表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

帽子男の短編集

モノクロの家

作者: 帽子男

 男は片田舎に住んでいる、なかなか不便なところではあるが周りには何もなく静かで住みやすい所だった。

 ある日、近くに家が出来た。それがとても奇妙で白と黒だけで塗られいた。屋根や扉あらゆるところが30cmほどの正方形で白と黒で区別されていて、変わった家が出来たものだな、と思っていた。

男はに気になって白黒に唯一塗られていない窓から覗いてみると中には白と黒の食器棚、テーブル、イスなどが置かれていた、しかし人は住んではいないようだった。 


 それから数日が過ぎたある日の夜、あの家からガシャンと食器が割れる様な音やゴンとぶつける様な音がした。あそこのは人は住んではいないと思ったのになぁと思いながらも気になったので私は外に出て白黒の家の様子を見に行くことにした。

 家の中には明かりが点いていた。男はそっと窓から家の中を覗くと黒い人影と白い人影がケンカをしていた。男は初めは夢を見ているのかと思った。一度窓から顔を離しもう一度視線を家の中にやるとやっぱりケンカをしていた。白黒の食器は割れ、白黒のイスは転がり、白と黒の影たちは取っ組み合いをしていた。怖くなって私はすぐに駆け出した。きっと夢に違いないそう思うと私は逃げるように家に走った。そして、布団の中に滑り込み頭から毛布をかぶり目を瞑った。


 次の日、私は目が覚めるとベットの上で昨日あった事を思い出した。白と黒がケンカをしていた、怖くもあったが興味の方が勝りもう一度その家に行ってみることにした。着いてみると家の前には一人の紳士服を着た男が立っていた。紳士服の男は気が付くと軽く会釈をしてこちらによって来て話始めた。


「もしかして近くに住んでいる方ですか?昨日はお騒がせしました」


「お騒がせってそれだけじゃないだろう。白と黒の影は一体何なんだ」


「ああ、見てしまったんですね。今から説明しますのでそんな怖い顔をなさらないでください」


 紳士服を着た男はポケットから名刺を取り出した。そこには特殊住居販売店と書かれていた。


「特殊住居販売店?」


「ええ、その通りです。私共は一般では取り扱わない様な家を販売していましてこの家はその一環なのです」


「どういうことだ?」


「つまりですね。幽霊が出るお屋敷に住みたいなどの要望があるお客様や、いつでも家の中で雨の音を聞いていたい又は鳥が歌っている音を聞きたいなどの変わったお客様を相手にしている商売でございます」


「なるほど、っていう事はこの家は白と黒の幽霊が出る家ってことか」


 紳士服の男は少し笑った。


「いえいえ、私共の売っていた商品はそんな物ではありませんよ。もっと素晴らしい家です。夫婦喧嘩を代わりにしてくれる家ですよ。まだモデルハウスですがね」


「夫婦喧嘩を代わりにしてくれる家?」


「そうですとも。夫婦喧嘩は互いを傷つます、さらに困った事に怒鳴り声などで近所迷惑にもなります。それを解決するのがこれです夫婦の代わりに深層心理に白と黒の影が入りケンカをしてくれるという物です。まぁ今回は中の悪い男女の同僚の精神を入れて試しましたけれど」


「一応言っておくけど近所迷惑にはなっていたからな。食器が割れる音が聞こえていたから」


「それは失礼いたしました。今度からこの点も考慮していきたいと思います」


 紳士服の男は頭を下げた。しかし面白い事を考える物だな、欲しいとは思わないが。男がそう考えていると中から大工が出てきて紳士服の男を手招きした。


「すみません、これから内部の点検がありますのでこれで。何かありましたら名刺に書いてある電話番号にご連絡ください」


 そう言って紳士服の男はそそくさと家の中に入って行った。男は気になっていた事が解決して家に戻って行った。

 それから、たまにケンカの様な音は聞こえてきたが騒音と言うほどでもなかったので男は気にしてはいなかった。しかし、1年ほど過ぎたある日の夜。あの家から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。新しい家族でも引っ越してきたのかとその時は気にもしなかった。それからしばらくして男が白黒の家の前を通ると紳士服の男が立っていた。少し困った顔をして中を覗いているようだった。男は後ろから近づいて行って声をかけた。


「久しぶり、何してんの?」


 紳士服の男は驚いたようにこっちに振り向いた。


「あなたでしたか、お久しぶりです。ちょっと困った事になりましてね」


「困った事?」


 紳士服の男は中を見るように促した。中を覗いてみるとそこには灰色の小さな影がベビーベッドの上ですやすやと眠っていた。


「前に言った同僚の男女なんですが結婚しましてね。幸い人はまだ住んでいないので実害はないのですがこれじゃ夫婦喧嘩を代わりはできないですよね」


「いや、子供がいても夫婦喧嘩はするんじゃないの?」


「いえ、あの影は夫婦喧嘩をする為に作られたものなのでいつも間にか消えてしまったんですよね。代わりに残されたのがあの子だけで…たまに様子を見に来ているんですが。どうしましょうね…」


 紳士服の男は困った顔をしていた。部屋の中にいた灰色の小さな影は男にきづいたようでキャキャと笑いながらこちらを見ているようだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ