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第14話 大事件

~~~ 診療所 ~~~~~

時は卯(う)一(ひと)つ時(AM5時)。


風雷はいつもより早く目覚める。

今日は気分がいい。

これは昨日2人の患者から

血を採取出来たからだろう。


夜遅くまで着物の内側に作ったポケットへ、

刃渡り7cmの短剣を5つをしまい込む。

この短剣は、昨日治療した鍛冶屋の

親方かた貰ったものだ。


治療のあと、工場に戻れるほどまでに

体調が回復できたそうだ。

一瞬で改善できたことから、

親方はすこぶる高機嫌となった。

そもそも店内の物の価値が分かってる

時点で風雷がお気に入りだ。

そこで親方は、店内の物をプレゼント

させて欲しいということで、

主に忍者が用いる武器の一つ

を遠慮なく選択した。

短剣はこのような経緯で入手しものだ。


今までは、戦うこともなく平穏な日々を

過ごして来た風雷だが、ここ最近、

野蛮な連中に絡まれることが多くなってきた。

風雷1人ならば、丸腰で戦っても

何ら問題はない。

だが側に沙樹が居るとなると、

そうはいかない。

鍛冶屋へ行ったのをきっかけに武器を

隠し持つことにしたのである。


しかし、除霊が成功して良かった。

死霊が居るかは半信半疑だったし、

除霊方法も正しいかは自信がなかった。

結果、うまくいって良かったと言える。


これからは除霊も考慮に入れ、

宿敵である陰陽師(おんみょうじ)から秘策を盗む

必要があると考えてる。


今日は少々早いが、することもないので

早めの飯とするかと食事処へ出かけることに。


~~~ 食事処 ~~~~~

ー重「旦那!こっちこっち。」

風雷「いつぞやの爺さんか。」


風雷が店内へ入ると、客の中にー重が居た。

長屋に住む大工の爺さんだ。

風雷を見かけ、近くへ来るよう声を掛ける。


風雷「見かけんから、くたばっておると

   思っとったぞ。」

ー重「それはワシの台詞じゃ。」


ー重「旦那見てくれ。ご覧の通り調子がいい。」


ー重は脱臼した肘を伸び縮みさせ風雷に見せる。


風雷「もう大丈夫そうだな。」

ー重「こんなに早く治るとは思わんだ。

   普通なら1、2ヵ月かかる。

   旦那、すげぇ医者だよ。」


風雷「それは気分がいいな。もっと言え。」

ー重「ハハハ。」 (^o^)



女1「こらぁ!何処さ行った?」

女2「こっちさ逃げたよ。」

女1「見つけた。待てー!」


ー重「何の騒ぎだ?」


何やら奥の屋敷が騒がしい。

ここの食事処は、板前と女中が兼任できるよう

桐生の屋敷と繋がっている。

中の騒ぎが筒抜けだ。


すると突然、黒猫が干物を咥(くわ)えて現れた。


風雷「犯人はあれだ。」


朝食の魚をかすめ取ったのだろう。


猫は外へ逃げようと干物を咥えたまま

テーブルからテーブルへとジャンプして進む。

風雷は猫を捕まえようと進行方向へと向かう。

猫が3つ目のテーブルへ着地したとき、

後ろ脚がテーブルに乗り切れず下に落ちてしまった。


風雷(どんくさい猫だな。)


風雷は猫がどこへ逃げたかとテーブルの下を覗くと。

猫が口から泡を吹いて、全身けいれんさせて

倒れていた。

風雷はその光景を見て、魚に毒が盛られている

こと気づく。

それを確かめたく、干物を探すが見当たらない。

おそらくどこかにあるのだろうが、

時間がもったい。

しかたなく、猫の元へと急ぎ、

猫を抱えて腹にかぶりつく。

猫の血を吸って、分析を開始すると。


風雷(まずい!)


猫の血があまりにもまずく、吐き気をもようし

思わず風雷の血を猫の腹へ注ぎ込んでしまった。


風雷(やっちまった。どうなる?)


通常、風雷の血を人間の体内へ注入すると、

拒絶反応を起こし即死する。

人間以外の動物は試したことがない。

そして、猫のけいれんが止まった。

やはり猫も同様かと納得する。


猫の血を解析した結果、やはり毒によるもの

だと判明。

その毒は例の『ザザの実』だ。

またしても使われた。

もう偶然ではない。誰かの仕業である。


女「沙樹様!沙樹様しっかりしてください。」


奥から悲痛な叫び声が聞こえる。

風雷は青ざめる。もしかして沙樹殿が。


風雷「爺さん、毒が使われた。

   診療所から薬箱を取って来てくれ。」

ー重「旦那、任せな!」


ー重は走って店内を飛び出す。

風雷は猫を脇に抱え、屋敷の中へと入っていく。

騒ぎは厨房からのようだ。


猫「グルルルル」


死んだかと思った猫が暴れ出した。

猫は風雷の腕を噛みつく。


風雷(最悪な事態だ。

   同朋(どうほう)を作っちまったか?)


この猫の兆候に見覚えがある。

風雷は猫をバンパイア化したのかも知れない

と考察した。


風雷(こいつに噛まれたら皆、殺してしまう。)


~~~ 厨房 ~~~~~

風雷は厨房に駆け寄ると、一人の女性が

倒れてて、女中と板前が囲んでいた。

倒れているのは沙樹なのか?

風雷は動揺する。


猫「ギャー―!」


猫の鳴き声で、その場の全員が風雷へ注目する。


沙樹「風雷様。美津(みつ)さんが。美津さんが。」


囲む1人の中に沙樹の姿があった。

沙樹は生きていた。風雷は安堵する。

では、倒れているのは誰だと覗き込む。

屋敷で下宿中にお世話してくれた恩人だった。


最初に出会った女中で、外へ出て行くまで

忙しい中、身の回りの世話をしてくれた人だ。

なんとしても助けなければ、ご恩を返したい。

風雷はあせる。


だが、猫をどうするかだ。


猫 「ギャー―!」

風雷「すまぬ。

   この猫を動けないよう縛りたい

   縄を持って来てくれないか?」


沙樹「なら、わたくしが預かります。」

風雷「危険だ!離れろ。

   この猫は毒を口にして錯乱している

   噛まれたら、同じようになるぞ。」


風雷はとっさの判断にしては説得力のある

言い訳ができたと自分に関心する。

この猫が化け物になったかもしれないなど

口が裂けても言えない。


女中「鳥かごをお持ちしました。」


ニワトリを入れる用の竹で組まれた

大きなものだ。

猫をかごに入れると激しく暴れた。


猫 「ギャー―!」


続けて倒れている女中の診察に入る。

心臓に耳を当て鼓動を確認する。

停止している。

いつものように腕を噛み、血液の分析を行う。


沙樹「風雷様。お願いです。

   美津さんをお助けください。

   風雷様。」(T_T)

女中「沙樹様、落ち着いてください。」


風雷「沙樹殿」


・・・


風雷「すまない。

   死者を生き返られることはできない。」

沙樹「あーーー。」(T_T)


沙樹は、美津の亡骸に覆い被さり大泣きする。


利玄「この騒ぎはいったい何事だ!」


用心棒の利玄、領主の尚隆、

番頭の時谷、番頭の片腕である生口と。

厨房に屋敷の全員が集結することに。

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