巻き戻せない時間
俺の妹は、死んだ。あまりにもあっけなく。
首に縄をかけ、握る手に力を入れる。
最後に妹の頭を撫でた。その手のひらに、じんわりと熱が集まってくる。
一緒に過ごした日々に想いを馳せる。共にご飯を食べ、くつろぎ、眠り、安穏と暮らしてきた日々。楽しかった。
妹は本当はどう思って過ごしていたのだろうか。今さら悔いてももう遅い。
妹が好きだった。
妹といられれば、それだけで幸せだと思っていた。
机の上に置かれた、2つのマグカップ。寒いねと二人で飲んだインスタントコーヒーは、もう完全に冷めてしまっていた。それが一緒に過ごした最期の団欒だった。
目からは滂沱の涙が、止め処なく溢れてくる。こんな世界では、もう生きてゆかれないと。
横たわる妹に目をやる。いつもの愛らしい瞳は瞼の裏に秘められ、安らかに眠っているように見える。
両親が死に、これからは二人で生きてゆくと思っていた。どうにか生活していこうと考えていたその矢先だった。
拒絶された。受け入れられなかった。世界は俺を認めてはくれなかった。許せなかった。
俺には、妹しかいなかった。妹だけいれば良いと、そう思っていた。妹のためだけに生きてきた。妹だけが俺の世界だった。それなのに。俺は、
俺たちは、幸せに生きていくはずだったのに。




