雪下にて
ある冬の日のことでありました。
その日は朝からしんと冷えて、また昨晩から降り続く雪によって、辺りは一面に冬化粧をしておりました。
道路の雪かきをしてやらねばと道具を持って朝早くに家を出た私は、処女雪を踏みしめながら村の端まで歩いていたのです。
そうして、さて作業をしようかというとき、道を少し外れた林の前に、私は信じられないものを目にいたしました。
それは、大きなおおきなかまくらでした。大人の背丈をもゆうに超えるそれが、これまた大きな木の前に鎮座していたのです。
かまくらの周囲には衣服やリュックなどが乱雑に打ち捨てられており、私がはじめそれに気がついたのもそのためでした。
はて、これはいったい全体どうしたものかと、かまくらの中へと頭を突っ込んでみると、そこには二人の男女が横たわっておりました。
男はタキシード、女はウェディングドレスで、純白に身を包んで仲睦まじげに腕を組み雪の中で眠る二人は、まるで天上の絵画のように美しく私の目に映りました。
男の顔はぞっとするほど青白く輝いて、また瞼を落とした女の容貌はいきいきと彩られ、艶やかな蝋細工のような、心から吸い込まれてゆく妖しさでありました。
外には睡眠薬らしき容器も捨てられておりました。おそらく二人はそれを服用して眠ったものと思われます。
しんしんと降りつのる雪の下、彼らは何を思いこのような舞台を整えていたのでしょうか。いまとなってはそれを与り知ることはままなりません。
静かに眠る二人の頭上には、可愛らしい雪だるまが司祭のように優しく佇んで、にこやかに彼らを見守っているようでした。
雪だるまの前にはこれを発見した者に向けてでしょう、こう書かれた手紙が置かれておりました。
「寝姿が乱れていたならば、整えて頂きたい」
最後まで、いえ最後だからこそ美しくあろうとしたのでしょう。
実際には誰かが手を加える必要もなく、ひたすらに端麗で静謐で、完全な世界がそこにございました。
手紙の裏を見るとそこにはただ一言だけ、
Mors sola——
——死が二人を分かつまで。
けれども私には、あの二人ならば死した後にも共に、天へと昇ってゆかれたのではないかと、そう思われてならないのです。




