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第5話

アタシは詠唱を終え、魔力を込めた手を地面に叩きつけた。


大地の弾丸(アースバレット)!」


魔力の波紋がアタシを中心にして、放射状に地面を走る。

取り囲んで来たのが運の尽き、この一撃で7人まとめて射程圏内!


広がる魔力が地の力を呼び覚まし、男達の足元から無数の岩の礫が噴射する。術者を中心に半径数メートルの円状にコブシ大の岩の弾丸を地面から放出する土の中級魔術、大地の弾丸(アースバレット)。近所迷惑なので使う際には周囲に注意だが、威力は対人としては充分。大人の男性でも、まともに喰らえば戦闘不能は免れない。


「よっこいしょっと」


パンパンっと膝の土ほこりを払いながら立ち上がり、周囲を見回す。

案の定、気を失ってそこらに転がる野盗たちの姿。数は7体、問題なし。


「さてと、ラルフの方はどうかな?」


向こうを見やれば、今まさにラルフが最後の1人を斬り伏せたところだった。

よしよし、ご苦労さま。


「よっ、そっちも終わったか。お前さん、怪我してないかー?」


剣を納めたラルフがこちらを振り返り、軽い調子で声をかけてくる。

まぁね、と肩をすくめ、アタシたちは洞窟の前で合流した。




「ん?アンタ、なんで…」


戦闘が終わり、改めてラルフを見ていると、どうにも違和感があることに気がついた。

服が、全く汚れていないのだ。

いや、土や埃といった汚れは多少あるのだが…


「返り血が、ない…」


ポツリと呟く。

いくら格下とは言え、あの人数相手に返り血まで全て避けるなんて、流石に不可能だ。

と、すれば…まさか?


「ラルフ、アンタの剣ってもしかして…」


「あー、バレたか。お前さん、めざといねぇ。正解だ」


シャラっと剣を抜いてアタシの目の前に突きつける。

切っ先がピタリとアタシの額の前に留まった。


あのねぇ、いくら刃が潰してある(・・・・・・・)とはいえ、あんまり気分良くないんですけど、それ。

刃先をつまんで払いのける。

ラルフはにかにかと笑いながら言った。


「むやみに殺すのは好きじゃないからな。これでも護身には充分さ」


見てみな、と、先ほど斬り捨てたはずの連中を顎で指して、剣を納めるラルフ。

なるほど、たとえ切れなくとも彼の長剣なら打撃で充分相手を仕留められるわけだ。


「魔物が出たらどーすんのよ?」


「短剣も持ってるぜ、こっちはちゃんと切れる」


そう言って腰の後ろをポンポンたたく。ちらりと見えていたけれど、剣術だけでなく、短刀術も自信があるという事なのだろう。

ホントに変なやつ。殺しが好きじゃないってのは、同意するけどさ。


そんな話をしている時だった。


「…ミカ!まだ何かいるぞ…!」


気配に気づいたのは2人ともほぼ同時だった。ラルフが警戒の声を上げた時には、既にアタシは剣を抜いていた。


目の前の洞窟。

通路の両脇には松明が等間隔で設置されてはいるものの、明るいこちらからは闇がかかって見通せない。

ただ分かるのは、その闇の中から何か異質な気配が近づいてくることだけだった。

足音は二つ。

1つは騒々しく、警戒に値するものではない。

問題は後ろを付いてくる、もう1つの…


「センセイ、アイツらです!」


バタバタと最初に洞窟を出てきたのは、森の中でラルフが気絶させたリーダー格の男だった。恐らく、洞窟の奥で休んでいたのだろう。仲間の伝令を受け、アタシたちの襲撃を知り、助っ人を連れて来たというところか。


「あ〜ら、もう起きて大丈夫なの?お仲間と一緒に寝てていいのよ?」


とりあえず軽く挑発。


「ち、調子に乗るなぁ!いくらその男が強ぇからって、センセイにかなうと思うなよ!

センセイ、お願いしやす!」


「ふん…こんな事をしに来たワケじゃないんだがな…」


リーダー格に促され、闇の中からソイツは姿を現した。

中肉中背の男だろうか。フードを目深に被っているため、顔は定かではないが、鋭い眼光だけは隠せていなかった。印象的なのは赤い文字で呪術的な紋様が縁取られた黒い外套(ローブ)。剣を携えている様子はないが、ゆったりとした外套の下には何か隠されていても不思議はない。正直、やりにくそうな相手…


野盗とは桁外れの殺気が辺りを支配する中、アタシとラルフは剣を構えた。

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