5、翔べ銃玉(ガンタマ)
キザンに3点セットを渡してから4年。俺は再び20歳を迎えた。
今回の逆行では、様々な冒険者に武具やアイテムを渡し、その運命を大きく変えて来たと思う。
家族や友人知人には本名アニシャで通しているが、武具やアイテムを渡した相手には″ギフトラベル″と名乗り、すっかり謎の商人として定着している。
……
イエゴ地方、クーピス王国。
前回まで、始めに魔族と大きな衝突があったのがこの国だ。魔族の侵攻の後は言わずもがな、悲惨なものだ。
イエゴ地方は魔族が住んでいるカブツ大陸に一番近い。
カブツ大陸バケス地方に魔都ダクンがあり、嘗ては少なからず人族や獣人族とも交流があった。
そう、嘗てはだ。
残念ながら今回も、魔王ニウロナからの宣戦布告があった。
であるからには、またクーピス王国が最初の戦地になるだろうと思い俺はこの王国に来ている。
この国には勇者アザマスの仲間である七彩が1人。
彩風のケル。その兄がいる。
ケルの兄であるジョウザは王国の騎士だ。果敢に魔王軍と戦い、そして命を落とす。
そしてケルは兄の仇を打つべく、アザマスの仲間になった。
今回もただの騎士としてなら、果敢に戦って死ぬ。それだけだ。
俺は、このジョウザの運命を変える。
……
クーピス王国の隅々にまで警報の鐘が響いている。
俺は城壁の物見台の上からその原因を眺めていた。
「やはり、来たか」
思わず小言が漏れる。
毎回、最初の攻撃はインパクトが大事とでも、ニウロナは思っているのだろう。地平を埋め尽くす魔物とその後方に魔族が王国に向かって攻めてきている。
城から騎士団が続々と現れ、城壁外へ配備される。迎撃体勢をとっている。
この段階で俺の力を使えば、この魔物と魔族の大半を屠れるだろう。
だが、それだけだ。
圧倒的な速さの敵や、知覚外から攻撃を加えられれば俺は反応できずに死ぬだろう。残念ながら俺は、英雄級じゃないんでね。
ジョウザは弟のケルと同じで優しい奴だ。
ケルは一度だけだが、ジョウザとは何度か話したことがある。
弟の才能に気付きつつも、嫉妬することなく。自分に出来ることを、願わくば、弟の力を使わなくてすむ世界をと願う良い兄だ。
いよいよ、魔王軍が王国内へと侵入する。
ジョウザもこの内壁部隊に所属している。
王国内は瞬く間に混戦状態となった。
やがて、ジョウザは路地裏に逃げて行く家族が魔物に終われているのを見つけ、1人その後を追う。
しかし奔走虚しく、家族は魔物の餌食となってしまった。
「うぉおおお!!!」
ジョウザは、魔物に挑みギリギリ勝利する。身体中傷だらけだ。
そろそろだろう。こういう満身創痍の状態でこそ、人は火事場のクソ力、本領を発揮できる。
「やぁ、ジョウザ。君に武具を持ってきたよ」
いつも通り、俺は認識阻害を解いてジョウザの前へと現れる。
「貴様が、ギフトラベルか?」
「その通り。知っててくれるなんて俺も有名になったもんだ。で、勿論受け取ってくれるよね」
「果たして貴様の企みは分からないが、現段階では魔族より幾分マシなのだろう」
ジョウザはそのまま俯き。
腰を落として、足を折り曲げ両手を地面に添え、俯けた頭を地に着けた。
「頼みます。この国を救う力をどうか私に授けて下さい!!」
「まぁ、まぁ。大抵の人が勘違いしてるんだけど。特に見返りは求めてないし強いて言えば活躍は求めているけど……君にはこれを渡すよ」
「これは……」
俺がジョウザに渡したのは、豆粒の様な幾つもの玉。
通称″銃玉″。
ジョウザは属性魔法が苦手だった。しかし、英雄の兄の才能が凡才な訳が無い。
「これらは、数種類の銃玉だ。ちょっと触れるぞ」
俺はジョウザに触れ、ジョウザの体内の魔力線、波長を調整する。そして、丁寧に用意した銃玉の波長とリンクさせていく。
「君の才能は引き出された。あとは感じるままに」
ジョウザは、無数の銃玉を自力で浮かび上がらせた。
「これは……力が湧いてくるのを感じる。それぞれの銃玉の役割も何故だか分かる!」
「これは本当にサービス、魔力回復薬。今の君なら、元より多くの魔力を蓄えられるはずだよ。さぁ、もう行きなよ。王国を救ってきな」
「恩に着る。翔べ!飛翔銃玉!!現れよ、銃剣玉!!傷を癒せ一角獣銃玉!!」
おぉ。一気に形勢逆転してる。まさかここまでとは。英雄の兄、恐るべしってとこか。
「くらえっ!彩陽光線銃玉!!!」
おおおお!ちょっと!
敵ほとんど居なくなったじゃん。
いやいやいや彩風の兄改め、彩陽のジョウザ凄すぎじゃん。俺の波長剣とか絶対勝てないわ~。
裏方に徹して正解だねこりゃ。
って、ゆっくり地面に着地して項垂れてるし。
エネルギー切れかよ。はしゃぎすぎか。
敵のボス来ちゃうし。どうしよ。
魔物の大群からも分かってたんだけどね。細菌のセア。
俺と相性の良い敵なんだよね。相手の細菌もあくまで魔力由来、ジャミングすれば良い。
けど、魔王軍に狙われれば一発で終いだ。
「なかなかやる人間がいるようですね。魔王様の為に死んで下さいな」
「何が、目的だ」
「死になさい」
「飛翔銃玉……燃焼!!!」
セアが細菌による攻撃を仕掛けたかと思いきや、ジョウザは飛翔銃玉の出力を相手に向けて噴射し、後方へとぶっ飛んだ。
セアは文字通り丸焦げだ。だが、細かい粒子となって空の彼方へと飛んでいってしまった。恐らくは逃げたのだろう。
……
正直、ジョウザは期待以上だった。
だが、最後の攻撃は自身の魔力線を酷く傷付けた。人体でいう筋繊維を傷付けるようなものだ。
暫くは筋肉痛の魔力線版が彼を襲うだろう。
戦争は始まってしまった。
各国、各地域の白星が多くなれば俺の故郷も救われるはずだ。
よし、次いってみようか。




