2、目覚め
目が覚めると、平和な室内が目に映った。
やっぱ毎度同じみの場所か。
体を起こし、鏡で自分の姿を確認する……
いつも通りの見た目、5歳児に戻ったな。
階段を下り、親父とおふくろの元気な姿を確認する。
この確認が何回目からか、時間移動のルーチンに成っていた。
最初は勢いよく抱きついてたっけ。
何回も人生を繰り返し、人の倍は時を繰り返しているから、精神年齢はとっくに両親より上だ。
だからかだろうか。単純にこの両親を救いたい。死なせたくない。助けられる未来を見たいと、いつしか思うようになった。
毎回、助けれなくて本当に申し訳ない。
だが、今回は助ける。
……
俺は、勇者がどこで何をしているのか詳しく知らない。
勇者と一緒に冒険したことなんて無いから。
時を繰り返すには、リリー姫が生きていなければいけない。
何より自分が生きていなければいけない。未来を変えるような動きは、怖くて取れなかった。
ある程度、同じような人生を繰り返していた。
一度目の逆行では、自分が未来を知る予言者だと思い込み、狼少年呼ばわりされた。
二度目の逆行では、余計な事をして本来生きていけた友人が死なせてしまった。そこから、大きく動くことを恐れた。
確か5回目位までは何の変化もない歴史を繰り返していた。何も出来なかったんだ。
自分は特別な予言者では無いと自覚し、未来に起こる戦争に震えていたんだ。そして、逆行しない未来へ進むことも恐れ、何度も繰り返す。
俺は世界の細かな情報を地道に集めた。各国の情報を雑貨の仕入れネットワークや、旅人。時にお客さんから話を聞いて。
……
そんな今の俺の肉体年齢は5歳。
これから15年後に魔族が世界に攻めてくる。
その目的は、ただの破壊らしい。争いたいから戦争をしている。そういう魔族が魔王になってしまった。
今、そいつはまだ魔王ではない。
遠くない未来の魔王、ニウロナ。
今から暗殺しに行こうにも、そんな事をしてしまえば、また別の戦争が始まってしまう。
そもそも今の俺に将来の魔王を暗殺する力なんてない。
……
魔族の侵攻が始まってから半年後。
スーサン地方のとある村を旅立つ少年がいる。この少年こそ、後に勇者と呼ばれる少年、アザマスだ。
アザマスはタシンザ王国にて、魔族の襲撃を退けるのに大きく貢献し、国王から聖剣プラースを授けられる。
いずれプラースは壊れ、勇者は勇者の剣を手に入れるみたいだが。
そんな勇者のアシストをどうするか。
俺の導き出した答え、
それは、勇者はほかっておく。
何故なら逆行を繰り返すなかで、アザマスの不運は聞いていないし、下手に接触すれば、俺が勇者の足を引っ張りかねないからだ。
そこで、俺は各国の防衛力を上げる事にした。
ダンジョンを攻略し、有能なアイテムを集め。
魔族が侵攻してくる前に、雑貨屋の商人として水面下でアイテムを配っておき、ジッケン王国に魔族が来るのを防ぐって寸法だ。
……
勇者の足は引っ張りかねないが、ダンジョンの攻略には自信があるんだ。俺には時の逆行で得た能力が一つある。
その能力は逆行を繰り返す毎に強くなった。同じ時を繰り返し絶望しか無かった俺が、未来を変えようと、未来へ進もうと再起するに至ったきっかけでもある能力。
右目による、魔力線の視認。
始めはぼんやりとしか見えなかった。
そこから逆行を繰り返していく内に、魔力線ははっきりと見える様になっていき、同時に俺の右目の視力は悪くなっていった。
魔力線は魔法の軌道を作るものであり、魔力を保有する物には必ず魔力線を発しているし、その物の内にも魔力線は走っている。
要は隠し部屋にアイテムがあれば見つけられるし、姿を見えなくする類いの魔法や能力が俺には通用しないってこと。
格好よく通用しないなんて言ったけど、魔力由来でない落とし穴とかのアナログなからくり仕掛けの罠には気を付けなきゃいけない。
……
能力だけでダンジョンが攻略出来るとは思っていない。
攻略に関しては、そのダンジョンの攻略情報を人伝や攻略者本人に聞いたり、数度ダンジョンに潜って情報を確かめたこともあるんだ。
この右目と、逆行を繰り返すことで身に付けた魔力線の知識、ダンジョンの攻略情報。そして、とっておきだ。
とっておきとは、ジャミングと呼ばれる対象の魔力線を掻き乱す特殊な魔力操作だ。
魔力線には波長があり、各属性と相性の良い波長が存在する。
魔力線の見える俺には、当然この波長も見えている。
魔力量が少なくても、魔力線を出す事は出来。時の逆行を繰り返す中で俺は、壁を透過する波長から反射する波長まで様々な波長を出せるようになった。
そして、同じ波長をぶつけることによって、魔法の質を落とす事が出来る事を知り、ジャミング出来るレベルに至ったという訳だ。
但し、ジャミング出来ないものもある。既に魔法によって爆発した現象等には効力が無い。
爆発したものは、魔力由来でない勢いで飛散しているからだ。
大規模魔法にはめっぽう弱いのが難点だ。
さぁ、今回も魔力線の操作を鍛えるオリジナルの修行を始めよう。
もちろん剣や体術の稽古も欠かさない。
けど、今さら魔力や魔法自体は鍛えない。既に自分の戦闘スタイルを持っているから。
……
皆まで全て救えないのは分かってる。
世界が救われようが滅びようがどうでも良い位、長い時を過ごした。
だから家族や国を救いたい思いが自己満足なのは分かってるし、だからこそ、俺にはその目的しか残ってないのも自覚してる。
魔王よ、勇者よ。俺が逆行するよりも未来で、どっちが勝つのか知らないが。
逆行者がいよいよ、未来へ挑戦するぜ。受けてたってくれや!




