3、相棒との邂逅
メモリーズダンジョン
魔物が住まう洞窟と似て非なる、太古より各地に生まれ出でるそれ。
星の循環エネルギーが魔力溜まりに向かって噴出し、噴出に巻き込まれた街や魔物の生息域にあった遺物がダンジョン内に宝として残る。
時に、取り込まれた物の強い思いは、ダンジョンの挑戦者に幻をも見せるという。
……
宝箱に手を触れる。
強い魔力、強い思念に呼応して包み込んでいたそれが、光の粒子となって剥がれていく。
俺はこの中に入っているものを知っていた。
それは、俺の通算人生長年の相棒。
繰り返す人生。これが何度目の邂逅だろうか。
俺以外が扱えば、呪いの短剣……制御しなければ、発せられる強い魔力線がいたるものに害を及ぼす波長剣。
「また、今回も頼むよ」
世に出れば呪い指定故に武器のランクは低い。
しかし、魔力線のジャミングに加えこいつの能力が役に立つ。
その能力は広帯域に渡って直線的に波長を断つもの。
制御出来なければ、生物の体内にある魔力線を悪戯に掻き乱し、その者に不調、害をきたす。
俺のジャミングが広範囲なのに対し、こいつの能力を利用すれば直線的な出力が可能となる。
俺とこいつは、素晴らしく相性が良いのだ。
熱線とか、どうにもならない速い現象を起こす攻撃をしてくる奴もいるんだけど。
そういう時には罠を仕込んだ氷魔法でワンクッション挟み、熱線の魔力核にある命令を無理やり上書きして進路を曲げたりする事も出来る。
魔力の少ない俺は裏技を使うことでこれを可能にする。
氷属性と似たようなので、もっと複雑な土属性を相手にする場合も、ジャミングに加えて波長剣があると凄く便利だ。
土属性と一言でいっても、その実は多岐に渡っている。
魔力核を元に外殼を作る、相性の良い波長を元に魔圧で土を圧縮する。魔力結合を利用して土を固めたり、使い手によって様々なのだ。
魔力核と魔力結を利用した一番の例はゴーレムだろう。
魔力結合を利用して土を固め、魔力核に信号を加えて動かす。
最近のゴーレムは高度だ。
他の魔力干渉を受け難い特殊な金属で作られる物が出ている。
もともと衝撃性に優れていて、魔力干渉を受け難いので、属性魔法の魔力核に書き込まれている、対象に触れたら威力を増す等の命令が弱まってしまう。
そこでこの波長剣の出番だ。透過性の高い波長を直線的に放てるので、ゴーレム内の魔力線、上手くいけば魔力核をそのまま崩すことも出来る。
文字通りの切断だ。
切断した魔力線は繋がる事がなく。遠隔操作も再生も出来なくなる。
これは生物の魔力線を切った場合も同じだ。
ただ、生物には魂力や気力等、魔力線を補う力もあるので油断は禁物。
また土属性の魔法には、魔力結合と魔圧を利用し、足元の砂を利用して相手を圧殺するといった使い方もある。
……
厄介じゃない属性は無い。だから、勇者は本当に大変だと思う。
けど、見た目は子供、中身はおじいちゃんの俺も結構大変なんだ。
同じような時を過ごす中で色んな波長の勉強したから。
老人まで年老いた事無いんだけどね。
……
「おい、アニシャ。目当ての物はあったのか?」
「はい、ありました。ありがとうございます」
「礼はやめてくれ、命の恩人にちょっとでも借りを返せたなら良いってもんよ」
この人の名は、リザン。
一緒にこのダンジョンに潜ってもらっている冒険者だ。
冒険者ギルドでのランクはCランク。
リザンの命の危機に颯爽と駆けつけ、ありったけの薬草を使って助け、恩返しに波長剣の入手を手伝って貰ってるって訳だ。
八百長気味なんだけどね。
既に、逆行の中でも何回か救っているんだ。
毎回、俺が再度逆行する時にまでリザンを救ったことによる未来の変化は起こっていない。
「いえいえ、お陰で良いものが手に入りました。俺が望んでいたモノです」
「へぇー、そんな短剣がねぇ」
「そう、この短剣がです。さぁ、地上へ戻りましょう」
「了解。何だかアニシャといると、ダンジョンの魔物も弱く感じる気がするぜ」
それもそのはず。出会った敵の魔力線を掻き乱しているのだから。
「今日はきっと、リザンの調子が良いんですよ」
「そうか。俺、急激に強くなってるかもな」
「冒険者に油断は禁物ですよ」
「あ、あぁ。そうだな。そうだよな」
言外にリザンが命の危機に瀕していたことを匂わせると、リザンは気を引き締め直してくれたようだ。
さてと、波長剣も手に入った事だし、商品集めに奔走するとしますか。
俺が集めるのは、未来で英雄から魔族の手に渡ってしまう武具。
入手時期が遅く、魔族との争いが始まれば、使い馴れていない武具が敵の手に落ちてしまうこともあるだろう。
だから、その武具の使い手に、本来入手する時期より早く武具を渡す。
もう一つ。魔族以外も含めた敵が持っていた武具の入手。
時系列的に先に入手出来そうな武具は、メモリーズダンジョンを攻略し、その強力な武具が敵に渡らないようにしたい。
焦りは禁物だ。
出来ることから、やっていこう。




