color
やっと作品が出来上がった
カラフルな色を用い、キャンバスの上は虹のよう
色に溢れ、絵の主人は花に囲まれている
屈託のない笑顔でこちらを見つめる
思わずこちらも笑みが零れる
キャンバスの中は夢で溢れている
それ故に描きあげるのはとても難しい
色は時々牙を剥く
敵対するとそれは凄く恐ろしい
ぶつかり合いお互いの良さを消していく
人も同じなのかもしれない
そうならないように必死で色を作り色を合わせる
試行錯誤して出来上がったものはどれも美しい
それは画面の中の世界だけど
吸い込まれていく感覚が胸に刻まれる
絵を描いてる時間だけが何事も忘れられる
彼と出会ったのは大学生の時だった
公園で画材を広げる私に、彼の方から声をかけてくれたのだ
ふたりで色々なところに出かけた
一緒に美味しいご飯を食べて、綺麗な景色を眺めて、たくさんの絵を描いた
あの頃私は幸せで、毎日が楽しくて、世界は彩りに満ちていた
彼の太い腕が好きだった
その腕に抱かれ、狭いシングルベッドで一緒に眠るのが大好きだった
目を覚ますと彼が私におはようと微笑んでくれる
その全てが愛おしかった
彼の腕を手に取る
血の気が引いて青白くなったその腕は、それでもずっしりと確かな重量を備えていた
手の甲に口づける
指の一本いっぽんに、ついばむようなキスをする
それから愛しいその腕に、それを握らせて私の胸に向かって思い切り振り下ろした
やっと作品が出来上がった
カラフルな色を用い、キャンバスの上は虹のよう
色に溢れ、絵の主人は花に囲まれている
屈託のない笑顔でこちらを見つめる
思わずこちらも笑みが零れる
キャンバスの中は夢で溢れている
ここにはあの女もいない
正真正銘ふたりだけの世界だ
キャンバスは鮮烈に染められてゆく
世界がひとつの色彩に塗りつぶされる
私と彼も、ひとつになれる
吸い込まれていく感覚が胸に刻まれる
絵を描いてる時間だけが何事も忘れられる




