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ー3年後ー
木下万理は日本にいた。A&Wカンパニーの
日本支社に万理の上司のアーロン・ウィリアムズが支社長として赴任した為に、秘書の万理も嫌々日本に付いて来たのだった。
万理は3年前LAに着くとすぐに東野家が用意してくれた豪華なアパートを引き払った。そして自分のアルバイト代でも住める所を探した。
結果ベビーシッターの他に2つの仕事を掛け持ちしながら大学に通った。
肩甲骨の辺りまであったふわふわの茶色い美しい髪の毛を短く切り、化粧もせずに死に物狂いで働きながら、勉強も人一倍した。そんな生活を
3ヶ月も続けていると、やつれて体重は10キロ近く減った。元々痩せていたが、今では童顔で愛らしかった面影も無い。落ちくぼんだ目がギラギラしていた。
そんなある日とうとう万理の姿を見兼ねた
アレックスの母、エマ・ウィリアムズがベビーシッターとして家を訪れた万理に言った。
『万理!あなた食事をきちんと取っているの?
この間来た時よりさらに痩せたわ。』
『エマ、心配してくれてありがとうございます。でも私は大丈夫ですから。』
『大丈夫じゃないわよ。どこか悪いの?それとも3ヶ月前、ご両親が亡くなった時に日本で何かあったの?力にはなれないかもしれないけど、話を聞くことは出来るわ。話したら少しは楽になるかも。』
『ありがとうございます。その言葉だけで本当に充分ですから。』
涙ぐんで答える万理にエマはそれ以上何も言えなかった。