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「山本さん!お兄様は?お兄様もいるんでしょう?お兄様を呼んで?お願いです。お願いします!ここを開けて!!」
万理が叫ぶと山本とは違う男の声で
「緑さんが亡くなった今、君は東野の家とは関係の無い人間だ。葬儀にも出る必要は無い。帰ってくれ。もう2度とこの家には来ないでくれ。」
「忠さん?そんなの納得できません。要兄様は?要兄様とお話しさせて下さい。」
忠は司の姉の子で要と万理にとっては従兄弟にあたる。要より2才年上で東野不動産で社員として働いている。
「分かるだろう?要は次期当主として、今両親の葬式の手配に忙しい。君の相手などしていられない。遺産欲しさにすがりつく蛭のような女と話をする時間など無いんだよ。要がそう言っているんだ。大人しく帰ってくれ。そして2度と顔を見せるな。」
万理はその場に泣き崩れた。要兄様がそんな風に私のことを思っていたなんて。私は、私は要兄様を愛していたのに…
絶望した万理はしばらく東野邸の前で泣いていた。すると東野家が契約している警備会社の人間が車でやって来た。万理は引きずられるようにして無理矢理タクシーに乗せられ、仕方なく最寄りの駅近くのビジネスホテルにチェックインした。