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第3話

雨上がりの森。

濡れた土の匂いは、やがて深緑のそれへと変わっていった。

先ほどまでは気配すら感じさせなかった鳥達がさえずりを始め、我先にと柔らかな陽光の祝福を求めて飛び立って行く。


男達を蹴散らした青年が振り返る。


「さて、と。

お嬢さん、怪我はないかい?」


トゥクン…


彼の蒼い瞳から放たれた視線が、アタシの胸を射抜いたのを感じた。

まともに彼がこちらを見るのはコレが初めてだった。アタシは慌ててフードを外し、本日2度目の上目遣いで彼を見上げた。


やだ…顔が、熱い。自分でも紅潮してしまっているのが分かる。


「は、はい、大丈夫です!

あの、助けて頂いてありがとうございま…」


何か言わなければと、慌ててお礼を言おうとするアタシの言葉を遮るように、青年が口を開いた。


「なんだ… 子供(ガキ)か」


………は?


頭がフリーズして、よく聞こえなかったんですけど。


「いいところ見せて、お近づきになろうかと思ったんだがなぁ。

まさかこんな乳無しのお子様とは…」


プチッと。

頭の中で何かが切れる音がした。



その後、クソデカため息をついていた、うすらデカ野郎の身体は、アタシが高速詠唱と共に放った風を纏いし拳(ブラストブロウ)で吹っ飛んでいった。




それから数刻後-


「なんで付いてくんのよ?」


多少のイラつきを残したまま森の奥へと進むアタシは、なぜだかほいほいと後を歩く彼を振り向きもせずに問いた。


「いやぁ、お前さんがそれなりに戦えるって言っても、流石に女の子を1人にしておけないだろ」




エルフの剣士はラルフと名乗った。彼もまた、アタシと同じく悠々自適なあてのない旅の剣士だった。

アタシからラルフに尋ねたのは一点、『なぜ、木の上にいたのか』ということだけ。


少し考えた後、彼は答えたのだ。

だってその方がカッコいいだろ、と。

かくして、彼は無事、アタシからただのアホ認定を受けたのだった。


とりあえず、コイツに少しでもときめきそうになったことは、黒歴史として墓まで持って行こうと思いつつ、アタシは行動を開始した。

当然、下手なナンパが失敗に終わったラルフとはお別れだと思っていたのだが、何故か彼はアタシの後を付いてきていた。



「別にアンタの助けがなくたって、そこらの野党や魔物(モンスター)にやられる程、ヤワじゃないわよ」


「まぁ、たしかにアレは痛かったが…」


視線に恨みを込めて放ってくる。アレはアンタの自業自得でしょーが。

先ほどラルフにお見舞いしたのは、風の魔術、風を纏いし拳(ブラストブロウ)。精霊から力を借りる自然魔術では初級クラスではあるが、そこはそれ。アタシくらいの潜在能力(ポテンシャル)があれば、ラルフくらいのガタイでも数メートルは吹っ飛ばせる。


「わかったなら、付いてこないでよ。アタシは急いでるの!」


まだなんだかんだと文句を言ってるラルフを無視して、地面を調べる。

タイミング良く雨が上がってくれたおかげで、ぬかるんだ森の土はアタシの進むべき方向をはっきりと教えてくれていた。


「お前さん、もしかして奴らを追ってるのか?」


「まーね」


地面に残されているのは逃げた野盗どもの足跡。

あのまま降り続いていたらすぐに流れて消えてしまうところだった。


ラルフがアイツらを逃してしまった時は、正直少し焦ったのだ。そのまま逃しては、なんの稼ぎにもならない、と。

だが、これで奴らのアジトまで追跡して襲撃し、溜め込んだお宝を頂けばいい稼ぎになること間違い無し!


「別に付いてこなくていいのよ、あんな連中、百でも二百でも敵じゃないわ」

分け前も減るし、ね。



アタシの目的を話しても、ラルフはあくまでも付いてくるようだった。曰く、女の子を1人にしておけないと。一応、コイツは野盗に戦争を仕掛けるつもりのアタシの身を、本気で案じているようだった。


…ま、いっか。

コイツも腕だけは立つワケだし、盾代わりに使わせてもらおう。格安で。


そうこうしているうちに、アタシたちは目当ての場所へ到着したのだった。

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