てて。石かお前!」(;--)
風雷は無言で、男3の右手首を掴み、ひねる。
♪パキ
男3「あぁぁぁぁ~~~~」( >_<)
沙樹「お客様。大丈夫ですか!」(o_o")
男3は倒れうずくまる。
その場の全員が彼の腕が折れたことを認識する。
それは見たこともない曲がり方をしていたからだ。
荒くれ者は恐怖する。
顔面を殴られて倒れず、いとも簡単に骨を折って
見せたのだから。
バカ力を超えている。
風雷は男1と目を合わせる。
風雷「で?次は誰だ!」
男1「すまない。悪ふざけが過ぎた。この通りだ。」
風雷「おれじゃなく。こちらに謝罪しろ!。」
沙樹に謝れと目の動きで指示する。
沙樹「風雷様、こちらの御方の腕が大変です。
どうか診てあげてください。」(i_i )
男1「お嬢さん、大変失礼なことをした。
申し訳ない。そいつは大丈夫だ。」
男1と男2が肩を貸し、男3を担ぎ上げる。
男3「あぁぁぁぁ」
男1「今日は帰らせていただく。
改めて謝罪に伺う。」( ..)
ー重「二度と来るな!」(#--)
風雷「謝罪などいらん。
目障りだ。次来たら命はないと思え。」
3人の男は店を出て行った。
沙樹「あぁぁ。」(T_T)
沙樹はその場に泣き崩れる。
風雷「沙樹殿。すまない。
怖い思いをさせてしまった。」(.. )
ー重「お嬢さん、あなたは何も悪くない。」
利玄「何の騒ぎだ!」(#--)
女中が、騒ぎを見て用心棒を呼んで来たようだ。
ー重が利玄に事の成り行きを説明する。
同時に、女中らは沙樹をお部屋へと連れていった。
利玄は、状況を理解し、ー重と風雷にお礼を言うと
沙樹の元へと行ってしまった。
ー重「お主、見所ある。医者とは思えん。」
風雷「つい、カッとなってしまった。」
ー重「この腕じゃなければワシが代わり
殴っとったところじゃ。感謝致す。」
風雷「いやいや、沙樹殿には悪いことをした。」
ー重「お主を気に入った。
この腕を診てくれ?」(--;)
風雷「おかしなおっさんだ。
この騒動で俺を医者と認めたか?」( ^^)
ー重「医師の実力なんさ、どうでもえぇ。
お前さんを気に入っただけじゃ。
理由がそれではいかんのか?」
風雷「ならば医師としても認めさせよう。
医療道具を持って、直接お宅へ伺うとしよう。」
ー重「おぉそうか。ここで治療は迷惑だ。
すぐそこの長屋に住んどる。
お願いしてもいいか?
ー重はどこだと周辺に聞けば
教えてくれるだろう。」
風雷「分かった。すぐに伺としよう。」
結局、風雷は朝食を取らずに店を出ていった。
自分の部屋へそそくさと戻ると、医療道具を持って
逃げるようにして屋敷を出て行く。
沙樹に会うのは何となく気まずかったからだ。