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愛があれば大丈夫  作者: Miho
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 万理は意識を取り戻しつつあった。手を後ろで縛られて、床の上に転がされている。頭がガンガン痛む中、周りを見渡すと、何も無い倉庫のような場所にいるようだ。天井に近い位置にある小窓を見ると外は薄暗く、拉致されてから何時間か経っているらしい。そして倉庫につながる事務所のような部屋から蛍光灯の光が差し込んでいる。そこから男女の話し声が聞こえて、その声は万理が思い出したくもない石本聡子の声だ。

 最初は話し合っている様子だったのに段々2人の声が大きくなり、怒鳴り合いになって来たので、今が逃げ出すチャンスかもしれないと、少しずつ事務所から見えない位置に寝転がったまま移動する。幸い足は拘束されていない。完全に事務所からは見えない位置まで移動すると立ち上がり、逃げ出せる出口はないか探す。そんな中石本聡子の怒鳴り声が嫌でも聞こえて来る。


「あなた達今までパパに良い思いをさせてもらってたんでしょ?あんな小娘1人殺して山に埋めることも出来ないの?そんな役立たずを飼ってたなんて金の無駄遣いもいいとこね!」

「社長に世話になったのは確かだが、その為に人を殺すのは無理だ。お嬢さんがやった後、山か海に捨てるくらいなら手伝おう。それ以上は断る」


 2人の会話を聞いて、万理は震えが止まらなかった。それでも逃げなければと必死に倉庫の出口を探していた時、誤って転がっていた段ボールに躓く。その音に気付いた男が倉庫の方に走って来る。

「逃げようとしてるぞ!捕まえろ!」

 

 万理は恐怖に青ざめながらも、もうあのドアから逃げるしかないと判断し、捕まえに来た男に体当たりをして、事務所につながる扉に向かって走った。次の瞬間もう1人の男に腕を掴まれて、思いっきり投げ飛ばされる。拉致された時に、男が2人組だったのを今更思い出した。壁に激しくぶつけた左足は焼けるように痛い。このままだと殺される!泣きながらどうにか事務所の扉の方に這って行こうとするが、目の前に石本聡子が立ち塞がる。


「逃げられると思っているの?馬鹿じゃないの?顔を見られた以上逃がすわけにはいかないのよ!」


 そう言いながら聡子は万理の身体を蹴る。両腕が拘束されている為に、顔も庇う事が出来ず、

何度も蹴られ口からは血の味がする。腹部も蹴られ、息が出来なくなり、意識が朦朧もしてききた時…


「万理ーーー!!」


 要とアンソニーとアーロンが倉庫に駆け込んで来るのが見えた。万理は薄れゆく意識の中で要に抱きしめられて心から安心する。蹴られてボロボロな状態なのに、ここ何年かで1番心が落ち着き穏やかな気がする。自分はまだお兄様のことを忘れていなかった…そう頭のどこかで思い浮かべながら意識を手放した。

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