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愛があれば大丈夫  作者: Miho
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 万理とアンソニーは20分程会場を離れ、宿泊している部屋で休憩してから、会場に戻ることにした。万理が会場の横にあるレストルームで身繕いをしていた時、後から


「あなたのこと知ってるわ。数年前まで東野家の娘だったのに、財産目当てなのがバレて追い出された子でしょう?あの時あなたは要様の義妹だったけど、今度は世界を股にかける大企業の後継者の義妹なのね」


 万理が振り向くとそこには石本聡子がいた。

 見下すような侮蔑を含んだ表情で聡子はさらに続ける。


「要様から話は聞いているわ。両親の死は辛かったけど、あなたを追い出す良い機会だったと。でも追い出されて正解だったわね。もっと優良な金づるを見付けたんだもの。だったらこれからは私の要様には近付かないでね。私達の結婚の邪魔にならないように、早くアメリカに帰りなさいよ」


 万理は何も言い返せなかった。2人が一緒に現れた時、そんな予感がしていたけど、実際に婚約者であることを告げられ、ショックで言葉が出ないのと、要が両親が亡くなる前から自分の事を邪魔な存在だと思っていた。いや、東野家の一族が皆そう思っていたと思うと、何も考えずに幸せだと勘違いして生きていたあの頃の自分を抹殺したい気分だった。

 顔面蒼白でレストルームからフラフラと出て来た万理を見て、驚いたアンソニーが駆け寄り万理に手を貸しながら、


『どうした?万理!気分が悪いのか?』

 万理は何も答えられずにただ首を振る。アンソニーが会場の入り口に戻り、アーロンを目で探し手を上げるとそれに気付いたアーロンが駆け寄ってくる。


『万理!どうした?酔ったのか?』

『いや、そんな筈はない。さっきまで23階の部屋で普通に話していた。ここに入って出て来たらこの状況だ。とりあえず部屋に連れて帰る』


 この小さな騒動に気付いた要も3人に近付いて万理の顔を見て思わず


「万理!大丈夫か?」


  心配そうに声をかけた。


 その声を聞いた万理は我慢できずに泣き出してしまう。声を殺してただ大粒の涙を流す万理に要は驚く。そしてアンソニーに

『いったい何があったんですか!?』

 と声を荒げた。アンソニーは要の責めるような態度に気分を悪くし、眉間にしわを寄せた。

『君には関係ないだろう』

 そう言い放ち万理を抱き寄せエレベーターへと向かう。

 そう言われて何も言い返せず、要はアーロンの方を見るが、アーロンも困ったような表情で首を振った。

『レストルームに入る前は普通だったのに、出て来たらあの状態だったそうです』

 アーロンもそう答えるしか無かった。

 丁度その時素知らぬ顔で石本聡子がレストルームから出て来た。要は嫌な予感がして、聡子に近付き、

「君、万理と何かあったのか?」

問い詰めるが、聡子は意地悪い笑みを浮かべた。

「何のことですか?副社長の秘書の方がどうかされまして?」


 またも要はイライラしながら内心、こいつは女狐だ。決して本当のことは言わないと考えまたアーロンの方を向き、

『万理に何かあったら私に知らせてもらえませんか?どう見ても普通じゃなかったでしょう?』

 心底心配しているような要の態度にアーロンは戸惑いながらも

『分かりました』

 と答え会場に戻って行った。

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